文化実行委員会と孤立系ぼっち
あれから無事に文化実行委員になれた俺は、委員会としての初の集会があるとのことで生徒会室に訪れていた。
どうやら、生徒会メンバーと文化実行委員で色々と話し合いをするようだ。
「失礼します~」
ゴキブリ人間兼戸塚菌の腕が貧弱過ぎるのか、いつもより何だが重苦く感じる扉を開く。
......生徒会室には如何にも真面目そうな生徒数人と、なぜか千歌先輩がいた。。。
まあ、真面目で陽キャな先輩がここにいても何ら不思議じゃないのだが。
「あれって教室で色々とやらかした例の男子じゃない?」
「ほんとだ...私、怖いんだけど」
「ここでも暴れるのかな」
「お前、聞こえるぞ~」
何だか周囲から陰口が聞こえてくるが、あの一件以来よくあることなので仕方がない。
......というか、承認欲求が満たされるううううぅぅぅぅぅ!
結局の所、俺のような普段誰にも構われないよな戸塚菌はそれが例え悪口であろうと、注目の的になれるのならば嬉しいのだ!!!
ちなみに最近の高校のあだ名はチー牛であるHAHAHAHAHA
「お~い!優しくて可愛い君のお姉さんが席取っといてあげたよ~」
千歌先輩が、大きな弧を描くように手を振ってきた。
何だか顔をしかめ、周囲を睨んでいる気がするが俺の気のせいだろう。
兎にも角にもコミュ力皆無な俺に取って、早くも委員会内で話せる人を見つけられたというのは大きな収穫である。
「先輩はどういう風の吹き回しで立候補したんですか?」
先輩の右隣の席に座り、筆記用具などをすべて机に広げ呟いた。
「........君が文化委員になったって噂になってたからかな?」
「流石、人類の最大の敵であるパンデミックな戸塚菌ですね!HAHAHAHA」
「卑屈にならないでよ!?...君こそなんで、文化委員になったの?めちゃくちゃ謎なんだけど」
千歌先輩は大きな瞳を見開き、細くしなやかな首を傾げた。
「千歌先輩のお母さんが俺にわがままを言っても良いって言ってくれたじゃないですか」
「うん」
「だから、わがままを言う自分を自分で許す為にも、母さんに自立した姿を見せたいなと思いまして」
「........君って何だかんだ言って凄く真面目だよね」
「けっ、今更気づいたのかよ。中学の時は真面目系クズって言われてたんだぞ」
「辛辣になるのやめて!?........でも、卑屈+辛辣で技術点高いね。お姉さん感動かも!」
何が感動なのか、分からないがご満悦そうなのでよしとすることにした。
「........なので、俺のことを心配してくれたのは嬉しいんですけど今回は一人でやりたいというか。。。千歌先輩への返事も含めてですけど」
これからもこうして千歌先輩に頼り続けたら本当の意味で腐ってしまう...そんな気がした。
それは先輩の想いにつけ込む最低最悪で不義理な行為なので、絶対にそんなことしたくない。
「...ごめん。今回は君の為じゃないんだ」
予想外の返答に思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「...里香も手伝うんでしょ?」
「はい。あいつのこと知らないヤツなんて居ないので、呼び込みとかしてもらうつもりですけど...」
だが、それは依存関係にない上での協力だから俺は頭を下げ頼んだのだ。
もし、里香と昔のままの関係性だったら俺は声を掛けていなかっただろう。
「嫉妬ってことですか?」
鈍い事で有名なゴキブリ人間兼戸塚菌も流石に分かった。
「.......だって、他の女に鼻伸ばしてる君なんて見たくなかったんだもん!」
「...」
この手のことに対する経験値が不足し過ぎていて、俺はなんて返せばいいのか分からなかった。
というか、学校中で陰口叩けらている孤高の戸塚菌にそんな経験がある方がおかしい。
「別に私は文化祭を成功させるために全力を尽くすだけ.。君の邪魔はしないよ.......ダメかな?」
いつまでも告白の返事を待たせ続けられている先輩がそう思うのは当然だし、きっと本当にただ文化祭の成功に全力を尽くすだけなのだろう。
「わかりました。。。よろしくお願いします!」
「うん!よろしくね!」
かくして俺の文化祭実行委員としての日々が幕を開けたのだった。
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