第4話 REGENERATION〜再生〜
タコの足は再生する。
海の中の町に住むカイトは気のいいタコだ。
月曜日、いつものコンビニでバイトをしている苦学生が受験に合格した。
「学費や生活費の足しにしてね」足を一本売ってお祝い金を渡した。
火曜日、大きな台風が来た。沖合いの被災地へ寄付をするため足を一本売った。
「早く復旧しますように…」
水曜日、近所の病気の子供に
「元気になってね」足を一本売って治療費を工面した。
木曜日、足が再生しないお年寄りに義足用に足を一本上げた。
--少しでも泳ぎやすくなったらいいな--
金曜日、親が世話をしなくて、ご飯を食べていない子供のために
「この食堂でいつでも好きなものを食べていいよ」
食堂に足を一本、前払いした。
土曜日、雇止めにあって仕事がない隣の人のために足を一本売って
「来月のアパート代を払ってね」
今、カイトの足は二本しか残っていない。早く泳げないし、流石に不便だ。足は再生するけど時間が掛かる。
カイトの行為は周りから褒めてもらえるどころか
「お人好し超えてバカだよね」
「自己満足してるだけじゃない?」散々なことを言われている。でも、本人は気にしていない。
日曜日、二本の足で泳いでいると、ボートのスクリューに巻き込まれそうな子供を見つけた。
「危ない!」二本の足で一所懸命泳いで子供を助けた。
しかし、スクリューでカイトの二本の足は切断されてしまった。
足が全部なくなり泳げずに海の中を漂うカイト。港へ流されて、コンクリートの桟橋に波に押しつけられて動けなくなった。そこに大きな船がやってきた。
「押しつぶされる!」カイトは目を閉じた。カイトは桟橋と大きな船に挟まれて押し潰された。
「あれっ」目が覚めたら、ぺっちゃんこになったカイトはひらひらと凧になって、高い空から青い海を見ていた。海は透き通っていて中までよく見える。
隣に神様がいた。神様がカイトに言った。
「ここから見ると困った仲間が何処にいるかよく分かるだろう。見つけたら私に教えておくれ。これからは私が皆んなを助けることにしよう」
足のない凧のカイトはにっこり微笑んだ。
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