神釣り
影神
光
「あぁあ。。」
ザザァ、、
岩場に腰をかけて、波の音を聞く。
ザザァ、、
寄せては返し、、
何回も。何回も。
ひたすら繰り返す。
「、、疲れちまったな。」
もう。無理。
限界。
それ以外には無かった。
夜の海。
俺以外は、誰も居ない。
適当に。バスへと乗り。
手持ちの金が無くなるまで繰り返した。
金が無くなったら、
赴くままに歩き続けた。
こうして、ここへとたどり着いた。
真っ暗な世界。
時折、雲間から溢れる光が、
俺の視界を助けてくれる。
「いいよ、、
もう。。」
今頃。。
優しさなんて、要らない。
ザザァ、、
ズッ、ズ、。
ギィ、。
?
何だか違う音がして、
音のする方を見る。
舟場らしきものは月に照されて、姿を表した。
海へと続くコンクリートの横には、白い舟があった。
「さっきまでは、
何も見えなかったけど、、
漁でもやってんのか??」
ザザァ、、
ズッ、ズ、。
ギィ、。
俺はその舟が気になって、
気が付けば舟に乗っていた。
「良いよな。
こういうの、、
釣りとか。
した事、、
無かったな、」
舟の先は何も見えなかった。
真っ暗な暗闇が。
ただ広がっていた。
「漁師はどうやってこの中で、
正しい方へと。
先にと。
向かうのだろうか。」
ブルンン!!
先端へと行き、先を眺めていたら、
舟はいきなり動き出した。
「ちょっ、、」
暗闇で、何も見えない。
俺は足を滑らせて、舟へと倒れる。
ドカッ、
鈍い音をたて、腕を何処かにぶつけた様だ。
「いってえ、、。」
「大丈夫か?」
「あぁ、、。
!!??」
誰か居る、、
いつの間に、、
俺は、恐る恐る顔を上げる。
そこには、差し出された手があった。
気分屋な月はピンポイントで、
再び明かりを与える。
手、、。
それは、人間の手では無かった。
赤く茶色い様な、
まるで、想像の世界の者の様に、
鋭い爪と、硬そうな皮膚があった。
「あっ、、。
ありがとうございます、、」
「うん。
ちゃんと立ってないと、危ないよ?」
向こうはこっちに気が付いてないみたいだった。
心を落ち着かせ、言われた通りに、
手探りで、手摺りへと掴まる。
何処へ向かってるんだ、、
舟はスピードを上げ、暗闇を走って行く。
まるでアトラクションの様だった。
「着いたぞ」
もうひとつの声。
運転手だろうか。。
あそこから、どのくらい走ったのだろうか。。
ここは、、。
「はいよっ?」
助けてくれた声が、
俺の手に何かを渡してくる。
「あり、、がとう。。」
何だこれは、、
棒の様なもの。
釣竿か?網か?
「暗くて見えやしねえよ。」
さっきとは違う、もうひとつの声。
「まあ、そうだな。
ここまでくりゃあ大丈夫だろう。」
ガシャン、
カキン、、
何かを漁る音がした。
「あった。」
何かを取り出すと、
それは、赤く煜いた。
「退いてくれるかい、、」
俺は、慣れた目で舟の先端へと向かう。
夕焼けの様な灯りは、
辺りを照らし、全貌を見せた。
あはは、、
マジかよ。。
「今日も頑張ってくれよ?」
布を外し、大きな瓶を開ける。
中から沢山の灯りが溢れ出した。
「よろしくね!」
灯りは舟の上を飛び回る。
「どうなってんだ、、」
辺りは一瞬にして、
夕暮れ時の様に、なった。
「げっ、、。
なんか違うのが居るんだけど、」
細身の男は嫌そうに俺を見つめる。
「良いじゃん。
俺。初めて見たよ。
俺は、テン。
運転手は、オーン。
そっちがエドナ。」
エドナ「勝手に紹介するな。
オーン。
良いのか??」
オーン「なーに。
乗っちまったもんは仕方がねえ。
お前等が乗る前も稀にあったんだよ。
仕組みはよくわかんねえけど。
どうしてか。器と魂が不安定な奴が、
入れない場所や空間に入っちまうらしい。」
テン「ねえねえ?
君の世界ってどんな所?
何があるの?
楽しい??」
「、、、。
楽しくは、、無い、。」
テン「そうなんだ、、
僕の世界は楽しいよ??
美味しい物があって、、」
オーン「そのぐらいにしてやれ。
詮索されたくない事もあるんだろうよ。」
テン「ごめんなさい、、」
「いや、、いいんだ。
こっちこそ、ごめん。。」
何に対しての謝罪なのか。
気付けば謝っていた。
エドナ「まあ。
こいつからは、明かりが感じられねえからな。」
オーン「、、人間ってのは、大変って事だ。
よしっ。
始めるぞ?」
エドナ「人間。落ちるなよ?」
テン「人間?大丈夫。
近くに居てあげるから。
エドナはね、、
クールぶってるけど、
全然クールじゃないんだよ。」
エドナ「テン。
聞こえてるぞ?」
オーン「あははは。」
テン「えいっ。」
ヒューン、、
ポチャン。
ここで釣りをするのか、、
渡された釣竿で真似する様にやる。
「んっ、、。」
上手くいかない。
エドナ「、、。」
オーン「釣り。
したことねえのか?
こうやってやるんだ。」
俺の身体を後ろから動かし、
レクチャーしてくれる。
「ありがとうございます、」
オーン「なーに。
テンやエドナも最初は下手だったよ。
まだ時間はあるんだ。
自分のペースでやりあ良いさ。」
「はい、、。」
エドナ「、、。」
テン「釣れた釣れた!」
オーン「今日は大量だな。」
、、、。
釣れない。
オーン「エドナ。
腹拵えしとけ。」
エドナ「、、別に。まだ良いよ。
せっかくの良いポイントなのに、、」
テン「じゃあ、僕が先に!」
エドナ「分かったよ、、」
『シシシシシ。』
何だか温かかった。
それは、凄い前に。
感じた事のあるような感じのナニカ。
目の前では魚をそのまま食べている。
エドナ「もしかして魚。食えねえのか?」
「いや、。」
オーン「バックに入ってるよ。
小さな刃の付いたヤツが。
それと、板もあったはずだ。
エドナ取ってきてくれ。」
エドナ「ったく、。」
魚はピチピチと跳ねている。
テン「小さな刃の付いたヤツってなあに?」
オーン「包丁っつってな。
人間は、それを使って捌くって事をするんだ。
それからじゃねえと食えねえらしい。」
テン「へー。。
人間て大変だね。。」
エドナ「ほらよ。」
「、、ありがとうございます。」
エドナ「ありがとう。
で、いいよ。」
「ありがとう。」
エドナ「、、おう。」
渡されたまな板と包丁を受け取り、
魚を乗せて捌く。
別に上手い訳じゃないけれど。
おろすことは出来る。
エドナ「すげーな。。」
食い入る様に、ただ見つめる。
「よしっ。
、、頂きます。」
何の魚なのかは分からない。
身は白く、味は脂の載った鰤の様な味。
「うまい、、」
一段落着いたのか、気付けば見られていた。
オーン「器用だな?」
テン「すごい!!」
エドナ「この余ったのは、
どうすんだ?」
「本当は、水で煮たりして、
出汁をとって。
味噌汁にしたりするかな?」
テン「味噌汁って美味しい?」
「うん。。」
エドナ「ひとつ貰って良いか?」
「どうぞ?」
テン「僕も。」
オーン「じゃ、俺も。。」
『、、、。
旨い!!!』
エドナ「普通に食うよりも全然良い。
このかてえやつがたまに刺さって痛かったが。
これは痛くねえし、何か良いぞ!」
テン「すごいね!人間!
とても美味しいよ!!」
オーン「うん。
まあ、プロにはかなわねえが。
練習すれば、もっと上手くなるだろう。」
誰かに褒められた事自体が久しぶり過ぎて、
どう反応すれば良いのか、忘れてしまった。
、、俺は今。どんな顔をしているのだろうか。
『オォオオオオオ!!』
突然唸るかの様な声は、波を揺らし、
空気すらも揺らした。
「いたっ、、、」
鼓膜が破れてしまうんじゃないか。
そんなぐらいに、耳の中へと響いた。
耳を手で覆うが、俺以外は普通にしていた。
オーン「お出ましだ。」
エドナ「よしっ」
テン「人間も。早く?」
手渡された釣竿を持ち、一緒に海を眺める。
遠くで何かが出てきた。
大きな蛇の様な、夕暮れ色の何か。
「、、何だ、、」
神釣り 影神 @kagegami
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