戸塚家での一幕とこれから

 作業があらかた終わりやっと家に帰宅できた午後23時。

 もう、夜も更けてきたからか、玄関の中まで深夜独特の寂しい香りがする気がした。

 ......まあ、俺ことゴキブリ人間兼戸塚菌の人生なんて常に惨めで悲惨な感じだったので、慣れているのだがHAHAHA

「ただいま~」

 いつも通りリビングのドアを開けると、何やらりこと母さんはリビングにてドラマを観ているようだった。

 ジャ〇ーズの有名アイドルや今ネットで話題の人気女優が出ているので、おそらくゴールデンタイムにやっていたドラマの録画でも見ているのだろう。

 その証拠に慣れた手つきで、CMを飛ばしている。

「あ~お兄ちゃん、おかえり~結構遅かったじゃん?もしかしなくても、女?」

「HAHA我が妹ながらナイス皮肉!普通に委員会で奴隷のように仕事させられてただけだよ」

 よく、日本人は皮肉を言わないと巷で囁かれているが、千歌先輩や、りこが皮肉を駆使して俺をいじめてくるのでおそらく迷信なのだろう。

「おつかれ、優。どう?順調?」

「まあ、ぼちぼちって所かな。母さんの所は?」

「私の所は全部終わったわよ~」

「楽しみだな~!学校でのお兄ちゃんの姿とか何気に気になるし」

 ......学校での俺の姿?

「なあ、我が妹よ」

「どうしたの藪から棒に」

「夢を壊すようで悪いけど、俺は陰キャでもなければ陽キャでもないただの無キャだぞ。学校でも家でも変わらない。なぜなら、何もないからな!HAHAHAHA」

「わかってるよ、お兄ちゃん!でも、妹心的には兄を見守りたいんだよ!あと、受験勉強もサボれるし」

 絶対に目的が前者じゃなくて後者なのだと鈍い俺でも察せられたが、嘘でも俺の為にここまで言ってくれるマイ スイート エンジェルはいないので、気にしないことにした。

「二人ともおバカなこと言ってないで寝る準備しっちゃいなさい~睡眠不足が受験と文化祭の一番の敵なんだから」 

「はい...っと、その前に一ついい?」

 母さんは俺の表情をみて察したのか、深々と頷いた。

「二人とも文化祭の最終日、うちの教室にきてくれないかな?」

 ちなみに教室は俺の底に落ちた信頼度では無理だったので、千歌と里香に頼み担任を説得してもらった。

「......どしたの?」

「いきなりって訳にもいかないから詳細は文化祭の空き時間にでも話す。母さんもそれでいいよね?」

「.......ええ」

 かくして、戸塚家家族......そして千歌先輩との今後すら変わる文化祭が始まったのだった。


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