第14話 数の力

『今度はどのくらいいるかな?』


「さて…50匹くらいか?」


明らかに尋常じゃない数を前にしても、僕らは怖気付く事はなかった。


「やるかっ!」


ウェルが叫ぶと共に、僕らはお互い反対方向に飛び出していく。


先程、刺し殺した後は若干隙ができる事を学んだ。だから僕は、1匹ずつ殴っては蹴り、殴っては蹴り、打撃を繰り返し打ち込んでいた。


1匹、2匹、3匹…次々にゴブリンの死体の山が出来上がる。

ウェルも順調に仕留めているようだ。


異変に気づいたのは、10匹を越えたあたりからだ。一撃で仕留められないゴブリンが現れる。

いつの間にか、体を叩かれる事にも慣れてきてしまった。


明らかに僕は疲れてきているのだ。体の動きが鈍ってきている。

もちろん、まだまだ戦えるが…後どのくらい敵は残っているのだろう?


それはウェルの方も同じだった様だ。

別々に戦っていたはずが、いつの間にかお互い背中を合わせるまで近くで戦っていた。


『…数、多いね…。後何匹くらいかな…?』


「残り20匹ってところだろうが…。」


あと半分、と思った瞬間、また別のゴブリンの集団が現れた。30匹以上はいる。


無限に続く様な戦いに、僕とウェルは精神を削られていた。

殴られる度に、鈍い痛みを覚え始める。

いつまで続くんだ?と考え始めていたら、10匹近くのゴブリンが一斉に僕に飛びかかってきた。


油断した!僕はそのままゴブリンの集団に押し潰される。


「ルーク!!!」


ウェルが叫ぶ声が聞こえる。

だが、さすがに寝転がった状態で10匹ちかくのゴブリンを跳ね飛ばす事は出来ない。


『まずったなぁ。』

こんな経験初めてだったから、僕自身もどうしていいかわからなくなる。

ゴブリン共は、僕の体を何度も叩く。


僕はキツイ匂いを覚悟の上、ゴブリンに噛みつこうとした。その瞬間、視界の端から深い灰色の影が僕の周りを横切った。

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