第5話 勇者、三毛猫部隊

 ネコ科の世界でプーマ国と山猫国が戦争をしている。

 その中で最も勇敢と讃えられているのはプーマ国の三毛猫部隊だ。


 三毛猫部隊の隊長マイクは思い返す。

 国境の戦いでは、山猫軍が崖の上から砲弾や手榴弾を浴びせる中、600匹のうち半数の仲間を失いながら、真冬の凍りつく崖をよじ登り山猫軍を打ち破った。このとき幼なじみで頼りになる副長のオリバーが大怪我をし亡くなった。


 野原の戦いでは兵士500匹のうち400匹を失ったが勝利した。山猫軍が銃弾を横なぶりの雨のように降らせる中、隠れる場所もない野原をひたすら突進し得た成果だ。銃弾で血塗れになった仲間の死体が草の上におびただしかった。


 勇敢な三毛猫部隊が他の部隊と違うのは、少年と呼べる年齢から高齢者まで年齢の幅が広い点、そして三毛猫部隊の兵士が山猫とプーマの混血ということだ。


 プーマ国は戦争が始まり、山猫国に情報を流したり裏切るかもしれない山猫系プーマを迫害した。財産を取り上げ収容所に入れたり、過酷な強制労働をさせた。


 山猫系プーマであるマイクの子供たちも石を投げられ、髪や服を掴まれ振り回され、突き飛ばされ、蹴られた。

 マイクの妻が買い物に行っても

「お前たちに売るものはないね」水を掛けられた。マイクの家族は虫を捕まえて飢えをしのいだ。


 マイクたちは

「私たちはプーマ国で生まれた。裏切ることはしない。虐げることはないだろう」

 プーマ国は言う

「山猫国にはオマエたちの祖父母や親戚もいるし信じられない。だったら、オマエたちが裏切らないことを証明してみせろ!」


 かくして三毛猫部隊が結成された。プーマ軍の他の部隊が恐れて尻込みする危険な戦地に自ら志願して赴き、誰もが躊躇する命懸けの作戦を遂行した。


 たとえ撃ち合う相手に山猫の親戚がいたとしても、戦って裏切り者でないことを証明しないとプーマ国に住む家族や仲間が辛い目に遭う。

 だから三毛猫部隊は自分が死ぬことも厭わず前に前に進む。

 その勇猛果敢な戦い振りから勇者の部隊と云われるようになった。


 プーマ国は使い捨ての駒のように、いつも激戦地に三毛猫部隊を派遣する。三毛猫部隊は多くの死傷者を出しながらも勝利をもたらす。


 マイクは願う

「早く戦争を止めてくれ。俺たちは妻や子供や親のために戦いを止められない」

 そう願いながら、最も恐れられている勇者、三毛猫部隊は今日も銃を手にする。

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