第3話 家でのひととき

僕は今日仕留めた雄鹿を村の大倉庫へ運んだ。

倉庫には、木の実、薬草、動物の肉、それからモンスターや人間が落としていったアイテムなどが山積みになっている。


これらの収穫物が森の中央の獣人王様の城へ運ばれて、残った余りが僕らの村の取り分になる。獣人王様は決して優しい方ではないが、貢ぎ物に関して言えば、僕ら地方の村にはそんなに厳しい掟は課さない。


あくまで自分たちの食糧は自分たちで賄えというメッセージだと僕は理解している。

森で生きるものにとって、当たり前の事だと僕も受け止めている。


僕は先生やルーク、他の獣人たちに挨拶して家路に着いた。


「ルーク!おかえりなさい。今日は少し遅かったのね。」


『母さんただいま。今日の朝ごはんは何?』


「今日はマタンゴのスープと、鹿肉の串焼きよ。」


『マタンゴ⁉︎あれは倒すのに結構めんどくさいモンスターでしょ?なんでそんなもののスープがあるの?』


マタンゴはキノコのモンスターだ。

単純な腕力は大した事ないが、やっかいな胞子を飛ばしてくる。

前に狩りで見つけて倒そうとしたら、体が痺れて痺れて大変だった。


「ふふふ。実はこの間、森の外れでマタンゴが大量発生したみたいでね。それを聞くなりウェル君が飛んでいって、あっという間に退治してくれたのよ。」


そう言えば、少し前の狩りでウェルが大量のモンスターを仕留めたとか聞いた。

まさかこの事だったとは。


『ウェルはすごいよね。同い年なのに、僕よりよっぽど優秀で。どうしたらあんな獣人になれるんだろうね。』


「あんた、昔から考え過ぎなのよ。獣人王様の側近をしていた父さんの子だもの。才能はあるはずだわ。」


『と、言われてもね…僕は未だに鹿1匹仕留めるのが精一杯。』


「だったら、今夜からウェル君の狩りに一緒に連れて行って貰いなさいよ。何か掴めるかも。」


…確かにそうかも知れない。

ウェルとはしばらく狩りを一緒にしていなかった。もしかしたら、何か獣人として強くなるコツがあるのかも知れない。


そうと決まれば話は早い。

僕はスープと肉をあっさりたいらげ、日が沈むまで眠る事にした。

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