第20話 メデューサ号の遭難
あまりにも厚かましいドゴールの言葉に聞いた全員が唖然とした。
大日本帝国の所属であり、命令無く指揮下を離れる事は出来ないと宇垣断った。
その後も口論となったが、結局、宇垣達日本艦隊が自由フランス軍を支援するという内容で作戦は纏まった。
しかし不協和音が流れているのは事実であり、前途多難だった。
一応船団を組んでいるが、間接援護といって自由フランス軍が乗った輸送船から大和を離している。
イギリス海軍も主力は離れており、駆逐艦が援護している。
その駆逐艦達は悲惨だった。
常にドゴールから要請という名の指示がくだりまるで自分の海軍のように振る舞うのだ。
こんなことで作戦が成功するのか松田は心配だった。
宇垣も長官席で黙ったママだ。
黄金仮面と呼ばれるほど表情に乏しい宇垣だが、この時は流石にシワが深く刻み込まれ不機嫌である事が明瞭に分かった。
何とか機嫌を取りたいが、松田は思い浮かばなかった。
「艦長、アルガン岩礁の西を通過します」
「よし、針路そのまま。座礁させるな」
モーリタニア沖のアルガン岩礁は沿岸から離れているが遠浅で危険な岩礁が多いことで知られている。
できる限り沿岸から離れるように指示を出していた。
松田は何故か悪寒が続いた。
何かと考えていると記憶の底から思い出した。
「そうかメデューサ号が沈没した場所か」
ナポレオンがセントヘレナへ追放された後、フランスで王政復古が行われ、ナポレオン戦争
中イギリスに占領されたセネガルがフランスへ返還されることになった。
現地政府の統治の為に役人達が運ばれることとなり選ばれたのがメデューサ号だった。
しかし、任命されたのが王党派という理由だけで任命された二十年以上も航海経験のない士官だった。
指示を誤りアルガン岩礁で座礁。
乗組員達はボートでとっとと逃げ去り、残された乗客達はイカダを作って脱出したが次々と亡くなり、僅かな人々が救助されただけだった。
その筏の運命を画家テオドール・ジェリコーが描き「メデューサ号の筏」として発表。
悲劇的な題材と、陰惨な画風が話題を集め、世界的な絵画となった。
そして歴史的海難事故として船乗り達の間で語り継がれている。
勿論、松田もその一人だ。
それだけに自分たちの未来を暗示しているようで、良い気分ではなかった。
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