第10話 労働
「ありがとう…!助かったよ!」
「どういたしまして」
俺たちは再び席に案内されて、今度は無料でいいからと料理を提供されていた。
助けてくれたのが相当嬉しかったのか、お金は要らないとさっきの倍以上のボリュームの料理を持ってくる。
「私もお昼はまだだったからね。ついでに君たちと食べさせてよ」
「いいですね!三人でお食事です!」
俺はお言葉に甘えて、よく分からない赤色のうねうねした生物や貝殻の中身のよく分からないもの等の見たことない食べ物を手に取って食べていく。
やはり、中身を見ないと本当の良さは分からないからな。
「ところで、なんで助けてくれたんだ?」
「お礼がしたかったって言っただろ?」
「なにか裏があるなら言ってくれ。私に出来ることなら何でもやるよ」
あちゃあ、何か見返りを求めて助けたと完全に思い込まれてるようだな。
本当に気まぐれだったんだが…。
「いや、本当になにも…」
「じゃあ、私たちを住み込みで働かせてくれませんか!」
「えぇ!?」
「いいけど」
「いいのかよ!」
話が見えないので、エレナを呼んでコソコソ話を始める。
「いちいち宿屋に泊まっていてはお金が減るばかりです。ならば働きつつ、お客さんから情報を得て、お金も貰える。一石二鳥どころか一石三鳥です!」
「あ、頭いいな…。流石貴族様だ…」
「話はついたかい?」
「おう!よろしくな…、えーと」
「カンナだ。よろしく、レオとエレナ!」
こうして俺たちは店で働くことになったのだった。
―――
「最近、海に巨大生物が出たらしい」
「そりゃあマジかい。なら漁師達は仕事が無くなるねぇ。この街にとっちゃそれだけで痛手だ」
カンナの店、スターサファイアで仕事を始めて一週間くらい経った。
少しづつだが客も増えてきて、お昼時になれば店は満員とは行かないがだいぶ席が埋まった状態になる。
お客さんによれば、この店は前から美味いと評判が良かったらしいのだが、この店を作った人…、つまりカンナの父親が死んでしまってから料理の提供速度が遅くなり、人が段々と減って行ったのだそう。
この店に人が来ないのは、漁師は忙しいようで待っている時間はなく、観光に来た人達はこの内装では中に入ろうとしないということだったようだ。
だが、今は二人追加されて料理の提供速度が上がった為に漁師の客が増えてきたのだった。
「へぇ、魔物ですか?」
「おお、エレナちゃん。そうなんだよ…、今よりすぐりの冒険者達を招集しているようだが、なかなか集まらないようでね…」
「お仕事が出来なくなるんですね…。大変そうですね」
「あぁ、こんなことは滅多にないんだがなぁ」
エレナは見た目もあってか、この店では人気になっていた。
本人も満更ではないようで、楽しそうに仕事をしている。
追われている身だということを忘れているんではないだろうかと、時々心配になる。
「そんな目をしなくても、奪わないから大丈夫だ、レオ!」
「そうそう!熱々の二人の仲を引き裂くような俺たちじゃないぜ?」
「うるせーよ。付き合ってないって言ってんだろ」
なんだかんだ、ここの漁師たちは良い奴らで俺も楽しく仕事が出来てるんだがな。
「今日で一週間か。仕事は慣れてきたかい?」
「まぁな!意外と楽しいもんだ」
「私はされる側だったので、なんだか新鮮で…」
「される側…?」
「あ、あぁ!なんでもない!」
今日消化出来なかった魚を料理して貰っているが、相変わらずこの刺身もいう料理は美味い。
一年間これだけで生活しても生きていけそうな程だ。
「ところで、二人は何歳なんだ?仕事をしたことないということは若いのだろうけど」
「おう!俺は三百三十七歳だ!」とも言えないので、無間地獄に落とされる前の十五歳と答えておく。
エレナは十六歳と答えていた。
「とゆうかレオさん十五歳なんですね!?」
「あぁ、俺もエレナが年上ということにびっくりした」
「私は二人が年齢を把握してないのにびっくりした。二人は仲良さそうだけど、どういう馴れ初めなんだ?」
カンナはこの一週間一緒に過ごして、信用出来る人だと思うから言ってもいいのだけど、あまり色んな人にベラベラというものでもない。
どこで足がつくか分からないしな…。
さて、そこで役に立つのが俺とエレナで考えた「嘘はついてないが、本当のことも言っていない設定」が役に立つ。
「私はいい家の出身で、家の堅苦しい雰囲気に嫌気がさして家出したのです。そして、私が途方に暮れている中でレオさんと出会い、乙女が一人で外を歩くのは危ないからと護衛を任せているのです!」
「そんな風には見えないだろうが、護衛だ」
俺はピースを掲げて、エレナの説明に補足する。
これで完璧な設定のはずだ。
「確かに、あの時むちゃくちゃ強かったもん。護衛としてはバッチリな人材だろうね」
まぁ、確かに自分が一般人よりかは強いのは理解出来てるから護衛としては適任か。
「さて、明日は定休日にするつもりだし、二人でこの街を探索してきたらいいよ」
「おぉ!それはいいな!どこ行く!?」
「えーとですね…、私パンフレットお客さんに貰ったんです!それを見ましょう!」
その日はどこに行くかを語らい合い、眠りについたのだった。
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