第5話 獣人の基本
公式に先生の許しを得た所で、僕らは村を出発した。今夜も綺麗な三日月が輝いている。狩場である森は静まりかえり、あらゆる動物が息を潜める時間帯。
「さてルーク、改めてよろしくな!」
辺りは暗闇に包まれており、色や形をはっきり認識する事はできない。
けれどウェルの鋭い牙は、わずかな月明かりのもと不敵に光り、そしてそれが敵意によるものではない事だけはわかる。
『こちらこそよろしく、ウェル。僕も本当に嬉しいよ。』
他愛のない、しかし確かにお互いの通じ合った会話をしながら、僕らは森を進んでいく。
『うーん…今日はどの辺りで狩りをしようかなぁ…。』
僕が独り言のように話していると、ウェルの歩みが止まった。
「どの辺りって…ルーク、何言ってるんだよ?」
『いやぁ、昨日は割と村から西側で狩りをしたから、今日は北側の方が良いかなって。ほら、同じ場所だと、獲物も警戒してるかも知れないし。』
僕はいつも狩りをする時、ぼんやりではあるが自身の考えによって、あたりをつけていた。
「お前、本当にいつもそうやって狩りをしてるのか?」
『うん、そうだけど…逆にウェルはどうやって狩りをしているの?』
「いや、これはたぶん俺だけじゃなくて他の獣人たちもみんな同じだと思うが…単純に獲物の匂いがする方へ向かって行って、見つけたら仕留めるだけだろ?」
え?ちょっと待って。みんなそう言う風に狩りをしているの?
と言うか、考えてみたら当たり前の事だ。
何故今までこんな単純な事に気づかなかったのだろう。
あっけに取られている僕の雰囲気を察して、ウェルは続ける。
「あー…でもそうだよな!そう言う狩りの仕方もあるのかもな。」
ウェルの優しいフォローが、余計に心に染みる。僕はもしかしたら、獣人としてとんでもない欠陥品なのかも知れない。
と、思っている矢先、ウェルが急に駆け出す。
「ルーク、こっちだ!」
ウェルの向かって行く先から、ほんとうにわずかだが、獣の匂いが流れてくる。
僕も慌ててウェルの後ろを追いかけて行く。
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