夏休みとりこの友達

 夏の風物詩である小鳥の囀りに、肌を突き刺すように強烈な猛暑。

 夏休み初日の朝。

 俺ことゴキブリ人間兼戸塚菌は休日にも関わらず珍しく早起きをし、リビングにてリコと共に朝食を食べていた。

「んで。あのお兄ちゃんがこんな時間に起きてくるなんてどういう風の吹き回し?」

「...俺ってゴキブリ人間兼戸塚菌じゃん?流石の俺もゴキブリからは抜け出したいと思って、まずは夜行性をやめてみたHAHAHAHAHA」

 ちなみに俺は中学時代、体育終わりにあまりに汗臭かったらしく『カメムシめがねくん』と呼ばれていたHAHAhaha

 一応、毎日風呂にも入っているし消臭スプレーも使っていたので、俺は本当にカメムシめがねくんなのだろう。

 ちょっぴり自尊心が傷ついたが、これを機にコンタクトに移行できたので感謝である。

 .......リアジュウゼッタイニユルサナイ

「りここそこんな早起きしてなんか用事か?」

 ちなみに今日、早起きした理由は千歌先輩とデート?するからである。

 何をするのかは向こうがプランを考えてくれているのでわからないが、趣味に関する事と言っていたのでおそらくロック関係の施設に行くのだろう。

「私は友達とショッピング~!......そんなお兄ちゃんこそ、女出来たっしょ?」

「HAHAHAナイス皮肉!俺みたいなゴキブリ人間にも彼女が出来るなら、世界は幾分か希望が持てたんだろうな」

「ふぅ~ん?へぇ~?」

 勘が鋭いりこに危うくバレかけたが、取り合えず夏休みが終わるまでは仮でも千歌先輩と恋人関係にあることは隠し通した方がいいだろう。

 まだ、どうなるかも分からないことを伝えてりこを傷つけるなんて事は絶対にしたくない。

「...なら、お兄ちゃんが何するのさ?」

「俺は推してるロックバンドが都内でライブするらしいから一人寂しくそれ聴きに行くだけだよ」

「.......お兄ちゃんってヒールキャラな癖に嘘ついてる時分かりやすいよね~妹としてそんなで彼女さんと上手くやれるのか心配だよ」

「ガチだぞ」

「はいはい。お兄ちゃんは何か焦った時に自虐ネタに走る癖直した方がいいよ~」

 ......流石、父さんと母さんの良い遺伝子を根こそぎ持って行った我が妹。。。

 ゴキブリ人間兼戸塚菌の嘘なんて通用しないみたいだ。

「......まさか、この兄から女の香りがしてくるとは思わなかったな~?」

 りこは悪魔のように歪んだ笑みを浮かべ、俺のことを舐めまわす様に見つめてきた。

「HAHAHAHA」

 取り合えず分が悪そうなので、俺は自室に戻り家を出る準備を始めることにした。

 .......かくして、色々とアクシデントは合ったものの俺の夏休みは幕を開けたのだった。



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