第22話 死骸

僕らは村から東南方向へ向かう。

この森は、ブロリセアンドとか言う人間の国の、東側に位置しているらしい。

森の東側は険しい山脈が広がっており、辺り一面岩場となっている。


この山脈の向こうは、また別の人間の国があるらしいが、山脈は非常に傾斜がキツく、標高も高い。

山頂付近は常に吹雪に見舞われていて、人間は愚か、どんな生き物も決して越える事が出来ない。


動物たちも、この岩場には寄り付けないので、僕ら獣人も狩場とする事はほとんどない。


獣人の兵士たちが姿を消したのは、南の岩場と言うから、普段はあまり行かない道を縫う様に進む。

進めば進むほど、土は痩せ、生き物の気配がなくなっていく。


「ディズさん、本当にこっちの方向に獣人を殺したモンスターがいるんですかね?」


ウェルが不満そうに話しかける。

おそらく、彼はもっと血湧く戦いを望んでいたのかも知れないが、モンスターどころか何の気配もしない。


「それを確かめる為に向かっている。」


ディズは至って真剣に答えている。

だがその解答とは裏腹に、はっきりいって何も無さそうな予感しかしない。


何百メートル先に岩肌が見えた頃、僕らは足元に何かの骨が散らかっている事に気づく。


『先生、これは何の動物ですかね?狼にしては大きい様な気がしますけど…』


僕は、やはりこんな厳しい環境では、野生の動物ですら生きていくのが大変なんだろうなと、骨を見ながら思った。


疑問の視線を先生に向けると、先生は体毛を逆立てて殺気を剥き出しにしていた。


「ルーク、これは動物の骨ではありません。この森でこんなに太く大きな骨をしているのは…獣人です。」


一同に戦慄が走る。

僕ら獣人でさえ、自然の一部に過ぎない。

弱い者が強い者に狩られるのは当然の事であり、誰もそれを非難する事はない。


だが、この森で僕ら獣人より強く逞しい生物はいない。

じゃあ、これは一体何の仕業なのか?


僕らは骨を囲み、詳しく調べる。

骨は比較的まだ新しく、自然に風化した形跡はない。


「俺たちを…食ったのか…?」


ウェルはさっきまでの不満そうな顔はなくなり、驚きと戸惑いが隠せない声で言った。

僕だって同じだ。普段森で狩りをしている割に、自分たちが狩られる立場にあるなんて、想像もできない。


僕は未知への恐怖に、皆から数歩後ろへ下がってしまった。

無意識に、村へ帰ろうとしてしまったのかも知れない。


その瞬間、僕の背後から、何か岩の塊の様なものが飛びかかってきた。

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