第6話 身体能力
僕ら獣人は、基本的には二足歩行で生活する。しかし、より速く走る時は四肢を使い、前のめりになって移動する。
ウェルは駆け抜ける一筋の風の様に、僕の前を走っていく。
時折、月の明かりに照らされて、ウェルの黄色の毛並みが煌めくのがわかる。
僕も、わずかな獣の匂いを頼りに、ウェルの後ろを追いかける。
すると、今度はウェルが急に停止する。
後方を着いてきた僕は、きっと獲物を見つけたのだと理解して、ゆっくり減速していく。
「ルーク…いたぜ。鹿の親子だ。」
草の茂みに身を潜めて前方をうかがうと、木々の間に確かに雌鹿と子鹿の2匹が見える。
2匹とも、食事でもしているのだろうか?
距離的にはウェルの方が雌鹿に近かったから、僕は子鹿を仕留めるよ、と声をかけようとした瞬間、既にウェルは草むらを飛び出していた。
ウェルは猛スピードで子鹿に突っ込み、右手の爪で子鹿の胴体を貫いた。
と、そのまま勢いを止めずに、今度は雌鹿へ思い切り噛み付く。
まさに一瞬の出来事だった。
2匹の鹿は完全に息耐え、風のゆらめきだけが木々ざわつかせる。見事だ。
「やったな!ルーク。さっそく2匹仕留めたぜ。」
『さすがだよ、ウェル。僕には到底マネできない。』
「そんな事もないだろう?俺は結構全速力で匂いをたどっていったけど、お前は息一つ切らしちゃいないじゃないか。」
確かに僕はウェルの動きについて行けなかった訳ではないし、まして見えなかった訳でもない。
狩りのやり方は大きな差があるかも知れないけれど、身体能力としてはさほど差がないのかも知れない。
『ありがとう、ウェル。』
僕は、ウェルの気遣いに感謝しながら、狩りを続けた。
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