第15話 冒険者登録
ギルドに入ると冒険者より漁師風の容姿をした人が多く見受けられる。
しかし、昼間っから隣接された酒場で盛り上がるのはタンサの街のギルドでも同じようだ。
「この魚は魔物か?」
「ん〜、違ぇな!魚として買い取ることは出来るがな」
「馬鹿言え、普通に店舗に回した方が割がいいし、街が潤う」
「ははっ、違いないな。いい加減自分で魔物を判別出来るようになれよ〜」
冒険者というより、漁師の人の話が聞こえてきたが、なるほどと思った。
水生の魔物もいるだろうし、そういう場合はギルドで売った方が高く付くのか。
「あそこが登録カウンターっぽいですね!」
エレナが指さす方を見ると少し列が出来た受付があった。
そこに並び、順番を待っていると次第に列は短くなっていき、俺たちの番になった。
「こんにちは!登録で…」
「あれ、さっきの女の人」
受付けをしていたのはさっきぷりぷりと怒っていたあの女の人だった。
ギルドの職員さんだったのか。
「さっきのカップルですか。登録ですね」
「か、カップルじゃないですよ…」
すごい表情豊かな人だなぁ。
さっきは怒ってたのに今は疲れきった顔をしてる。
「こちら、ギルドカードと呼ばれるものです。無くしたら、再発行にお金がかかってしまうので気をつけてください」
そう言って渡されたのは手のひらに収まるくらいのカードだった。
だけど、何も書かれていない。
「魔力を込めて自分自身の情報を書くと完成です。普段から魔法などは使いますか?」
「魔力…?魔法…?」
「分からないですか。では説明を。魔力とは個人個人が持っている特別な力のことで、それは魔法を扱うのに必要な力です。魔法を使える方であれば魔力増幅道具を使う必要はありません。魔力を操れる訳ですからね」
魔力、スキルとはまた別の力なのか。
俺は一回もその魔法とやらを扱ったことはないが、エレナはおそらくあると思う。
「私は扱えますよ!回復魔法です!」
おぉ、やはり回復は魔力を使った力の事だったようだ。
得意げにしているエレナは魔力を込めるとカードに自分の情報を記していく。
「では、魔法を知らないあなたはこちらの魔力増幅道具を利用してください」
奥から持ってきたのは大きいまん丸の透明な道具だった。
これが魔力増幅道具?
「利き手では無いほうで触りながら書いてみてください」
言われるがままに従うが、全く魔法を扱えてる感じはしない。
「…?」
何故か文字が書けないので試行錯誤するが、全く書けない。
なんだこれ、壊れてるのか?
「あの、インク切れっぽいんだけど」
「魔法で文字を書くのでインク切れはありえませんよ」
えぇ…?そうは言われてもいくら書いても白いカードは白いままだ。
「まさか魔力がゼロ…。初めて見たわ…」
「え?魔力ゼロ?どういうことだ?」
「魔力ゼロ…。そんなことが有り得るんですか?」
自然とふたりの声は小さくなっていき、ヒソヒソと話し始めた。
魔力がゼロなのは珍しいのか?
しかし、冒険者登録ができないのは困ったな。
「ギルドマスターに相談してみましょう。二階へ来てください」
そう言って女の人はササッと駆け足で二階へ上がって行ってしまった。
俺達もそれに続いて二階に上がるのだった。
―――
「やぁ、君が魔力ゼロの男の子かな?」
二階にあがり、部屋で待っていると眼鏡をかけた小柄の女性が入ってきた。
その後ろには服に筋肉が浮かび上がるほどの筋骨隆々の男が書類を抱えている。
「私はここスカイルのギルドマスターであるライアルだ。よろしく」
「俺はレオです。よろしくお願いします」
「レオか、いい名だ。そっちの…」
「エレナです!」
「エレナ!よろしくな。そんでもってこの大男がアンカン。副ギルドマスターだな」
アンカンさんはこくんと頷いて、二人とも席に着いた。
「あ、話はだいたい分かったから、君はとりあえず退席してていいよ」
「分かりました」
「さて、魔力がゼロに関してだが…」
博学そうなライアルさんはそのイメージ通り、大量の知識の中から言葉を選びつつ、俺がどういう状況なのかを説明してくれた。
魔力ゼロとは本来有り得ないことらしい。
人は誰しも魔力を持っていて、その量は水滴一滴分の人もいれば、プールに溢れるほどの人もいる。
だが、その水が完璧に枯れ果ててゼロの人はこれまで存在しないらしい。
「まぁ、そんなところだな。つまり、君はこの世界にたった一人だけしか居ない魔力がゼロの稀有な人間という訳だ。私がこの世の全てを知っている訳じゃないから、一概にはそう言えないがな」
「なるほど…。ところでそれはわかりましたが、冒険者登録は出来るんですか?」
「うーん、厳しいね。今現在、ギルドは冒険者登録に魔力を使った直筆の情報を書いて登録するという方法を用いているからそれ以外には無い」
きっぱりとそう言われてしまって、部屋の空気は暗くなっている。
気を使ってくれたのかエレナが立ち上がって話し始めた。
「ど、どうにかならないんですか…?」
「なる」
「なるんかい!」
え?何この人。
なるならなんであんな空気にしたの?
「まぁ、言わなかったのはあまり良くない方法を使うからだね」
「良くない方法?」
「あぁ。私のスキルは“網目状の
きっぱりとそう言われてしまった。
まぁ、そりゃあそうだ…、と諦めようとした時エレナが再び立ち上がった。
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