かつてない程の修羅場と怒り

 7月17日の午前12時。

 今日は最愛の父の命日ということで、ゴキブリ人間兼戸塚菌の俺は今日は午前中だけお参りに行き午後から学校に登校することになっていた。

 ちなみに今はもう全てを終わらせ、学校の前まで来ている。

 まるで大地を焼き払おうとするかのような猛暑に呆れながら、俺は学校の校門を通過した。

 校内に入るなり、何かがおかしい気がした。

 ......何だか、男女や学年関係なく生徒たちから凝視されるのだ。

 勿論、ゴキブリ人間兼戸塚菌な為、汚らしいという理由でこのような目に合う可能性も捨てきれないが今までこんな事はなかったので俺はただただ困惑するしかなかった。

 いや、でも......でも!

 承認欲求が満たさせりゅううううううううぅぅぅぅ!

 ぶっ壊れている俺には取ってはこんなのスパイスでしか何のだ。

 俺は気にせず二階にある自分のクラスの教室のドアを開けた。

 老朽化しているのかキィーキィーと不快な音がする。

 まるでその場にいるだけでみんなが不幸になる俺のようだったHAHAHA

「なんであんな噂流したの!?」

 教室に入るなり、何やら女子の怒号が聞こえてくる。

 その声の主は誰かとちらりと見るとなんとその正体は俺の幼馴染の春風 里香だった。。。

 そして怒りの矛先はこの前俺にキレてきた完璧超人の吉田何とかくん。

 うぁ~痴情のもつれってやつかな?

 怖いな~怖いな~

「マジで俺じゃないって。大体なんで俺が戸塚の小学校時代のこと知ってんだよ?」

 なぜ、こいつら陽キャの話で俺の名が挙がるのだろうか。

 なんて思っていると吉田が下劣な笑みを浮かべながら近づいてきた。

「...おお!来てたのか。なあ、お前小学校時代に暴力事件起こして同級生を病院送りにしたんだろ」

「ああ、まあ返り討ちにあって俺も病院送りになったんだけどねHAHAHA」

 俺のこの発言でクラスにざわめきが起こる。

「やっぱ、あの噂はホントだったんだ」

「うわ~ああいう無気力系?っていうのが犯罪者になるうんだな~」

「うっわ、しかもそれを笑って言うってきしょ」

 何やらボロクソに言われているが事実なのだから致し方ない。ウケるHAHAHA

 あと文脈から察するに何やら俺の小学校時代のよくない噂が広まっているのだろう。

「で、でもあれは元々いじめられてたのとお父さんを馬鹿にされたからで!」

 何やら必死に春風が弁解してくれているが、おそらく千歌先輩が俺に飯を奢ってくれるのと同じ施しというやつだろう。

「でも、噂ではパイプ椅子使ったらしいよ?それはよくないんじゃ...」

 なんて吉田が棒読みで呟いた。

 こいつの白々しい演技で気が付いたが、吉田が広めたのだろう。

ほぼ関わりのない俺の目から見てもそれは明白だった。

「なあ、お前だって戸塚に脅されて庇ってるんだろ?...いじめられるの辛かったよな?」

 吉田が春風の手をそれはそれは優しく握りしめる。

 ひゅ~ひゅー青春じゃん!

 現在進行形でより社会的に死んだ俺とは大違いである。

「違うよ!」

 春風が手を振り払い、吉田から一歩離れた。

 あらら、吉田のような王子様系はタイプはじゃなかったのだろうか。

「なあ、戸塚。お前は暴力沙汰も起こしたし結果的に同級生を病院送りにしたよな?」

 ......否定しなきゃしなきゃいけないのに。。。

「HAHAHAHAまごうことなき事実だから否定のしようがなくて草」

 俺は純粋無垢な戸塚菌。

 嘘だけはつきたくないのである。

「...噂によると原因は戸塚の父親が死んだことだっけ」

 吉田は卑劣で卑しい薄ら笑いをしながら俺を見つめてくる。

 ......なんでここで父の話になるのだろうか。

 諸悪の根源は俺で、あの人は被害者だ。

 いつも愚かで憎しみの種をばら撒いてきたのは俺だし、それを枯らしてくれたのはあの人ただ一人だった。

 そんな人がなぜ今この俺を貶めるだけの出来レースの話題にされなければいけないのか。

「........なんで、ここで父さんが出てくるんだよ」

「はっ?だって一番の原因だろ?」

「ちょっと...!」

 春風が吉田を強く睨みつけ、怒鳴ったがそれを吉田は無視し続けた。

「それにこんな奴に育つって父親も絶対に頭おかしいだろ」

「それは確かに!」

「ここまで奇行ばっかしてるとそうとしか思えないよね~」

 なぜ、何も知らないこいつらにここまで言われないといけないのだろうか。

 なぜ、一人では何もできない劣ったこいつらに父が侮辱されないといけないのか。

「こんなクソ陰キャに育てたなら死んで当然かもな」

「........」

 .......空っぽな俺の器に一つの感情が芽生える。

 許さない。許さない。

 死んでも許すな。

 視界が狭くなっていくのがわかる。

 こんなの久しぶりだった。

 きっとこれを受け入れ、怒りの渦に呑み込まれてしまったらより壊れてしまうだろう。

 でも、今はこいつらを如何に物理的、または社会的に圧倒的死なせるかということしか考えられなかった。

 なぜ、父が罵られなければいけないのか。

 いつだって悪いのは俺だなのだ。

 あの人はこんな俺に色々なものを与えてくれる真人間である。

 躊躇うな。

 憎悪を理由に。

 あの一件以来、最早すべてを失った俺に取ってもうそれしかない。

 次、目が覚めたら、ただよりガラクタのクズに成り下がっているだけだ。

 憎悪に呑み込まれていくのがわかる。

自分の唯一の誇りと思い出を守るために。

 あれこれ考えるな。

 地に足をつけ。

 怒りで握りこぶしを。

 後は進め。

「...」

俺は吉田の襟を強引に引っ張り、教室の壁に吉田を叩きつけたのだった。



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