第19話 レベルないってよレン
「レベルがないってどういうことなのよ? じゃあ、どうやって強くなったらいいの」
俺はマシュー君に詰めよりながら言った。
「落ち着いて下さいよ、レンさん。僕に言われても知りませんよ、レベルだなんて」
場所はいつもの山の狩猟場。
転移して3週間目の今日、俺はやっと短剣でゴブリン1匹を葬り去ることに成功したのだ。俺は正直嬉しかった。この嬉しさをどう表現したら良いだろうか。それは自分がまだ日本で暮らしていた頃、そうだ大学生の時だ。小説サイトに処女作を披露し始めてブックマークとか評価を貰った時に似ている。自分が認められた感覚。更に上を目指してやろうという意欲が湧いた。
それなのにだ。この天地球グリームヒルトの世界システムは俺を裏切った。モンスターを倒しても強くなれないなんて、モンスターを倒す意欲が湧かない。なんて酷い話だ。
「強くなるには地道な鍛錬ですよ、あとは極々稀にですけどモンスターを倒すと本当に僅かですが身体能力が向上することがあります」
「ええっ、あるじゃん。強くなる方法あるじゃん。教えて教えてー」
俺はマシュー君の言葉に飛びついた。
「これはですね、どういう理屈でそうなるのかも判明していません。首都メルカッドの学者でさえその謎の解明には至っていません。16年生きてる僕でさえ3回ばかりしか経験ないんです。モンスターを倒した後、急に爽快な気持ちになってですね、本当にちょっとだけ身体能力が上がるんです」
マシュー君の言葉を聞いた俺はがっかりした。16年間で3回、しかもちょっとしか身体能力が上がらないなんて。俺は強くなれないのか、このままマシュー君に笑われる道化師でいるしかないのか。
「そうか、魔法だ。佃煮海苔魔法を練り上げて、俺って最強チートを目指せばいいんだ。諦めるなナリタレン」
俺はガッツポーズをした。
「プププ、プププ。やめて下さいよーレンさん。あんなので最強目指すとか真剣な顔して言うの。レンさん、大人なんですから。プププ、ハハハ。僕の甥っ子より酷い妄想癖だ。まったく、自分の力を過剰評価して。世界は厳しいんですよ。そんなんじゃこれから生きていけません、プププ」
それを聞いた俺は顔を真っ赤にしてキレた。カチンを超越した。
「許さんぞ、マシュー貴様。今日で貴様の人生を終わりにしてくれるわ」
「待ってましたー さあさあ、レンさん、早く早く。僕の口に美味しい佃煮海苔を放り込んで下さい」
俺は、マシューの美しいデコめがけて佃煮海苔を放った。
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