幼馴染の過ちと償い

 作業を始めて4時間が経った午後20時。

 生徒会の顧問曰く後数日で始まってしまう文化祭の為に今日は22時まで学校に残って良いとのことなので、私は《春風 里香》晩御飯の買い出しに亜里沙先輩と共に出かけていた。

「アイス溶けてそうで心配だね~」

「ですね~」

「でも、ドロッドロに溶けてる方が燃えるよね!」

「亜里沙先輩は後輩に何を言ってるんですか......」

 ふと夜空を見上げると夜が更けているからか、夏の大三角である織姫星、彦星、デネブが夜空を彩るように輝いていた。

 昔、彼と行った花火大会の帰り道もこんな風に綺麗で壮大な夜空だった気がする。「......」

 ......どうして私はうまく立ち回れないのだろうか。

 以前、彼に償おうと決意した時の私の決意は本物だったと自負している。

 だからこそ、吉田の件も全てを捨てる覚悟で吉田突っかかって行けたし、その後もほとぼりを冷ます為おかしな噂を流している輩を呼び出し直談判することが出来たのだ。

 でも、今になっていくら頑張った所で私が友達を裏切った最低なヤツであると言う事実は一切変わらない。

 ......私がどんなに頑張った所で彼に取っての私への認識は今も昔も変わらず『裏切り者』だし、今辛うじて関わってくれているのも吉田の件で借りが出来たからだろう。

 結局の所、戸塚 優に取って『いじめっ子』と『春風 里香』もさして変わらないのだ。

「どうかした......?」

「い、いえ!何でもないです!」

「そう?悩みとかあったら何でも夜の帝王である亜里沙さんに言ってよね~!」

 明らかに今の彼に取って私はもう用済みである。

 数か月前までの一人だった彼になら、私でも何らかの事が出来たのかもしれない。

 だが、今となっては彼の周りには私なんかより遥かに素敵な人がいっぱいいるのだ。

 それにつけ入る隙が無い事は当事者である私が一番分かっているし、迷いから無言になってしまい周りを心配させるなんて本当にお荷物以外の何物でもない。

 ならば、答えはもう決まりである。

「......ご心配させてしまいすみません!亜里沙お姉さまが綺麗すぎて見惚れちゃってました...!」

「え~?やっぱり?......みんな鼻血出しちゃうから、色気抑えてたのにな~」

「ムンムンですよ~」

「そんなに私のこと好きならこの後、私にお持ち帰りされとく......?」

「いや、いいいです」

「即答かよ!?」

 勿論、まだ全てを償いきれたなんて全く思っていない。

 これからも彼に何かあるのならば、全力でそれを潰しにいくつもりである。

 だが、本当の意味で出来ることなんて邪魔者である私には1つしかないのだ。

「......これが終わったら」

 かくして、私は彼から離れることを決意したのだった。



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