先輩の妹と失意
声の主は案の定、俺の幼馴染こと春風 里香だった。
それと派手なメイクをしている春風の友達らしき女が二人。
その女二人は俺と先輩を見比べ、何やら薄ら笑いを浮かべている。
絶対に馬鹿にされている。。。
こんなの...こんなの...
......自己承認欲求が満たされるうううううぅぅぅ!
ゴキブリ人間兼戸塚菌である俺は日頃から人に見ぬ気もされない。
よって俺のような人間を陥れようとするのにこのような手法はかえって逆効果なのである。
今後からは肝に銘じてほしい。
とはいえ、、、ご馳走様でした。
「.......」
先輩は状況が呑み込めないのかどういうことか目線で問いかけてくる。
正直、俺もサッパリ分からないのだが、取り敢えず先輩が気になっているであろう事を答えることにした。
「春風は幼馴染なんです」
「そ、そうなんだ」
「あっ!今、お前みたいな社会不適合者み幼馴染なんて崇高な存在が居たんだって思
いました?まあ、しょうがないかHAHAHAHA」
「思ってないよ!?毎度のことだけどホントに君はブレないよね!?流石のお姉さんもちょっと戦慄しちゃうよ...!」
まあ、幼馴染と言っても向こうは俺のことを布団に潜むダニ程度にしか思っていないと思うが。
いやっ?でも、ゴキブリ人間兼戸塚菌に比べたら好印象なんじゃね?
まあ、目くそ鼻くそなのだが。。。
「.......里香は私の妹なんだよね」
そういう千歌先輩の表情は何か思う所があるのか複雑そうだ。
「そうなんですね」
「うん、親が離婚してるから苗字とかは違うんだけどね」
『夏川 千歌』と『春風 里香』。
性格、顔立ち、そして苗字。
両者はそれぞれ近親者と思えない程に違い、俺は違和感すらなく気付かなかった。
まあ、俺こと戸塚菌が無能過ぎるだけかもしれないが。。。
「ふ、二人はどういう繋がり...?」
あれ以降、俺たちに情報交換をする時間をくれていたのかずっと口を閉じていた春風が口を開いた。
「バイト先の先輩、後輩同士なんだよね。それで、気も合うからこうしてたまに外でも遊んでる感じかな?」
「...そうなんだ」
「うん」
「「「「「......」」」」」
それから暫しの沈黙が訪れた。
......気まずい。
気まず過ぎる!
この気まずさは『場の空気を凍らせる程度の能力』を保有してる俺ですら再現できないぞ......
「で、でもよかった!戸塚くん結構学校で一人でいることが多かったから心配してたんだよ」
「俺なんて大体一人だから心配無用だぞ」
「...それでもだよ」
俺としてはなぜ世の人間様たちはわざわざ頑張ってストレス材料を増やそうとしているのか分からない。
人付き合いとは貨幣という概念すら生まれる前の古より語り継がれてきた人生における最大の負債である。
「.......も、もしよかったら晩御飯みんなで食べに行かない?」
そんな春風の提案に対して千歌先輩がどうするのかとこちらを見つめてきた。
先輩は何かを恐れているような怯えているようなそんな顔をしている。
以前から薄々勘づいてはいたが俺にも色々あるように先輩にも色々あるのだろう。
まあ、兎にも角にも当然、面倒くさいし俺のような戸塚菌がいたらバイトテロならぬお客テロが起こりかねないのでお断りである。
俺は首を横に振った。
「私たちはお家で食べたいなあ、なんて...ね?」
「はい、そうですね」
「え~いいじゃん?」
春風の女の一人が野次を入れてくる。
「...お姉ちゃん、今日ってお父さん当直の日だよね」
「う、うん。そうだけど...」
「一人で食べるよりみんなで食べる方がきっとおいしいよ?」
「ふぅ~里香いいこというじゃん!」
先輩はただ困ったような表情を浮かべ、その場に立ち尽くしている。
「で、でももう決めちゃったんだよね?」
「.......久しぶりの家族団欒したいななんてダメかな?」
「お姉さん、今日ぐらいいいんじゃないですか?」
「...で、でも」
「お姉ちゃんお願い...」
「お姉ちゃんならそれぐらいしないとじゃないですか?」
「...う、うん」
戸塚菌の分際な為、全く的を得ていない可能性が大であるが、果たしてこうして無理やり連れだして一家団欒とやらは成立するのだろうか。
それに一人で冷や飯を食うのはそれはそれで趣があって、ゴキブリ人間心を擽られる。
「えぇぇぇんん!ぐぁぁぁん!」
超演技派である戸塚菌こと俺は状況を打破するために、ポッケに忍ばせていた目薬を使い泣き真似をすることにした。
「ぐっすん!ぐっすんこ!酷いです!先輩!」
「.......あんた何やってるの?その目薬もバレバレだし」
「だね~なんかしらけるわ」
俺は取り巻き二人をそれはそれは優美且つ華麗にスルーし続けた。
「これから先輩の奢りでジョジョ園行くんじゃないですか!?二人分の予約までしたのに.......なのに家で食べたいって......ぐわぁぁぁうん!わおおぉぉぉん!」
「......お姉ちゃんそうだったの?」
先輩も俺の意図を察したのかこちらに向け少し微笑んできてから呟いた。
「実はね予約しちゃててもう変えられないんだよね...だから申し訳なくて嘘ついちゃった。ごめんね」
「.......そっか。そうだったんだね。邪魔しちゃってごめんね。私たち行くね?」
春風たちはそう言うと駅の中へと消えって行った。
かくして修羅場は去って行ったのだった。
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