千歌先輩と妹1

 文化祭当日。

 文化祭実行委員は準備期間と文化祭最終日はかなり出番があるのだが、前日は開幕セレモニーの裏方以外何もやることがないので俺と千歌先輩は見守りという名目で校内を徘徊していた。

 まあ、実際の所はただのお遊びみたいなものなのだが。

「......なんか、こういう非日常感?楽しいよね!」

 生徒や一般客など関係なくどこからともなく聞こえてくる歓喜の声に、人気の出店に並ぶ長蛇の列。

 焼きそばやたこ焼きのガツんとした香りに、スイーツの引き寄せられるような甘い香り。

 ......当たり前ではあるが、まさに頭に思い浮かべていた文化祭像そのままだった。

「ですね!でも、俺なんかが歩き回ってたらみんなが不快に思って帰ってしまわないか心配です!HAHAHAHA」

「毎度のことだけど本当に君はブレないよね!?」

 ちなみに俺は今、文化祭の甘い香りに誘き寄せられたゴキブリ《同志》と一緒にゴキブリ人間こと自分までもが駆除されないかが一番心配である。

 FUFUFU......ヒトコワイ

「......君の卑屈は置いておいて、お姉さんとクレープ食べにいこーよ!」

「ああ、まあはい。。。気が向いたら」

「なんで露骨に嫌そうな顔!?」

「だって高いし、敷居高いじゃないですか」

 クレープ屋なんて言わば、お洒落イケイケうぇーい!なカップルの幽閉施設である。

 そんな崇高な場所に俺のようなゴキブリ人間兼戸塚菌が入り込もうものなら、物理的にも精神的にもグサりと刺されてジ エンドだ......!

「高くないよ~!.......それにお姉さんが君のこと守るからさ?」

「けっ、強者陽キャの余裕凄いですね~」

「だってクレープ行くだけなんだもん!?」

 ......とはいえ、千歌先輩には毎度迷惑を掛けているので行かないわけにはいかないだろう。

 どうも、施されるだけの受動的なヤツにすらなりきれない負け組のゴキブリ人間兼戸塚菌です!

「なら、行きましょう。お腹も空きましたし、たまには奢りますよ」

「え......!?まじ?やった!」

 流石に奢らなすぎなので、ここでやっておかないとマズイだろう。

 ちなみに千歌先輩はと言うと余程嬉しかったのか、頬を紅色に染め上げ前髪の先を落ち着きがない様子で弄っていた。

「でも、こういうデート久しぶりだな~」

「えっ?...これって一応お仕事じゃないですか?」

「......ばか」

 俺の返答が気に入らなかったのか頬を膨らませ、駆け足でクレープ屋へ行ってしまった千歌先輩を追いかけようとしたその刹那。

 背後から聞き馴染みのある女子の声が聞こえてきた。

「......お兄ちゃん、そんなに急いでどうしたの?おしっこ?」

 声の主は我が妹の戸塚 りこだったのだった。



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