ステップ君を手に入れた。

「そうなのか。哲夫君名古屋へ.. 」

「へぇ。そうなんだ。桃ちゃんに世話になったくせに薄情な奴だな。そう思わねぇか? 」


「ねぇ、ねぇ、相良さん違うの。ほら、やっぱり試験の合格はきっかけでしかないでしょ? その先が大切。それに夢ならなおさらだし」



「まぁ、哲夫君がその夢の為にがんばってきたというなら周りがとやかく言う事ではないけどな..『友達』としていいんだろ、桃? 」

「うん。そのために協力していたんだからね。お父さんも部屋貸してくれてありがとう」


「 ..まぁ、名古屋って言っても東名高速で飛ばせばすぐに行けるしな。そうだ。桃、おまえ車持てばいい! なぁ、太刀君、すぐに古森君に連絡とって良さそうな中古車を探してもらってくれ。桃、どんな車がいい? 」

「う~ん。種類はよくわからないけど、ダイビング器材とか.. 友達とも出かけたいからワゴンがいいな」




と、いうわけで、フリーでバイヤーをしている古森さんが持って来てくれたのが「ステップワゴン 二代目バージョン RF03型」だ。


「まぁ、かなり古い車だけど7万Kmでオイル漏れなし、エンジンの状態もいい。これ6万円でいいぞ。まぁ、ちょっと自動車税が高いけどな」


「6万円でいいの? ちょっとおじさんっぽい色だけど..ねぇ、もっと可愛い色ない? 」


色はカーキ色みたいな感じだったけど6万円という金額はやっぱり魅力的だった。


これで太郎丸を連れて自由にいろいろ行けると考えればかなり気持ちもHappyだ!


後ろでお父さんが目を細くしているのを感じながら、私はこのステップワゴンを購入することにした。

LINE

「七海、これ見て! 」


《画像》


「なに? 車? 」


「私の動く城だ! 」


「おおー! すげー。ちょっとおっちゃんぽいけど」


「口を封印するぞ! 」


「じゃ、ドライブ行こーよ! 運転はもっちんで」


「だね♪」


このステップワゴンに太刀さんが自分の持っていたスピーカーとカーステレオを取り付けてくれた。


「ほら! いい音でしょ。これならドライブも楽しくなるよ。USBやipod、Bluetoothも対応だからね! 」

「いくら? 」


「いいよ。あげるよ! 」

「ありがとう」




****


週末、七海とシューファ、そして今回は太郎丸を乗せて九十九里へドライブに出発!!




当日、高速道路を通って九十九里の片貝海岸まで行ったのだが..


何といっても6万円で購入した車、カーナビなどついているわけもなく、隣に座った七海に『そこっ! 車線左! 』『ダメ! ダメ! そっち出口、出口! 』『左後ろ! 車! 車! 車線戻せ! 』とかとか言われっぱなしだった。


『いや~、自動車整備会社の娘の運転とは思えないね』と七海からの評価、いただきました。


シューファからは『ちょっとしたアトラクションだね。ハラハラしたでござるよ』と言われる始末。


しかし、少し夏が残る秋晴れはとても風がさわやかで、この青い空のもと、大きな海は爽快だった。


大空の下で七海はひと言だけ聞いてきた。


「桃、いいの? 」


私はひと言だけ返した。


「信じることにした」





「そっか」




そして私たちは海岸でハマグリ焼きを楽しんだ。


太郎丸も初めての砂浜、シューファを引きずるように走っていた。

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