クラス内での一幕と負の香り

 あの一件から一週間後の放課後。

 今日はオフなので、さっさと帰ろうとすると普段よく春風と一緒にいる男女四人組に声を掛けられた。

 正直、なぜ縁もゆかりもない彼らから呼び止められたのかさっぱりである。

 だが時間は腐るほどあるし、何やら話があるとのことで、俺たちは空き教室へと向かった。

「...なあ、空気読めよ」

 空き教室に着くなり、容姿端麗かつ文武両道で女子から絶大な人気を誇る吉田が口を開いた。

 ちなみに俺も戸塚菌兼ゴキブリ人間なので小学校の時はよく女子から「キャー!!」なんて歓喜の声を頂けたものである。

 .......毎度のことだが、本当にそろそろWHO何とかしろよ。。。

「それ、もっと空気読みなよ!」

「...ってか高校生にもなってこんなこと言われるって...普通に引くわ」

「おお...?なんかご立腹ですな。。ええと......空気は、チッ素、酸素、二酸化炭素、アルゴンとかでしょ?」

 こう見えても俺は理系なのだ。

 インテリゴキブリを舐めないでほしいものである。

「そういうの良いから。お前、自分が寒いってことに気づいてないの?」

「見ての通り氷点下で冷え冷えだから孤立してると思うんだけど~?そんなことも分からないなんて結構可愛いんだねHAHAHAHA」

 これが、モテ男になる為の秘訣なのかもしれない。

 圧倒的顔面偏差値にドジっ子キャラ。

 なるほど!メモメモである。

「で?ええとつまりどういうこと?」

 でしゃばり過ぎ?とか抽象的過ぎてよくわからない。

 .......ポエマーかよ(誉め言葉)

「だから春風に近づくなってことだよ?お前、陰キャのくせに察せもしないってやばいぞ?」

「吉田くんは里香ちゃんの事が好きなの!わかる?だから、距離をおけって話!」

 .......なるほど。。。

 リア充らしい動機である。

 いやあ。青春だなあ。

 ゴキブリ人間な俺とは大違いだ。

「なんか、勘違いしてるみたいだけあいつと俺は何の関係もないぞ。むしろ、俺が距離おかれてたくらいだし」

 逆にこんなゴキブリ人間兼戸塚菌と関わりたいのなんて今の所、変なヤツこと千歌先輩ぐらいである。

「...どうだかな。お前、里香のこと脅してるんじゃないのか?」

「確かに俺みたいな狂人キャラってヒロインにそういうことしがちだよね!ウケるHAHAHAHAHA」

「全く笑いごとじゃないと思うんだけど?ねえ、吉田くん」

「ってかこいつマジできしょくない?」

 HAHAHAと声高らかに笑ってみたものの、生憎俺に大切な友達の妹を虐める趣味なんてない。

 そう!

 健全、善良の申し子。。。

 それが戸塚菌である。

 むしろ、この戸塚菌だって俺の涙で生まれたのだ......HAHAウケる

「お前、あんま調子乗んなよ?」

「調子に乗るって.......そもそも俺、音楽音痴だから乗ったことすらねーよ」

千歌先輩みたいな美声は奏でられないのだ。

.......今度、ボイトレしてもらおうかな。。。

「だから、そういうのいいから」

「さっきから戸塚しか笑ってないって気づかないの?」

「シンプルにおもんな」

「お前、もうでしゃばんなよ?じゃ、お前と話したくないから俺たちはもう行くわ」

ということで、罵詈雑言を浴びせ気が済んだのかあいつらは去って行った。

その間にも「マジでキモいよね」とか「ってか口臭くなかった」だの「ああいう、オタク独特のノリ?マジできっっっいよねぇ~」などとボロクソに言われていた...

こんなの.......こんなの。。。

......な、懐かしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!

久々の感覚にちょーーーーエキサイティングである!!!!!!

あの日以来、多少の皮肉や嫌味を言われることは合ってもここまで言われることはなかった。

まあ、それほどまでに春風に恋をし盲目になってしまっているのだろう。

でも、不思議とあのような言動に嫌悪感や怒りは感じなかった。

やはり自分は狂ってしまったのだと改めて実感する。

......ここにいつまでもいる訳にはいかないので、俺もあいつらの続いて空き教室を後にしたのだった。




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