第3話 なんだかわいいじゃん

 俺は今自分の漏らした聖水を必死に拭いている、そしてその聖水は俺のだが俺のじゃない、俺は男だが今男じゃない、心は一色響だが体は一色響じゃない。

今俺は桜四季と言う後輩と入れ替わってしまったのだ、そして漏らした……それを今拭いている。


「なんでこうなったんだ……」


 とりあいず、おそらく桜の心が入っているであろう俺を探す必要がある。学校で会うのが一番だが桜の家から学校までの道のりが分からない、さっき窓からチラッと外を見たが見たことない風景だった、桜の方は部活の仲間と遊ぶ時何度か家に来たことがあった気がするからきっと大丈夫だろうが、


「せめて、スマホが開ければなぁ」


 そうすればマップアプリとかを使ってむかえるんだけど、さてどうしたものか、


「よし、やっと拭き終わった」


 さてと、このまま下半身半裸でパジャマのTシャツの長さで大事な所を隠してる状態をなんとかしないとな。


「四季ー行ってくるよー、四季?どこにいるのー?」


 母親の声に再び体を震わせる、この姿のまま出るわけにはいかない!とりあいず返事をしないと


「四季ー?トイレ?」

「う、うんいってらっしゃい」

「いってくるねー遅刻しないようにね〜」


 そうして母親の気配は遠のいて行った。

好都合だ、これで母親を気にせず家を歩けるようになったとりあいず桜の部屋に行って制服を探そう、


 その後クローゼットで制服を見つけ、ブラの付け方に戸惑ったり下着に興奮しながらも、なんとか着替えは済んだ。普段なら後は髪を整えて学校に向かうだけだが四季は普段そこら辺に対して無頓着なのか無造作に髪を下ろしているだけだ、実はずっと整えたらどうなるのかと思っていたのだ。俺の父は美容師で、俺も夢は美容師の身としては、このまま学校に行くなんて有り得ない!


 洗面所に向かうとおそらく母親が使っているであろう美容用品があった、それを使って時間も忘れて整えた。


「……我ながらかわいい」


 ぼさぼさだった髪は整えられ、どころか前髪をアイロンで軽く浮かせ横に流すように作り、右側にはよく見ると見える三つ編みが作られている凝りっぷりである。

 さらにおそらく母のものであろう化粧道具を使い軽くだがメイクまでしていた。その結果


「え⁉︎もう9時すぎ⁉︎やべ遅刻だ!」


 そうして四季の体で遅刻してしまった事への罪悪感を抱きながら外へ向かった。


 その後道に迷い、遠回りしながらもなんとか知っている道に出ることができ、学校に着くことができ、教室へ向かう。


「確か2組だったよな」


 授業中のためか静かで誰もいない廊下を歩き、教室の前なら着く、普段と違い四季として教室に入ることに緊張しながらも教室のドアを開けると一斉に視線が集まる。授業中に誰かが入ってくれば視線は集まるものだ、だが普通ならすぐに興味を無くして霧散するはずの集まった視線がなかなか外れない。

 

「え?だれ?」「転校生?」


 そう小さな声で教室がざわつく。

 俺は少し居心地の悪さを感じながらも小走りで授業をしていた男性教師の近くに向かい「すみません、遅刻しました」と言った。


「あ、あぁ担任には伝えておくから、次から気をつけるようにな」


「はい、気をつけます」


そう言って教室を見渡し、空いている席が一つあったのでそれが四季の席であろうと、そこに向かい席に座った。机の中に入っていた教科書を出し裏を見ると桜 四季と綺麗な字で書いてあったので席は合っていたようだ。

 それにしても視線がすごいなー、普段遅刻しない人が遅刻したからなのか、それとも見た目の印象をガラッと変えたのが原因か。まぁいいか、次の休み時間俺の教室に行こう。きっと俺の体に入った四季がいるはず……。


 授業が終わり席を立とうとすると、


「四季ちゃんが遅刻って珍しいね、しかもどうしたの?イメチェン?」


 ショートの女の子が話しかけてきた。誰?と言いそうになる口を押さえて、


「う、うん」


 と答えると横から別の女の子から話しかけられた。

 

「びっくりしちゃった!すっごい可愛くなったね」


「本当にすごい可愛いよ佐倉さん!」


 一気にたくさんの女の子たちに囲まれて動けなくなってしまった、しかも俺はこの女の子たちを誰一人として知らないので対応の仕方が分からずぼんやりとした返答だけしか出来なかった。


 つ、疲れた……

 

 結局解放されたのはチャイムがなってから、次の授業の教師が入ってきてからだった。てか四季こんなに友達いたの?ってくらい絡まれた。俺の印象では物静かで広く人間関係がある感じではなかったのだが。

 そんなことより俺に会いに行けなかった、しょうがない昼休みにでも行こう、そっちの方が長く話せるだろうし。


 

 ちなみに授業はとても簡単だった。

「ここを桜答えろ!」

「はい!」

「正解だ、だがこっちのやり方はまだ説明してないが……?」

「よ、予習ですよ〜」

 






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