ワイルドフリッカー

かぬち まさき

第1話 今夜の収穫

『はぁ…今日はたった一匹か…』


「そんなに落ち込む事もないですよ。いつもはウサギや野ネズミしか捕らえられないのに、今日は大人の雄鹿を1人で捕まえたんです。立派なものですよ。」


先生は目を細めながら、穏やかに僕に言った。


雲ひとつない夜。森にはたまに吹く木々のざわめき以外、何の音もしない。辺りは静寂に包まれて、心が深く沈んでいく。


『先生、僕らは獣人ですよね?動物はもちろん、他のどんなモンスターより早く走れる。なのに、なんで僕は未だに鹿1匹捕まえるのにこんなに苦労するんでしょう?』


「ルーク、よく考えてみなさい。鹿にしたって、捕まって食べられてしまっては全てがお終い。相手だって生きるのに必死なんです。一生に一度使うか使わないかの力で逃げようとするのは当然でしょう。」


『うーん…でも圧倒的に僕らの方が力も強いはずなのに…僕はやっぱり才能がないんですよね。』


「そんな事はありません。私は他のどんな誰より、あなたに強い力を感じています。今はまだその時ではないだけですよ。」


『そんな時がいつか来たらいいんですけどね。』


そんな話をしているうちに、辺りがうっすら明るくなってくる。夜が終わる、紫色の時間帯。


「さて、そろそろ村に戻りましょうか。」

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