第7話 俺と同じようには…
「おはようございます。昨日はお楽しみでしたね」
「え?あぁ、エレナか…」
陽光が眩しく差し込み、あかりが俺の顔に直撃して目が覚める。
やけに近くからエレナの声が聞こえて、俺は眠い目を擦りながら横を振り返った。
「えっ」
俺の真横にはエレナが眠そうな目でニコニコ笑っていた。
「うわっ、びっくりした…!なんで同じベットで寝てるの…」
「え?仲良くなりたい人とは同じベットで寝た方がいいと、父に言われたので」
「え?そうなんだ」
さて、新しい一日の始まりにベットから出て、優雅に朝日に当たりながら俺は背伸びをする。
この清々しい目覚めは本当にいつぶりだろうか…。
陽光に起こされて、気分はとてもいい。
俺からしたら何もかもが新鮮な世界での二日目だ!
エレナの護衛ももちろんだが、この世界で色んなことをして色んなことを聞いて、色んなことを見てみたい。
「さぁ、起きろエレナ!今日は何をするか決めよう!」
「そうですね!朝ごはんを食べながら考えましょう!」
俺たちがそんな会話をしていると階段からどんどんと何かが上がってくる音がした。
その音の後に扉がバンッ!と開かれて、そこにはアロルドが居た。
「よう!ひとつのベットで昨日はお楽しみだったか?」
「お楽しみも何も、昨日はしゃぎすぎて何も覚えていないぞ」
「そうか!まぁ、そういうことにしておいてやる!着替えはそこら辺にある奴を使ってくれ。女物は…、レヴィのあったかなぁ」
そう言うとアロルドは扉を閉めてエレナの替えの服を探しに行ってくれた。
そういえば昨日、宿屋を結局取れずにギルドの二階に泊まらせてもらったんだった。
「昨日の出来事を全然覚えてない…。楽しかったことは覚えているけど…」
「お酒の飲み過ぎですね!お酒はあまり飲まないように気をつけてくださいね〜」
そうか、お酒という飲み物を渡されて飲まされたんだった。
やけに体が熱くなり、気分が晴れやかになるのを覚えている。
お酒か…、いい飲み物を知れた。
「エレナはこれを使ってくれ!話したいこともあるし、食事は俺が部屋に持っていくぞ」
再び現れたアロルドは服を部屋の中に放り投げると、忙しなく一階へ降りていった。
食事を持ってきてくれるということなので、俺たちは少しこの部屋で待ってるとするか。
―――
「早速だが、お前たちのことが知りたい」
「俺の名前はレオだ」「私の名前はエレ…」
「そうじゃない。お前らが追われているという話についてだ」
食事を頬張りながら、そう聞いてきたアロルドにどうするか返答に困ってしまう。
少し考えて、俺はエレナに話すか話さないかは託すことにした。
「アロルドさんの人柄を見て、信用したのでお話します」
そう切り出すと、エレナは俺と話した内容と同じ内容をアロルドに話し始めた。
「なるほどなぁ…。確かにいつか帝国に世界一の回復術士がいると聞いたことがある。そんなお人が、こんな酷い目にあっていたとは…」
実の親に人体実験をされそうになったという、重く苦しい話に部屋の空気は暗くなってしまう。
「いえ、私が期待に応えられなかったのが行けません。もう少し魔力量があればお母様は認めてくれたのかもしれません…」
「そんなことないぞ。どんな理由であれ、子供で人体実験をしようなんて考えた奴は悪だ」
俺とエレナは似たような境遇にいる。
突然親が遠くに行ってしまい、一人でさまよっている状態だ。
俺の時はいくら助けを呼んでも誰も助けてくれなかった…。
けど、今のエレナには俺がいる。
俺がいる限り、俺と同じような悲しい目には合わせたくない。
「まっ、そうだな。それは逃げて当然だ。あ、安心してくれ、俺は口が堅い方だ。それに間接的に命の恩人でもあるしな!口外しないから大丈夫だ!」
そう言ってアロルドも豪快な性格に似合わず、気を使って励ましてくれている。
「ありがとうございます…!逃げ切ってみせます!」
エレナが改めて決心を決めたところで、俺はアロルドに教えて欲しいことを、いくつか聞いた。
「ふむ、なるほどな!それじゃあ…」
有名なところや隠れるのに最適な場所など、色々為になることを聞けたので良かった。
そして、世話になったお礼を言って、出ていこうとするとアロルドはストップをかけた。
「おっと、出ていく前にこれを受け取ってくれ」
そう言ってポケットから出したのは、とても小さな小袋だった。
「なんですか、これは?」
「これは魔法袋と言って、中が広い空間に繋がっている。これは安物だから、入れられても少しだけなんだがな」
そう言ってその小さな袋から取りだしたのは大きな袋で、俺の頭が混乱する。
「さて、これはお前たちが討伐したグリーンドラゴンの報酬だ。節約すれば一年は余裕で暮らせる程の金額が入っている。まぁ、逃亡生活大変だろうが頑張れな」
袋の中身を見せてもらうとジャラジャラとなり、中からキラキラ光る物が顔を覗かせていた。
「こんなに…!」
「あぁ。この魔法袋もついでにやるから、使ってくれ」
「ありがとう…!」
俺たちはアロルドに再びお礼を言うと、ギルドを後にしたのだった。
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