全身全霊の食料調達!
この物語の主人公、クレハは冒険者である。適正は前衛向きでありながらも、あえて絶対数の少ない弓職を選び、数える程にしか存在しないシューターA級のライセンスを取得したばかりの実力者だ。
それは何故なのか。近接武器の扱いが
「起きてくださいよ。いつまで寝てるんですか?」
クレハの自宅。
眠りこけている彼女に声を掛けたこの女、シャーロットはクレハの仕事上のパートナー的な存在である。
そういった
「あれー、もう朝?」
眠たそうに目を擦りながらクレハの意識はようやく夢から離脱する。
「いやだなぁ、もうお昼ですよ? もしかして依頼の期限今日までなの忘れてませんよね?」
「そうだった! すぐ行こう!」
そう言うとクレハは布団を蹴り上げ、武器も持たずそのまま出て行こうとする。その姿に慌てた様子のシャーロットは絶叫にも等しい声量で、
「え、嘘。ちょっと、さすがに服は着ていきましょうね!?」
そう引き戻すのであった。
身支度を整えると二人は
この『ドラゴン討伐』はランクAの冒険者にのみ許された特別な依頼。当然パートナーであるシャーロットもA級のヒーラーである。
道中を蹴散らし奥地へと足を踏み入れると、遠方からおぞましいと形容するに相応しい
「支援しますよ!」
シャーロットが祈りを捧げるように両手を合わせると、クレハは光に包まれる。
「はあっ!」
クレハの
そのすべてに貫かれたドラゴンは完全に動きが止まる。
「クレハさん、今です!」
その叫びはもはやクレハにとっては「決めてくれ」の合図に他ならない。シャーロットから放たれた次なる光は、対象の防御力をすべて犠牲にして攻撃力へと転化させる術。
直後着地の衝撃を上手く逃し地に降り立ったクレハは、そのまま後方へと飛び
その
「わー! クレハさん、相変わらず素晴らしいです!」
駆け寄るも残念ながらその声は彼女には届かない。
鼻歌交じりに、ドラゴン肉の可食部を専用の刃物を用い鮮やかな手付きで捌いては皮袋に放り込む。
一心不乱のその姿は
「クレハさん、相変わらず……うえぇぇっ」
その様子を背後から覗き込んだ、今すぐにでも吐き出しそうなシャーロットの声は彼女には届かないのである。
「さてと、帰ろっか!」
クレハは肉塊で膨らませた皮袋を背負うと満足気に笑う。
「そうですね。帰りはやっぱりいつものとこ寄りますか?」
「うん、これを早速調理してもらいに行くよ!」
「そういえばお昼食べ損ねましたしねー」
その返事をするかのように、クレハからはぎゅるるると魔物のような音が鳴り響いた。
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