お手伝い

「えっと、2キロ玉2つに1キロ玉2つでいいですよね」

「分散するので1キロ玉はベルトから外してもらえますか? すいません」


「あ、わかりました。 えっとこちらの方は2キロ玉4つですよね? 」



「桃ちゃーん! 永野さんのウエット持って来て! ②の青札がついてるやつ」

「はーい! 今、持って行きます」


****


私は今、黄金崎公園にいる。


ダイビング?

そう、ダイビングにはダイビングだが、ショップVisitの臨時スタッフとして来ているのだ。


——5日前


詩織さんからの電話が鳴った。


ブブブブブ


(詩織さんからだ)


「もしもし柿沢です」

「桃ちゃん、あのね、桃ちゃんにお願いしたいことがあるの——」


ショップVisitでは春の5月と秋の9月に緑章国際大学ダイビング部の合宿に同行している。

Visitの悟志さんと詩織さんはこのダイビング部のOB・OGなのだ。

この秋の大イベント前に悟志さんが気胸をわずらってしまったのだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇

気胸

肺に穴が開き空気が漏れてしまっているために横隔膜によって肺が膨らまない。または他の臓器に障害をもたらすことがある。

◇◇◇◇◇◇◇◇


今回の合宿は次の通りだ。

ダイブマスターコース2人・・詩織さん担当

レスキューダイバーコース3人・・斎藤さん担当

ファンダイビング・・現地サービス利用


私はお手伝いという形で運用上の雑用。

そしてレスキューコースの事故者役を行うために来たのだ。


レスキューコースを取得したばかりであること、その意義をよく知る者として声がかかったのだと信じたい。

決して誰よりも長くコースを受けていたからじゃない!


ファンダイビングは現地サービスに頼んだようだけど..


「おーいっ! 桃ちゃん! お久しブリーフ。なんつって。ぷぷっ」


この訳の分からないノリは、西伊豆お助けインストラクター平子さんだ!


「なんで平子さんがここにいるんですか? 」

「そんなの決まってるじゃん。黄金崎が忙しいからだって。ダイブセンター黄金崎の社長タケノリさんに頼まれたら断れないもん。ね、タケさん」


「カッカッカッ! 平子ちゃんに頼めば力士のふんどしくらい頼りになるからね」


タケノリさんは人懐っこい笑顔で豪快に言い放った。


「じゃ、桃ちゃん、いろいろ大変だろうけどお願いね」


そんなこんなで器材の用意、ウエイトの準備、ダイバーの要望を聞き、詩織さんに伝え、指示をもらう。


一番大変な事は部員の人が、私を本物のショップスタッフと勘違いしていること。

少なくともダイブマスター以上だと思っていろいろと質問してくるのだ。


レスキューダイバーコースで行ったことくらいなら言えるけど、専門的な事になると、こちらが聞きたいくらいで..

もう開き直って正直に修行中のお手伝いと言って『知ったかぶり』などはしないようにしよう。


私はレスキューダイバーコースで事故者役を『やっぱりの予想通り』やることになった。


海に仰向けで曳行されながら

『私はこうしてまた真っ赤に日焼けするわけね.. 』とあきらめの言葉をつぶやいた。


しかしながら私にもちゃんと海を楽しむ時間が用意されていた。




それは『ナイトダイビング♪』




平子さんはこんなこと言っていた。


「ナイトダイブとかけて夜這いと解きます。



どちらも『暗がりを潜る』でしょう。 ひらっちです。 ぷぷっ」




「平子さん.. (꒪꒳꒪;)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る