第10話 母親の意見

「人間がどんな力を秘めていたとして、それはさほど問題ではありません。重要な事は、人間という種族の飽くなき探究心なのです。おそらくきっと、良くも悪くも。」


ウェルは納得していなかった様だが、先生の力強い言葉に根負けしたらしい。

それから何も反論しなかった。

そんな空気になってしまったから、僕もこれ以上何も言えなくなってしまった。


「とにかく!2人とも狩りで大活躍してくれるのはおおいに結構ですが、くれぐれも人間には近寄らない事!いいですね、これは獣人の掟です。」


小さく頷いた僕らを見て、先生の表情はいつもの穏やかな顔に戻っていた。

僕らの肩を軽く叩いてくれると、今日は家に帰ってゆっくり休む様促された。

僕はウェルと今夜の狩りの約束して、家路に着いた。


「おかえりなさいルーク。ウェル君との狩りはどうだった?」


僕は、母さんに昨夜の大収穫を報告した。

狩りのコツも、匂いの捉え方も、ウェルがとっても参考になった事を伝えた。


母さんは、鈍臭い僕をからかいながらも、基本的にはとても喜んでくれた。

息子の成長が頼もしかったのかも知れない。


しかし、僕がついうっかり人間の生活圏の近くまで行ってしまった事を話すと、態度は急変した。


「あんた!どこまで行ってるの!」


僕は、せっかく頑張ったのに、なにもそこまで怒らなくてもいいじゃないかと、はっきり言ってムッとした。


『母さん大丈夫だよ。それに万一人間と遭遇しても、返り討ちにしてやるよ。』


「そういう慢心が、身を滅ぼすのよ!あなたは何もわかってない!今日はもう休みなさい!」


そう言うなり、母親は部屋を出て行ってしまった。

僕は先生にしても母親にしてもウェルにしても、何故そこまで人間を邪険にするのか理解出来なかった。

ただ、きっと獣人なら誰もが持ち合わせている感覚なんだろうなと、どこか他人事の様に感じて、今朝はもう眠る事にした。

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