夜遊びの相談と問題提起

 あの居酒屋でこういう話をするものあれだったので、状況を簡単に説明し本題は駅前のベンチで隣り合い話すことにした。

 現在時刻は午後9時半ということで、人通りも少なく夜空を彩る星々たちも鮮明に見えた。

 ......それにしてもどうしてゴキブリ人間兼戸塚菌である俺の人生はお先真っ暗なのに、星はこんなにも照り輝いているのだろう。

 あっ、でもゴキブリはテカテカしてるし、そういう意味では輝いてるかHAHAHA

「それで重複してしまいますが、恋愛感情がなくても女子は男子の肩に抱き着いたり、頭撫でられて頬を赤らめたりすますかね?」

 勿論、女子と一括りにしても様々な性格、文化、感性を持った人がいるのだから答えないない事は分かっている。

 だが、傾向はあると思うのだ。

「......な、ないとい思うよ?私が前に君の手を握った時だってそういう気持ちあったし...」

 千歌先輩は黄金に輝く髪をぱたぱたと揺らしながら、頬を紅色に染め俯いた。

 照れ隠しからか、髪を弄るその仕草もまるで西洋の絵画のように神々しい。

 何だか、DNAの差を見せつけられた気がする。。。

 ま、まあ俺も人から嫌われると言う点においては他者の追随を許さない程には優れてますし!

 小学生4年生の時なんて小1の下級生から荷物持ちさせられたくらいですし!HAHAHA.......

「なるほど、ならあの男の人は母の彼氏の可能性が高そうですね」

「......な、なんで私が手を握った時のくだりスルーするし!」

「正直、歴代友人が2人の俺に取ってなんて反応するのが最善なのか分かりませんでした!いやあ、イマジナリーフレンドとならコミュ強なんですけどねーHAHAHA」

 千歌先輩は頬を膨らませ、不満を訴える様に上目遣いでこちらを見つめてくる。

 おそらく俺が茶化したことが気に入らなかったのだろう。

「......ばか」

「...」

 無論、戸塚菌と言えど母親の問題だけじゃなく千歌先輩とのことも真剣に考えなければいけないと分かっている。

 だが、考えても考えても好きなのかそうではないのか答えが出ないのだ。

 もしかしたら、潜在的に躊躇っているのかもしれない。

 ......本能で動く男、それがゴキブリ人間こと戸塚 優である。

「.....まあ、ヘタレなのはお姉さん優しいから許すとして、考えるべきは君のお母さんが男性と付き合っているという事実じゃなく、なぜこの件を君が問題提起したかにあるんじゃないかな?」

 確かに盲点だった。

 なぜ、俺は母が他の男性と親しくしていることについてここまで関心を持っているのだろうか。

 母だって独身の女性だ。

 普通に考えたら色恋沙汰の一つや二つはあるだろう。

 ならば。。。

 しっかり自分だけの答えを導き出さなければいけないはずなのに、千歌先輩の件と同じく靄が掛かっているように何も思い浮かばない。

 だが、流石は先輩だ。

 俺のようなゴキブリ人間兼戸塚菌にはこんなこと一生思いつかなかっただろう。

「流石、先輩です!考えてみます!」

「......えへへ!そう?...やっぱりお姉さん感が滲み出ちゃったかなあ?」

「けっ、すぐ天狗になるなよ」

「まさかのここでも辛辣発動するんだ!?」

問題は明確化されたものの、さらに抽象度が増し今日は一睡もできないのだった。



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