第21話 出発前

「あら、ルークおかえりなさい。今夜は早かったのね。ご飯は?」


僕らは先生の家で着替え、身なりを整えていたから、母さんにゴブリンとの戦闘は伝わっていない。


「今日は先生の家で食べてきたから大丈夫。それより母さん、僕がいなくなったら悲しい?」


ウェルはモンスターとの戦いを楽しみにしていたが、僕は命を落とす可能性も充分理解していた。


「何?急に変なこと言って。まあ…もしあなたがいなくなったらそりゃ寂しいわ。」


僕は、母さんに本当の事が言えなくなってしまった。


「でもね、母さんアンタにはまっすぐ生きてほしいの。たとえどんな未来が待っていても、あなたが真剣に生きた証なら、母さんはそれを受け止めるわ。」


その言葉を聞いて、僕は勇気が湧いてきた。

大事な母さんを危険な目には合わせられない。

モンスターは必ず僕らが討伐するんだ!


僕は、照れながら母さんにお礼を言って、自室で休む事にした。



…次の夜、僕たちは先生の家で集合した。


「2人とも、調子は大丈夫ですか?」


いつになく真剣な顔の先生が声をかける。


「バッチリです!ライバー先生、ディズさん、改めてよろしくお願いします!」


ウェルが元気いっぱいに話す。

僕もつられて、挨拶をした。


「お前たち、これはいつもの狩りではないからな。獣人の誇りにかけて、最後まで戦い抜け。」


初めは嫌なやつだと思っていたけど、ディズと言うのは、誰より責任感が強く、獣人としての誇りを強く持っているだけなんじゃないかと僕は感じ始めていた。


「では皆さん、そろそろ行きましょうか。」


今宵も、月が静かに僕らを見守ってくれている。

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