第43話 舞台付のお店

 既に6人程発券窓口のような場所に並んでいる。

 その後ろに並んで、そしてリアさんは後ろの私達の方を振り向く。


小銀貨4枚4,000円のC席でいいよね」


「うん、最初だしそれがいいと思う。あと席は今回は中央側で」


「そうですね、今日はそれで」


 わからないからお任せ、という事で私は頷く。


「それじゃ自分の分の小銀貨を出しておいて」


「わかった」


 小銀貨は買物で使いやすい。

 だからアイテムボックスに多めに入れている。

 4枚、取り出してリアさんに渡そうとする。


「あ、自分で持っていて。ここは1人1人払ってチケットを受け取る方式だから」


 そう言われてしまった。

 なるほど、まとめ買いは認めず、あくまで1人ずつチケットを買う必要があると。

 何と言うか厳密なシステムだなと思う。


 とりあえず今日の出し物……は調べない方が面白いかな。

 ならC席についてだけ調べてみよう。


『オスタリアはショーを見ながら食べる形式で、料理と席の場所によって値段が違う。

 食事付きはA席、B席、C席の3種類で、他にドリンクのみのD席がある。


 Aが小銀貨9枚9,000円、席は舞台正面中央の前1列にあるテーブル席。Bが小銀貨6枚6,000円でAに準ずる料理とテーブル席。Cが小銀貨4枚4,000円で簡素な料理、Bに準ずるテーブル席。


 ドリンクのみのD席は小銀貨22,000円。テーブルはなくシートにドリンクホルダーだけがついていて、位置は後方か左右端』


 なるほど、料金によって場所と料理が変わる訳か。

 これってショー等では一般的なのだろうか?


『ヒラリアのキャバレーでは一般的な方式のひとつ。ただし開催する店・劇場によって料金システムは異なる』


 その都度調べた方がいいという訳か。

 なかなか難しいなと思う。

 一人で来る事は無いだろうと思うけれど。


 前の方に並んでいる人はD席、つまりドリンクだけの席の人が多いようだ。

 そして席についても細かく注文している。

 舞台を前にして左側の椅子席の中央よりとか、一番左とか。


 そうやって席を指定する事にも意味があるのだろう。

 その辺りはあえて今、知識魔法で調べない。

 ショーを見ればきっとわかると思うから。

 それもきっと今日の楽しみ方のひとつ。


 列が進んでリアさんが注文する番になった。


「C席4人、横並びで中央列、出来るだけ前の席で御願いします。


「それではこの席で宜しいでしょうか?」


 受付の人はリアさんに何やら見せて確認をとっている様子。


「ええ、それで御願いします」


「それでは1人1枚ずつチケットをお渡しします。順番にお支払い下さい」


 リアさん、レアさん、私、カイアさんの順にお金を払ってチケットを受け取る。


 チケットの表には『座席:C-333 時間:5~7』と記載があった。

 裏には中の座席配置が簡単に描かれている。

 最初のCは席のランクで、後ろの3桁が場所を示すようだ

 百番台が左右の列を示して、十番台が前からの位置で。


 舞台を正面に見て左側から、百番台が0、1、2、3、4、5。

 席は舞台をぐるっと半円形に取り囲むように配置されているので、0や5は図では舞台のほぼ真横。

 333はど真ん中、前から3番目の列にある席という事になる。


 全員が受け取って、中へと向かう。


「今日はいい席が取れたかな。全体を見るのには最適だよね」


「ワルブルガはお勧めだけれどそこまでメジャーじゃないから。今日の一番人気はパラメケスだと思う。リンドゥームで時間同じでやっているから、きっとそっちに人が行っているんじゃない」


「パラメケスとワルブルガではジャンルが違うよね。今日やっているのだとむしろミーティアルあたりと被るんじゃないかなあ? ミーティアル、私は好きじゃないけれど。ルックスがいまいちだし。

 パラメケスはルックスいいし曲もノリがいいんだけれど、大会場主体で一体感が足りない点が今ひとつだよね」


『パラメケス ヒラリア南部で一番人気の男性7人組ユニット。歌とダンスをメインとしたショーを得意とする』

『ミーティアル 3人組の男性ユニット。ショートコントを主体としたショーが中心』

『リンドゥーム カーバルト地区の大型キャバレー』


 パラメケスとはジャニーズ系みたいなグループなのだろうか。

 ミーティアルは吉本系で。

 そう考えると何かヒラリアのこういったイベントも少し身近に考えられる。

 日本時代の私は芸能関係にあまり興味は無かったのだけれども。


「今日、舞台を見る上で注意する事は何かありますか?」


「うーん、自由に見て問題無いんじゃないかな。ショーの最中でなければ会話もOKだし」


「いえ、大事な事があります」


 カイアさんが真面目そうな顔と口調でそんな事を言う。


「何でしょうか?」


「本日の舞台は3幕です。ですが前座が終わるまでに夕食は飲み物以外、全部食べてしまう事をお勧めします」


「あ、確かにそう。幕間の休憩は短いし、舞台が始まったら見逃さないようにしないとならないから食事食べてる余裕がないし」


「そうでなくてもワルブルガの舞台、テンポ速いしね。

 でもドリンクはゆっくり飲んだ方がいいかなあ。まあ水のグラスは無くなっていたら入れてくれるから、それでもいいけれどね」


 なるほど。

 なかなか楽しそうだ。


「あと中へ行く前にトイレ行ってきた方がいいよ」


「確かにそうですね」

 

 割ときれいなトイレに寄った後、いよいよ扉から中へ。

 思ったほど広くない。

 学校なら2クラス合同で使える視聴覚室くらい。


 半円、というか3分の1円くらいの舞台をぐるっとテーブルや座席が取り囲んでいる。

 床は階段状で舞台から離れるほど高くなるタイプ。  

 テーブル席が一列4名か6名で、合計12テーブル。

 あとは椅子席で、定員的には椅子席が圧倒的に多い。

 

 私達より早く入っているお客さんは30人位。

 椅子席は左右端の0番台と500番台の最前列から順に埋まっているようだ。

 テーブル席の先客は200番台の前から2番目、400番台の前から2番目だけ。


「思ったより少ないかな、お客さん」


「確かにそうですね。あと今日はテーブル席だから落ち着いて見ていられます」


「端の最前列の席で客いじりに遭いそうなのも楽しいけれど」


 レアさん達の微妙にわからないやりとりを聞きながら、中央の前から3列目のテーブルへ。

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