夏川家
あれから窮屈で苦痛な電車に揺れること15分。
色々な疲労で死にそうになりながらも千歌先輩宅に到達することができた。
都内の閑静な住宅街に佇む洋風をモチーフとした二階建ての一軒家。
庭には色とりどりで鮮やかな花々が植えられていて、如何にもリア充一家が住んでいる愛の巣と言う感じだ。
「......」
........あああぁぁぁぁ!!!!
人生充実オーラで蕁麻疹がああああああああああああぁぁぁぁ!!
いくら、人類より生命力に満ち溢れているゴキブリ人間と言えど限度があるのだ。。。
「今、鍵開けるからちょっと待っててね」
「はい、ってか千歌先輩の家って感じですね」
「え~そうかな?」
「なんか、幸せオーラ出まくりで死にたくなりましたHAHAHA」
「お姉さん、君の地雷が分からなさ過ぎて怖いよ!?」
なんて俺が人生コンプレックスを拗らせているうちにドアの開錠を済ませた先輩が、鍵をゆらゆらと揺らしながら俺のことを手招いてきた。
晩年ぼっちだった俺に取って誰かの家に行くなんて人生初めての経験である。
俺は緊張から高鳴る胸を抑えながら、重い一歩を踏み出した。
......千歌先輩宅に入るとまず何事にも例えられないような甘い香りが鼻腔を包み込んできた。
柔軟剤のような、フルーツのような、ボキャ貧の戸塚菌では言語化できないようなそんな香りである。
「おかえり千歌~......それとこの子がさっきメールで言ってた彼氏くん?」
ドアの開閉音で気づいたのかリビングらしき所からエプロン姿の女性が出てきた。
切れ長でクールな印象を抱かせる瞳にスタイリッシュさを感じる薄いメイク。
千歌先輩とは違い人工的に染めているのか黒毛混じりな艶めかしい黄金色の髪。
先輩が以前、親が離婚して里香と別々の苗字になったと言っていたが、この女性はおそらく千歌先輩の父さんの再婚相手なのだろう。
その証拠に見たところ30代前半くらいに見えた。
「...ま、まだ違うし!」
「まだ””ね~?ふぅーん...?千歌はこういう清楚な感じの男の子が好きなんだ~」
「......お母さんのいじわる」
さ、流石千歌先輩の母さんである。。。
こんなドブネズミのように薄汚れた俺が清楚.......?
中学の時に隣の席の女子が消しゴムを落として、それを拾ったら露骨に嫌そうな顔で「...そ、それもういらないからあげる」って言われた俺が清楚!?
「HAHAHA俺が清楚って、流石は千歌先輩のお母さまですね!ナイス皮肉です!」
「君は君でお得意の卑屈発動しなくていいからね!?.......まあ、そういう所もお姉さん好きなんだけどさ」
「けっ、母親の前だからって良い子ぶるなよ」
「まさかの辛辣!?........お母さんの前でもそのモードになるんだ。お姉さん感動」
「ははっ、賑やかで面白い子じゃん~?千歌のそんな顔初めて見たかも?...さ、もう夕食用意しておいたから上がりなさい~」
見た目は正直バリバリに元ヤンと言う感じだが、話してみると気さくで話しやすそうなお母さんだったので命拾いした。。。
というか、こんなゴキブリ人間兼戸塚菌を受け入れてくださったのだから、軽く聖女である。
何度も言うがもし俺が千歌先輩の親でこんなゴキブリ人間を連れてきたら除菌(物理)するだろう。
「義理のお母さんか」
......もし、松坂さんと母さんが結婚したらこんな未来が待ち受けているのだろうか、、、なんて思いつつ俺は靴を脱ぎ、いつもより丁寧に揃えた。
呑気なゴキブリ人間な俺はこの後あんなことが待ち受けているとも知らず、千歌先輩のお母さんが作ったであろう料理の香りに心躍らせているのだった。
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