再来×2
お盆休みは、あと一日ダイビングに行く予定だった。
魅惑の洞窟ダイビングと言ったら、もちろん雲見!
生憎の悪天候なら仕方がない。
海上は低気圧で荒れまくっているらしいのだ。
富戸や大瀬崎の代替案があったけど、今回はパスすることにした。
予定がぽっかりと空いたので、明里さんお勧めの日焼け止めクリームを探しに笹塚駅のTwentyOneやFrenteに行ってみた。
「ないなぁ..やっぱり新宿や渋谷に行かないとないのかな? 」
笹塚駅の京王クラウン街の改装が終わっていたので、ついでにブラブラしてみる。
ここ、スタバができたのか..
あっ! 新しいスイーツのお店『Atelier de Mar』
読み方はアトレア・ド・マーでいのかな?
おいしそうなタルト。
でもやっぱり大好きなショートケーキがほしいな。
『マープリン』も気になる。
パンでも買って帰ろうかな..
そう考えながら店内を覗いていると..後ろから声をかけられた。
「やぁ、君、何してるの? 」
「別に....何も..」
「ここのパンおいしんだよね」
何? こんなところでナンパ?
「何ですか? あっ!? 」
「そうそう。俺です。ちょうど君を見かけたから。え~っと、隣人21号さんだっけ? 」
ボワッって音が鳴るほどの恥ずかしさが3週まわって戻ってきた!
「ななな.. 何の用? 」
「顔真っ赤になって可愛いね。YOU、ユーモアもグンバツよ! 俺の名前覚えてる? 」
その古い業界人のような口ぶりは軽く私をからかっているかのようだ。
「哲夫さんの弟さんでしょ!? それに、言っておくけど『号』は付けてないから! 」
「いいねぇ、いいねぇ、君。俺は令次。水谷令次」
令次さんは長いまつげの奥から私を見つめる。
「あなた、本当に哲夫さんの弟さん? ぜんっぜん似てないんだけど! 」
「いやだなあ。良く見てみて。もっと、近くに顔寄せてごらんよ。そしたら俺も君の事がよく見えるし」
「なんなの? 私、暇じゃないんです! 」
「ははっ! さっきから暇そうにブラブラしてたじゃん!」
真面目な顔してみたり、急にふざけた態度をとったり..
つかみどころのない人だ。
「いやいや、ごめん、ごめん。ん~、そっか ..あの生真面目が服着てるようなてっちゃんがね~.... 隅に置けないなぁ..」
またマジマジと私を見ながら少し軽薄めいた笑みを浮かべている。
「なんなんですか? ジロジロと! 哲夫さんがなんだって言うの? だいたいお兄さんなのに『てっちゃん』ってあなた達、兄妹は! 」
「ああ、琴緒のこと?? 」
「あなたの事もです!! 」
「俺たちは昔から兄貴のこと『てっちゃん』って呼んでいるから別にいいんだよ。それよりも、このままデートすれば、もっとわかりあえると思うけど、どうかな? 」
「お断りです! 」
「ははっ、やっぱり、そっか。ま、琴緒も俺もしばらく実家にいるからさ。今日の夜にでもそっちに遊びに行くよ。てっちゃんも一緒に行くから、留守はダメよ。 俺、ちょっと買い物して行くけど、一緒にどう? 」
「だから、おひとりでどうぞ。私は帰ります! 」
哲夫さんの真逆のような人。
なんなのよ。まったく..
◇
LINE
「七海、こっち来ない? 」
「おー、何だね? 」
「ちょっと困ったことになってる」
「ん? 」
「今晩、例の兄妹が再来するかもしれないのだ 」
「(-m-)ぷぷっ隣人桃21号か」
「号は付けてない! 」
「ん~..うちも家族団らん中。まぁ、退屈したら行くよ」
「どうせ退屈でしょ。来なよ! 」
「わかった、わかった、何時? 」
「16:00くらい」
「うぃー、じゃ! 」
◇
・・・・・・
・・
こういう時に限って時間って早い。
「もう16:20じゃない! 何やってるんだよ! 七海は! 」
もう、哲夫さんにはあとで謝って出かけちゃおうかな?
そうだ。別にあの人の言う事、聞くことないんだ。
映画でも観に行っちゃおうかな。
—ガン ガン ガン ガン ガン!
力強く階段を登ってくる大きな足音。
「あっ、来た。これ、絶対そうだ 」
—ドドン ドン! ドンドンドンッ!!
ガサツな叩き方.... ほぼ令次さんだ!
こうなったら、秘技・居留守だ!
「おーい! 桃!! いるのはわかってるぞぉ 」
この声?!
—ガチャ!
「蘭子っ!! 」
「おっす! 久しぶり! 」
ドアの前で腰に手を当てて立っていたのは、私の親友『東雲蘭子』だった!
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