教室にお迎え

 あれから一週間が経った。

 あの一件により様々な変化が生じたことは言うまでもない。

 まず吉田が転校したこと。

 おそらくこのままこの学校にいるのは精神的に辛かったのだろう。

 ゴキブリ人間兼戸塚菌な俺も世間体と言う名の集団圧力がなかったら多分辞めている。。。

 ぶっ壊れている俺と言えど今回は小学生の時に下級生から『戸塚菌くんうぇ~すww』って言われたのと同じくらいには傷ついたのだ。

 まあ、今回の件でまたリア充たちの青春の一ページを俺色に染められたので安い物なのだが!

 ......承認欲求が満たされるううううううう!

 そしてもう一つの変化は...

「戸塚~このワークの所教えてくれない?」

 LHRが終わり皆が一目散に教室から出ていく中、なぜか陽キャ連中と先ほどまで駄弁っていた春風が現代文のワーク片手にこちらへ駆け寄ってきた。

 この前の件は春風の尽力で吉田の取り巻きたちにも厳重注意や休学などの処分が下ったということで、それを機にたまに喋る仲になったのだ。

「それは現代文で万年赤点を連発している俺への皮肉か?HAHAHAナイスジョーク!」

 ......ゴキブリ人間兼戸塚菌な俺は自分の存在意義を保つため、日々勉強をしているのである程度の点数は取れると自負しているのだが、いくら勉強しても国語だけはダメなのだ。

『Qこの時の作者の気持ちを書きなさい』

 ???知れねーよ!

 そんなことが一学生兼戸塚菌の俺に分かるのならば世界は幾分ましになっているだろう。

「ご、ごめんね...?」

 ちなみに俺の社会不適合者ジョークはナウでパーリーピーポーでうぇーい!な春風には通じないみたいでいつもこうして不穏な空気が流れてしまう。

「多分、普通に教科担任に聞いた方がいいと思うよ」

「あはは...だね」

 晩年のぼっちが裏目に出たのか、沈黙が訪れる。

 はて、どうしようかと思っていたら教室では聞かないと思っていた声が聞こえてきた。

「優くん~バイトの時間だよ~美人な美人なお姉さんが迎えに来たよー」

 まだあまり見慣れない制服姿の千歌先輩がどこか呆れた表情を浮かべ教室に入ってきた。

 おそらく今日はシフトが入っているのに俺が中々教室から出てこない為、心配して迎えに来てくれたのだろう。

「けっ顔がいいアピールそんな露骨にやるなよ」

「唐突な辛辣!?何だか鋭さも日に日に増してる気がしてお姉さん末恐ろしいよ...」

 正直、あの告白以来何かが根本的に変わってしまうのではないかと色々と覚悟していたがさして変わらなかった。

 というか俺がこんなんだから先輩も気を遣ってくれているのだろう。

 先輩は何やら俺と春風を一瞥し呟いた。

「......ふぅ~ん?仲良いんだ?そうなんだ...先輩兼お姉ちゃんとしては嬉しいな!」

 余裕のある口ぶりとは矛盾するようになぜか純白色の頬を膨らませ、俺のことを揺さぶってくる。

 ......ゴキブリ人間には理解できないが先輩たちの陽キャにしか理解できない事があるのだろう。

 母親の男の影(今日、千歌先輩に相談してみようかな)など現在進行形で様々な問題を抱えている俺だが、願わくばこの社会不適合者を謳歌できる日々の存続を願いバイト先付近まで三人で帰ったのだった。



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