第2話 村に戻って

先生と森の狩場を後にして、風の匂いを頼りに村へ帰る。この辺りの森は方向感覚を狂わせるらしく、視力だけではまっすぐ進んで行く事も難しい。


思えば、初めて狩りに出た頃は、まっすぐ村に帰る事も出来なかった。

それを思うと、風の匂いを嗅ぎつけて帰れる様になったのは、僕がそれなりに獣人として成長している証なのかも知れない。


さっき先生は、僕には誰より強い力があるって言ってくれたけど、内心はそんなたいそうな力はいらなくて、ごく当たり前の、並の力があれば充分だといつも思っている。


「おっ!ルーク!すごいじゃん!今日は雄鹿を仕留めたんだ!」


村の入り口で、幼なじみのウェルが話かけてくる。


『鹿、猪、ウサギ、フクロウ…合わせて10匹以上仕留めたウェルに言われてもね。』


「あ、悪い悪い!別に嫌味で言った訳じゃないんだぜ。」


『大丈夫、わかってるよ。けどさ、ずっと一緒に暮らしてきたのに、いつの間にかこんなに差がつくと…そりゃ落ち込むよ。』


ウェルとは同じ村の出身。初めて木の実を集めに行ったのも、洞窟に探検に行ったのも、森に入り込んだゴブリンを倒した時も、いつも一緒だった。


獣人として順調に力をつけていって、周りからも認められていって、それでいて明るくて頼りがいのあるウェルは、僕の誇りでもあって憧れでもあった。


「さて皆さん、今日もご苦労様でした。収穫した獲物は大倉庫へ運んで、終わったら方から今日は解散です。」


先生は村に帰ってきた獣人たちに、それぞれ声をかけていった。

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