第21話 ダカールの拒絶
「ダカールは、自由フランスに付くのを拒否した」
自由フランスから送られてきた使者の報告に、落胆と言うより、やっぱりという感情が大和艦橋に広がった。
世界各地にあるフランスの植民地もヴィシー政権寄りだ。
元国防次官程度の地位でしかないドゴールに参加するフランス植民地、大臣クラスの地位にある植民地総督はいなかった。
イギリスの首相チャーチルの後ろ盾があるとはいえ、亡命政権、ドイツ優勢の今は反逆者として処断される可能性が高い。
そんな人間の元へ行くなど普通は考えない。
「日本艦隊はダカール艦隊を撃破せよとのドゴール将軍の命令です」
使者は宇垣達に命じて来た。
傲慢で人を見下す態度が腹立たしい。
しかも日本人、アジア人を見下すような態度が見え見えだ。
人に物をお願いするのではなく、アジア人はフランス人に従属するべき、ペットか家畜に接するような態度に帝国海軍の将兵は使者と自由フランスへの心証を悪化させる。
日仏の協力に心を砕く松田でさえ腹に据えかね黙り込んだ。
顔色は変えずとも内心激昂した宇垣は断固拒絶しようとした。
だが、日仏の破綻は見張りの報告により、防がれた。
「ダカールより出港する艦艇あり!」
「出てきたか」
攻撃してきたら迎撃するのが軍人の本能だ。
敵艦に対して医師でも報いようと言うのだ。
イギリス海軍を相手にしようとしているのかもしれないが、同盟国として出撃している日本艦隊も攻撃してくるだろう。
すぐさま宇垣は反応して命じた。
「全艦戦闘配置!」
タカタカタッタッターッ
タカタカタッタッターッ
「配置に就け!」
ラッパの音共に下士官の号令が艦内に響き、水兵達が駆け足で配置に向かう。
「総員戦闘配置!」
「急げ!」
ラッパの音の後下士官達の怒鳴り声が響き渡る。
「主砲指揮所配置良し!」
「第一砲塔配置に就きました!」
「第二砲塔配置に就きました!」
「副砲配置に就きました!」
「機関室、総員配置に就きました! 二十分後に最大戦速即時待機完成!」
「応急修理班配置に就きました!」
「対空機銃群配置に就きました!」
「全隔壁閉鎖完了!」
「全艦戦闘配置完了!」
発令から五分。
松田が航海中も訓練を欠かさなかった成果だ。
「艦影はどうだ。分かるか」
準備が整った事に安堵した松田は見張りに尋ねた。
「射撃指揮所が重ねられています。リシュリュー級です。間違いありません」
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