第19話 獣人王の命令

「ライバー様もご存じの通り、この森には基本的に、人間であれモンスターであれ部外者は入れません。しかし、最近各所で異様な程モンスターが大量発生しております。我らは並のモンスターには負けませんが、奴らは森の生態系を狂わせます。」


どんなモンスターであれ、屈強な獣人の城を制圧しようとは考えないだろう。

しかし、先のゴブリンの様に、低級なモンスターは森の動物たちを乱獲する。

僕らとしても、放ってはおけない事態なのだ。


ディズは続けた。


「数ヶ月前から、城の兵士を随時調査に行かせています。しかし、今度は調査に行った兵士が戻らない事態が発生しました。」


「城の兵士が戻らない…と、言う事は。」


「ええ、おそらく非常に強力なモンスターが、この森に巣食ってしまったのでしょう。私は獣人王様の命を受け、兵士を葬ったモンスターを探しに参りました。」


獣人が人間嫌いなのは当たり前だ。

だから、この森から出ようと考える獣人はまずいない。

獣人王様に忠誠を誓う城の兵士なら、ましてそうだろう。

戻らないのは、おそらくモンスターに殺されたからだ。

しかし、そんな強力なモンスターって一体…。


「なるほど、事態は深刻ですね。しかしディズ、その強力なモンスターの目星はついているのですか?」


「はい、この村を抜け、更に南へ向かった先の岩場です。その辺りに向かった兵士が特に戻りません。」


「先生!ディズさん!質問です。俺たち獣人が負けるってのが信じられないのですが、世の中にはそんなに強いモンスターがいるんですか?」


質問したウェルは、どこかわくわくしている様に見える。


「ウェル、世界は広いのです。我々獣人より強い種族なんて、いくらでもいますよ。」


先生はウェルを諌めている様だが、ウェルの方は逆に好奇心をくすぐられた様だ。

今にも走り出しそうなくらい、体毛が逆立っている。


「さてディズ、明日はその岩場へ向かうのですか?」


「ええ、向かうつもりでしたが、これも巡り合わせ。ライバー様、共に同行して頂けませんか?ライバー様がいらっしゃれば、とても心強い。」


ディズの眼差しは本気だ。

自分の強さに自信がない訳じゃない。

森の非常事態に、真剣に取り組んでいる証だ。

さすが側近、責任感も僕ら以上の様だ。


先生も事態を理解したのか、黙って頷く。

4人の周りを、緊張した空気が埋め尽くす。

その均衡を破ったのは、ウェルだった。

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