告白

 目が覚めると見慣れない天井が目前に合った。

 新築だからか真っ白な壁にピンクがかっている装飾。

 以前、似たような状況で目を覚ました時と打って変わって今回は民家のような場所で目が覚めた。

「起きた...?大丈夫!?」

 千歌先輩が何やら切羽詰まったような不安気な表情を浮かべながら問いかけてくる。

 ここは医療機関と言う感じもしないし、察するに先輩の家なのだろう。

「...あれからどうなったんですか?」

「君が倒れたからあの場は私の信頼できる友達と里香に任せた感じかな?......でも、吉田くんだっけ?が自分の非を全面的に認めたらしいからその必要はないかもね~」

 勿論、自己保身だろうがそれ以外の要素が少しでもあったのなら嬉しい。

 まあ、戸塚菌兼ゴキブリ人間に対してそんなもの感じないのかもしれないが。

「......ばか」

 千歌先輩は頬を膨らませ、不満を訴えるかのように見つめてくる。

 瞳は何か思う所があるのか潤んでいた。

「......何で相談してくれなかったの...?私ってそんなに頼りないかな...?」

「悩んでるって今回の件に限っては今日起こって今日解決したので悩みようがないと言いますか...」

「...里香ちゃんから色々聞いた」

 ということは大体のことは知られているのだろう。

 小学校時代のことは正直黒歴史なので恥ずかしい。

 まあ、現在進行形ナウで黒歴史更新中だからあれなのだが...HAHA

「「......」」

 暫しの沈黙が訪れる。

 気まずさからお互いになんて口を利けばいかわからないと言った感じだ。

 俺はこの気まずい空気を打破するため、そして最も気になっていたことを知るために口を開いた。

「......先輩はなんで俺みたいなゴミを助けようと思ったんですか?」

 幾ら向こうに亡くなった父を侮辱されたからと言ってあんな反社会的な暴挙にでるヤツをゴミと言わずしてなんと呼べばいいのだろうか。

 それに普通のゴミはゴミ収集車に回収してもらえば、事態は解決だが俺みたいなゴキブリ人間兼戸塚菌型大型ゴミはそうもいかない。

「......嬉しかったの。私を私として認めてくれた人は君が初めてだったから」

「認めてくれた?」

 色々な人に認められているからこそ今の先輩の地位があるのではないだろうか。

「うん。好きな音楽とか食べ物のことで引かずに受け入れてくれたのは君が初めてだったんだよ?...それに」

「それに?」

「この前里香たちと会った時に助けてくれたじゃん?今までああいう場合って里香が選ばれてたんだよね......だからあの時はホントに嬉しかったの」

 お互いに実妹同士と言えど苗字が違うのだ。

 俺なんかには想像できないようなことが色々あるのだろう。

 千歌先輩は何かを決意したかのように深呼吸し出した。

「......好きなの。理由としてこれじゃ薄いかな...?」

 .......予想外過ぎるセリフに思わず頭が真っ白になる。

 まさか自分が誰かに...それも先輩のような綺麗な人に異性として好かれるとは夢にも思わなかったのでどうすればいいか分からなかった。

 それにぶっ壊れている俺に父や妹以外の人間を愛せるのかもわからない。

「.......そんな困ったような顔させちゃってごめんね。お姉さんいじわるしちゃった......ま、まずは親友からでどうかな?」

「...はい。でもいいんですか?」

 これじゃあ、俺が千歌先輩を都合よくキープしてる感じになる気がする。

「......ふぅ~ん?君は最初から付き合いたいんだ....?」

「いえ、俺みたいなゴキブリクソ野郎がこんなことするの流石に頭が高すぎませんかねHAHAHAHA]」

「相変わらずの自虐ネタ!?...まあ、いいや。なら今この瞬間から私たちは親友ね!決まりです!うん」

 かくして俺に人生初めての親友ができたのだった。



 あれから数時間後の帰り道。

 空を見上げると思わず目を見開いてしまう程には煌びやかで美麗である無数の星々が目に入ってきた。

 ここら辺は繁華街なのだから驚きだ。

「...都会でもこんな鮮明にみえるんだ」

お互い競い合うように光を放っており、光ることを諦めた戸塚菌兼ゴキブリ人間な俺とは大違いだった。

........俺もあんな光を放てるようになるのだろうか。

俺も恋とやらが分かるようになるのだろうか。

なんて思わず、ポエマーのように思いふけっていたらいつも先輩と行っている居酒屋から見慣れた顔が出てきた。

妹に負けず劣らず目鼻立ちがくっきりとして端正な顔立ちにスラリとしたスレンダーな体型。

.......間違いないあれは俺の母親だ。

声でも掛けようかとしたその刹那、母親は部下だろうか?20歳くらいの若い男の肩に抱き着いた。

男も何やら満更でもなさそうな顔し、母の頭を撫でている。

こうして一つの修羅場が幕を閉じ、新たな修羅場が始まったのだった。




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