第2話 新型マスク
新型感染症が流行りだして十数年経った。マスク着用やリモートワーク、リモート授業は習慣となっていた。
リモートになり本人確認は印鑑から顔認証に変わった。昔からのIDパスワード方式はサイバー攻撃で使えなくなって久しい。
顔認証は特徴点を使って本人確認をする。例えば、左右それぞれの目の両端や上下を点と捉え、各点と各点の距離や角度で本人かどうかを確認する。
N国は膨大なお金を使って顔認証システムを開発した。昔は10万分の1だった誤認識が1億分の1まで低くなり、実用上問題ない本人確認ができる。もちろんマスクは着けたままでOKだ。
初対面のTV会議でも相手が本人かを確認できる。今ではネットでの買い物だけでなく、お店でカードやスマホを出すことなく顔認証で買い物ができる。国民の生活にはなくてはならないシステムになった。
最近、女子学生の間で3Dフェイスマスクがリモート用パーティーグッズとして流行りだした。
安価な高精度3Dプリンターキットを買って、ネット上のアイドルやモデルの映像データをインプットするだけで好きな顔のマスクを作ることができる。普通のマスクと特殊フィルム製の目と鼻の部分が一体化していて、ネット越しなら違和感もない。
ほどなくして数万人単位で、同じ顔の人があちこちに出現するととなり、顔認証システムを使うN国は大混乱となった。
その頃、隣の大国の諜報機関が祝杯を上げていた。
「作戦は大成功だ。高価な高精度3Dプリンターキットを安く販売した甲斐があった」
「混乱に乗じて、N国の要人になりすまして機密情報も手に入れた。富裕層の預貯金を窃取し自国に送金した。混乱が続けばN国の離島や海域の実行支配もできるだろう」
「N国の奴らはさらに慌てるだろうな。ふふっ」
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