第10章 イッツアショータイム
第42話 種類はキャバレー
今日は3の曜日。
いつものように公設市場の食品部で商品の補充をした後、事務棟で書類作成のお仕事。
お昼もいつものようにリアさん達&グラハムさんと一緒。
ただ違うのは職場へ戻る途中、リアさん達からお誘いがあった事だ。
「今日はお仕事が終わった後、ショーを見に行くつもりだけれど、一緒にどう?」
「割と人気のあるダンサーチームのショーだよ。食事付きで
「特に難しいものではなく、誰が見ても楽しめる内容だと思います。少し品が無いという人もいるとは思いますけれど」
品が無いという人もいる、というところが微妙に気になる。
しかし折角の機会だから試してみたい。
「行きます。何処でやる、何と言うショーですか?」
「秘密。最初に事前知識があると面白くないと思うから」
「そうそう、最初は何も知らないで見た方が面白いよね」
気になるし不安になる。
私は事前に下調べをして安心するというタイプだから。
でもカイアさんが特に何も言わないという事はきっと大丈夫なのだろう。
品が無いと言う人がいる程度で。
「わかりました。4時にここの入口待ち合わせでいいですか?」
「うん、それでお願い」
午後3時にお仕事を終了。
一度家に帰って、今日はショーを見てくるので遅くなるかもしれないと和樹さんに言っておく。
「わかった。皆にはそう言っておくよ」
ちひさんは新しい船をお試し中。
結愛はまだ学校だ。
「こっちも夕食は何処かで食べるかもしれないけれどさ。結愛が自分も行く、って言うかもしれないから」
「昨日食べたお店、気に入っていましたしね」
確かにリリレイム、美味しかった。
結愛の好きな甘いデザート系も豊富だったし。
お家からも近いし色々といい感じだ。
強いて言えば家から近すぎるのが欠点だろうか。
だからグラハムさんを連れて行くのには向かない。
和樹さんに目撃されるとちょっと困りそうだ。
着替えて3時48分に家を出て公設市場の事務棟へ。
少し早く着いてしまいそうだったので途中で少しペースを落としたりして調整。
4時の鐘が鳴り始めた時ちょうど事務棟出入口近くに到着。
リアさん達は鐘が鳴り終わって割とすぐ位で出てきた。
3人ともだ。
「お待たせ。それじゃ行きましょうか」
「そうそう、早く行った方がいい席を取れるしね」
そう言いながら私のお家がある方向に向かって歩き始める。
「なら私が先に行って取っておけば良かったでしょうか?」
「今日行く場所はそれが出来ないんです。予約も無しで、当日に行って自分の分を買う以外の方法が無いので」
「でもこの方が気楽かなあ。予約有りだときっちり予定組まないとならないしね」
なるほど、予約制の場所もあるという事か。
ところで今日行くのはどんな場所なのだろう。
私の場合、何かショーを見に行くとなると映画館とか劇場的な場所をイメージしてしまう。
ただそれでは食事というのとあわない。
そういう場所での飲食というとチュロスとかポップコーン、それにドリンク程度だろう。
もう行く途中だし、大丈夫だろう。
そう思ったので聞いてみる。
「今日はどの辺りの場所の、何というジャンルのお店に行くんですか?」
「今日行くのはカーバルト地区で、お店の種類はキャバレーです」
キャバレーというとおじさんがお酒を飲む場所というイメージがある。
リアさん達がショーを見に行くというイメージに合わない。
こういう時は知識魔法で確認だ。
『キャバレーとはダンス等のショーをする舞台が設置されている飲食店のこと』
なるほど、日本のキャバレーとは定義そのものが違う訳か。
なおカーバルト地区とは私がパンを買いに行く店や結愛が好きなパフェを出す店がある一帯の北側で、スニークダウン地区の西隣。
「こちら側へ行くのは初めてです」
「今日行く店あたりまではまだ安全かな。それ以上西側へ行くのはあまりお勧めじゃ無いよね」
「ただ西側の方が面白い出し物をやっている箱が多いんだよ。早めの時間に行ってさっと帰ってくれば大体大丈夫だし」
「それでも旧リベル川より西に行くのはあまりおすすめはしません。昼間でも面倒な戸籍乞食が集団で寄ってきたりしますから。
どうしても行く場合は複数人で一緒に行動するべきでしょう」
戸籍乞食とは以前私が出会ったような、勤労の義務を逃れる為にナンパっぽい事をしてくる輩の事だ。
なるほど、なら私は極力近づかないようにしておこう。
目安は旧リベル川と。
お家の前へと続く道を越え、更に西へ。
細い運河が何本もある辺りを越えて、そして北へ曲がる。
いわゆる歓楽街だな、そう感じる通りに出た。
飲み屋とか食堂、あと小劇場っぽい看板が並んでいる。
いつもの街とくらべるとごちゃごちゃしていて猥雑な感じだ。
行き交う人も多い。
それでも風俗系っぽいのは無いから多分大丈夫だろう。
それにリアさん達と一緒だし。
2ブロックほど歩いたところでリアさんが道ではない方向へ曲がった。
どうやらここが目的地のようだ。
『オスタリア ショー&ブラッスリー 本日の出演 ワルブルガ』
看板にはそれだけしか書いていない。
周りの店の看板と比べると随分と控えめだ。
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