第35話 滝行

「そういうことなら納得ですじゃ。加護を与えるならやはり麗しい若人の方がええかのー ハゲマッスルはワシ向きではないな」


 


 自浄なる滝の守護者は言った。




「では後は任せました。私はあなたご自慢の眷属に挨拶をして帰りますので後はよろしくお願いしますね」


 


 そう言うと清らかなる源流の主の声と雰囲気はここで途絶えた。






「キャーカワイイ、何、この子達。皆、なでなでしてあげるから、私に集まってー」






「ということで、そこの若いの名をなんと言う? 」


 


 近くの小川から聞こえるキャピキャピした声を無視して自浄なる滝の主はマシュー君に言った。




「僕はマシューと言います」


 


 マシュー君は返答した。




「マシューか。そなたにワシの加護を授けてやるからの。ありがたく思え」


「お言葉ですが、僕は今まで自分の力だけで強くなってきました。ですから、今日、お会いしたばかりの貴方にどんな力かも分からない加護なんて別段、貰いたくないないのですが」


 


 マシュー君は不服そうに言った。




「そういう意地っ張りなところは嫌いではないぞ。所詮、存在するということは意地じゃ、ワシも根性だけで存在してるようなもんじゃ。さあ着ている物を全て脱いでワシがいいと言うまで、あの滝に打たれてこい。加護を授けてやる。ワシの加護は身体能力の向上と不安に対抗する精神力じゃ。あと武器を一つ作ってやる。そなたのつこうとる武器はなんじゃ」


 


 自浄なる滝の守護者は有無を言わせぬ口調で言った。




「短剣ですけど」


「短剣か、短剣なら作りやすい。水滴でも幾万垂れれば岩をも削る。ワシの滝で打たれた黒曜でも見つけて短剣にしてやろう。名も付けてやる。かなりの業物になろう。しばし、時間かかるから後日また取りにくるがよい。さあ、そなたは早う滝に行け」




 その後、長い押し問答の末、意地に根負けしたマシュー君は素っ裸になり滝行をすることになった。


 


 美しい裸体を俺に見られた恥ずかしめの代償として身体能力はかなり向上したらしい。


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