第26話 砲塔の防御
リシュリューは二基の主砲塔に全ての主砲を装備している。
もし、一基が使用不能になればリシュリューの戦闘力は半減する。
設計したフランス海軍もこの問題を十分承知しており、できる限りの対策をした。
その一つが、砲塔内の隔壁だった。
主砲塔の内部に二つの装甲隔壁を設け、それぞれ主砲を二門ずつ配備する。
こうすることで、主砲塔が撃ち抜かれて何処かの部屋が破壊されても残りの部屋に置かれた主砲で戦闘を継続できるという目論見だった。
フランス海軍設計部門はその能力をダカール沖で証明した。
彼等が設けた隔壁は見事役目を果たし、第二砲塔右室の要員全滅、右群二門の射撃不能と引き換えに中央と左の二群、合計四門の戦闘力を維持した。
被弾直後に装填を終えた、四門が第一砲塔と共に砲撃を行い、大和に十発の砲弾を返した。
その内、三発が命中し、大和を揺らした。
「うおっ」
思わぬ衝撃に松田は前の手すりに掴まる。
宇垣の事が気になり振り向くが、長官席に座ったまま身じろぎもせず、衝撃など無かったかのように振る舞っている。
常に表情を変えないため黄金仮面と陰口をたたかれる宇垣だが、この時は泰然自若さが頼もしく見えた。
だからこそ、素直に命令に全員従った。
「主砲反撃せよ」
宇垣の号令で再び大和の主砲が火を噴きリシュリューに向かって砲弾の雨を降らす。
リシュリューに降り注ぐ一五発の砲弾の内三発が命中した。
幸か不幸か砲塔を損壊するような被害は起こらず、船体中央部に被弾しただけだ。
しかし、これ以上の交戦は困難だと感じたリシュリュー艦長は反転を命令。
ダカールに向かって舵を切った。
「逃がすな! 逃げ込まれる前に仕留めろ!」
宇垣の指示は妥当だった。
ダカールは陸上砲台に守られている。
二八サンチ砲が殆どだが、沈まない砲台に水上艦が立ち向かうのは無謀だ。
砲台の射程に逃げ込まれる前に仕留めたいと思うのは海軍軍人なら誰でも思う。
だが、その点をダカール側は突いてきた。
ダカール側が放った魔の手に大和が気が付いたのはその直後だった。
「右舷より魚雷!」
魚雷を放ったのはダカールに配備されていた潜水艦ベヴェジールだった。
連合国側はリシュリューを最大の脅威として、優先的に撃破しようとするだろう。
そして、ダカールに逃げ込もうとすれば追ってくるだろうと。
ダカールのフランス軍はリシュリューの撤退路上にダカールに配備されていた潜水艦三隻を予め配置し待ち伏せさせていた。
計画は念入りに練られベヴェシール艦長ランスロット大尉は、リシュリュー艦長マルザン大佐は何度も計画を検討し、準備をしていた。
逃げ帰るリシュリューに釣られた大和は、ランスロット大尉率いるベヴェシールの潜伏する海域にまんまと誘導され、魚雷攻撃を受けた。
「回避! 面舵一杯!」
松田は逃げ去ろうとした。
だが宇垣の一言で遮られてしまった。
「待て!」
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