第12話 異常事態

ゴブリンは、モンスターの中でも最も低級のクラスに部類する。

身長は1mにも満たないし、力も非力で体も脆い。

野生の熊でも、2〜3匹程度なら余裕で倒せるだろう。


タチが悪いのは、非常に残忍で、ずる賢しこく、常に集団で行動するところだ。

一丁前に棍棒などの武器を振り回すから、うかうかしていると収穫した獲物を横取りされる事もある。

おまけに体臭が酷く、いつも腐乱臭がするものだから、僕ら獣人からしたら害獣でしかない。


僕らが驚いたのは、その数だ。

基本的にこの森は天然の迷路であるから、僕らがたまに見かける事があっても、せいぜい5.6匹くらいの集団だ。


『20…いや、30匹くらいはいるかな。』


「ああ、信じられないぜ。そりゃあ鼻も曲がる匂いがするはずだぜ。」


いくら数が多くても、僕ら獣人がゴブリンごときに負けるはずはない。

けれど、この数は異常だ。

僕は一度村に戻って、先生に報告する事を考えた。


しかし、ウェルの方はその真逆を考えているらしい。

瞳はいつもより生き生きして輝いているし、今にも飛び出しそうな構えである。


僕も、頭では報告を考えているはずなのに、さっきから心臓の鼓動がどんどん早くなる。


お互い、目を合わせて合図する。

どうやら、僕ら獣人は狩りが好きと言うより戦いが好きな種族のようだ。

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