第36話 将棋

 ある日の夕食後。


 


 夕暮れの子鹿亭で俺とマシュー君とメアリーちゃんの3人はボードゲームについて語り合っていた。


 


 グラッド王国には騎士団と魔王という名のチェスに似たボードゲームがあるとのことで試しにマシュー君とメアリーちゃんにやってもらうことになった。




「私、騎士団がいいでしゅ。お母しゃまに未だ負けなしのメアリーの瞬足の指し筋を見せてあげましゅわ、レンしゃん」


「じゃあ、僕は魔王でいいよ。お手柔らかに頼むよ、メアリーちゃん」


 


 結果はマシューのボロ勝ちだった。メアリーちゃんは確かに指すのは早かったが、子供にありがちな考えない指し方だった。




「メアリーの騎士団が魔王に負けたでしゅ。大人気ない大人の典型的事例を見ましゅた。7才の子供に本気になって本当に恥ずかしい人ですね。マシューお兄ちゃんって」


「ハハハ、僕はそういう性格でね。ボードゲームだろうと手は抜かないんだ」


 


 メアリーちゃんとマシュー君が言い合いを始めた。




 俺は考えていた。


 騎士団と魔王は取った駒を手駒に加えることはできない。その点は将棋の方が難しい。




「メアリーちゃん、ちょっと紙を数枚とペンとハサミを持ってきてくれない」




 俺は日本にいた頃、スマホアプリ将棋うぉーーずに結構はまっていた。棒銀という戦法のみで1級まで登りつめた人間だ。素人相手なら負ける気はしない。懐かしいじゃないですか将棋。久しぶりに指してみたい。マシュー君に覚えさせるしかない。




 その日、俺はマシュー君に徹夜の特訓をした。将棋とは実戦あるのみ。身体で覚えるものだ。

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