戦況.2

 町のエリア、砂漠地帯と廃ビル街の間の地点―――


 座って、待ち受ける者が一人。そして、そこに歩いてくる者がいた。

 「えーと、侵入者で合ってるよな?」

 「さぁ、どうでしょう、ね!」

 先手必勝。細い槍状のものを作り、飛ばす。これで、決まれば良し。決まらなくても体勢を崩せばよい。その隙をつく。そんなことを考えていたが、相手は避け・・・これで、もう一発!次の手を仕掛けようとした時に何かが飛んでくる。とっさに壁を作り防いだ。はっ?マジかよ。相手は避けながらこっちに反撃を仕掛けてきたのだ。

 マジか。やっぱ、戦い慣れてる。

 「いきなり、危ないな」

 「攻撃してきといて、何を言うか」

 「反撃ぐらいするよ」

 「まぁ、そうっですけど」

 お互いにまだ距離をあけながら、会話を交わす。正体は不明だが、望月を襲った侵入者の一人だろう。さて、見た感じだと、聞いていた壁などを作る能力者ぽいのだがどう攻めたものか。

 「一番早く着いたんじゃないんですか」

 「はは。たまたまだよ」

 「でも、参加者じゃないよな?」

 ほー、なるほど。今の発言から、参加者を把握しているらしい。話に聞いていた通り、こちらの事情を理解か。・・・聞いてみるか。

 「・・・・で、誰なのかな?なんでそんなに知ってる?」

 「言うとでも?」

 やっぱり言わないか。お互いの間に緊張が流れる。そして、相手はフードをとった。

 「『強壁』」

と簡単に言って、左手をポッキ、ポッキと小気味よく鳴らす。よく見ると、腕の太さといいガタイがいい。身長もそんなに低い方ではないだろう。

 「そうか。特殊異能対策部隊、隊員。狩野かりの

 

 こうして、二人の戦闘が始まった――――


 狩野が放った攻撃は壁が下からせり出てきて防がれる。相手は防ぐだけでなく、槍のように先が尖っているものなどを形成し襲わせてくる。その攻撃に反応しながら、狩野が色んな方向から仕掛け、それを防いでこちらに反撃を仕掛けるという流れの繰り返しだった。

 銃は防がれている。自分のメインの武器の弓矢も試したがやはりと言うべきか防がれていた。攻撃が本人を直撃しない。避けるか、直前で防がれる。

 速さは届きそうなのにな。近づくのもきついか?近づくにつれて防御が上がってる気がするしな。どう攻める?どう攻略する?頭の中はどう相手を攻略するかでいっぱいだった―


 「どうした、終わりか?」

 「・・・・」

 「なら、こちらから行くぞ!」

 石のつぶて、いやどちらかというと、瓦礫の欠片に近いものが飛んでくる。これくらいかと油断したところに、槍状に成形されたものが向かってくる。避け近づこうとすると、アスファルトと砂利が混じってる足場が起き上がり曲がり、道が変わることで体勢が崩れる。隙を逃さないとばかり、せり上がった壁が倒れてくる。何とか、躱す。別の攻撃が今だと言わんばかりに攻めてくる。

 いったん距離をとり、落ち着きを取り戻そうとするが、下がった場所にまで攻撃が届く。だが、勢いは先ほどよりもなかった。

 こちらから右腕にセットしたシュータで矢を撃つ。やはり本人には当たらず直前で防がれた。


 「ははは。こんなもんか!!!あぁあ?」

 「・・・・・」

 ・・・不気味だな。というより、冷静。煽っても、感情的にならずにただ淡々と立ち回る。何をするべきか知っており、こちらのことなど全て見通してるかのように。・・・観察し、攻略法を探しているのか。・・・・怖いな。あまり時間はかけたくないんだが。まだ、攻撃は防げている。なら、心配はないはず。・・・はずだ。

 目測で5メートルくらい離れたところから、攻撃を仕掛ける。だが、本人には当たらない。壁などで防いでくるためである。砂漠地帯から、廃墟などの建物があるエリアに近づく。

 異能で作成された槍などがこちらに向けて飛んでくる。相手に警戒されてるが、避けれる。飛んでくるものや下からの突き上げてくるものを避け、遮蔽物を用いながら移動し、周囲を一周して距離をとった。すると、追撃はこなかった。


 「はぁはぁ」

 息切れを起こす。いや、素早い。まだやれるが、相手をとらえきれていない。

 ・・・ちょろちょろと。一回息を整え、頭を落ち着かせる。

 ・・・戦い慣れてている。狙いも正確。気を抜けば、確実に当たる。なんなの?・・・・さすが、特異隊てっか。

 攻撃が再開された。だが、目の見える範囲に狩野はいない。周りを走っているのか、あちこちから、電気の銃弾、矢が襲ってくる。

 一つ一つに対応してる場合ではない。反りたち自分を囲むように、カーブを付けた壁を2,3枚重なり合うように各方向に用意する。これで、大体のは防げるはず。隙間からなんて無理のはずだ。思いの通り厚い壁に阻まれた音がしたが、、、

 「えっ」

 隙間から矢が入ってきた、あたりはしなかったが、かすった。どうやった?飛びながら放ったのか。見える位置にはいない。上をあけ、前と後ろ横を守れるようにする。あとは、反応して止める!

 狩野が見えた。こちらからも仕掛けるが、下からも横も避けられる。矢が放たれる。

 (防げる!!)

と思た矢先、曲がり斜め下に急降下してきた。

 は?どうやって?考えがまとまらないうちに、外れたと思っていた方向の矢も曲がり襲ってくる。くっそ。間に合わない。全部は防げないが一部は防げた。すると、一つの壁が音をだし崩れ、狩野が見えた。銃を構えている。やっばと思い、壁を出すが、狩野の姿はなく――


 気づいたら、間に入られて足元をすくわれて倒されていた。

 「終わりだな」

 「・・・・・」

 何なのだ。一体何なのだ。喉元にはナイフが突きつけられている。

 「なめてたってことだな。降参したらどうだ。そしたら、これ以上はやらない」

と淡々と言ってくる。降参?なめてた?ふざけるな。まだやれる。そうだまだ!

 さっきから、身柄を抑えているが何も言わない。何だ。まだ、何かする気か。もう、拘束してしまうか。

 その時、相手の体の一部が変わっていく。拳からひじの先ぐらいまでの範囲がコーティングされていく。足の方も先から変化している。残りの壁から、刺すように突起物が伸びてきた。拘束をあきらめ、転がって避ける。ゆらりと立ち上がってくる。よく見ると、コンクリートや鉄といったものを一部まとっている。目もギラギラとこちらを睨み、ひびのような線が顔に入っていた。

 観察していると、攻撃の先ががこちらに向けられ迫る――――


 何とか防げた。とっさにナイフを構え攻撃を受けれた。何とか、ナイフが壊すことなく受けれたが、相手の領域から押し出された形になる。もう一度近づけないかと相手の方を見ると異能の壁で押し出しこちらに向かってきた。 

 近接戦も交えて、戦う。ナイフを振うが装甲にはじかれ、鈍い音がその場に響く。

 (これは簡単にはとどかないな)

 しかも相手は殴る、蹴るといった近接以外に、先ほどまでと同様に能力でも仕掛けてくる。先ほどよりも派手ではないにしてもこれが厄介である。相手の動き以外にも意識を裂かないといけない。避けながら、攻撃を仕掛け決定的な瞬間を待つ。

 そんな、気を緩めれないやり取りがしばらく続いた。

 「どうして、避けれるんだよ」

 どうして、か?なんとなく予想して、来る気がして・・・・

 「勘」

 「か、ん?」

 「そう、勘」

 相手がひるんだ隙に、一発いいのが入った。武装してない腹のところである。すぐに、反撃が来るが避け、矢を放つ態勢にはいる狩野。なにかが崩れる小さな音がした。したというよりも聞こえた気がするが妥当だ。

 敵は、地面に手をついていて追撃してこない。

 (狙い放題だ)

 矢を放つが、ぎりぎりで体をそらし避けられる。手は離していない。音が大きく響き始め、地響きが起こった。

 「くっっそが」

影が大きく写し、俺とあいつの間の距離にあった両隣のビルが倒れてきた。逃げられないようにか、足元にも変化が起きている。

 ビルの倒壊音がその場に響いた――


 「はぁはぁ。・・・・・」

 倒壊したビルのがれきの上には誰も立っていない。廃墟のビルであったがそれなりに質量はあったはずだ。下で押しつぶされているのか、それとも。大量の瓦礫と土煙ではっきりとはわからない。

 土煙が消え、視界が晴れる。警戒を解かずに、周囲を見渡す。いない?ガラッと音がする。重なり合った瓦礫が崩れた音であって誰もいない。

 「ふーー」

 ようやく一息つける―― 瓦礫の崩落音と共に、頬をなにかがかすりその思いは砕かれた。

 放たれた方向を見るが居ない。銃撃の音がし、また土煙が起こる。だが、足音はしっかりと聞こえる。。移動している。音がする方向とは反対に壁を作る。不意の射撃に対抗するためである。反撃のつもりで攻撃を仕掛けるが当たってるのが分からない。キラッと光が見えた。そこに、下からいくつかの塊をせり出し、総攻撃を仕掛ける。その場の煙が晴れるが、銃だけであった。

 (一体どこに―――)

 周囲を警戒しようとしたその時、体勢が崩れた。

 (クッソが)

 大きく腕を振るうが当たらない。そして、煙が晴れるどころか深くなりつつあることに気づく。片手をついて倒れないようにしているが、いつ来るかむ不明な攻撃に神経が削られる。立ち上がり立て直そうとした時、後ろから飛び蹴りが入り突き飛ばされ、地面に転がった。

 「くっそ」

 「まだ」

 別の方向から声がし、ビリッとしびれて電撃が体に走る。

 マジか。ナイフにも、ついているのか―――

 「おらぁ!!」

 無理にでも異能を用いて、周囲や自分の下に石柱型の塊をせりだし、脱出を図る。相手に避けられてしまうのはいい。これは自分を起こすためのものでもある。起き上がることにも成功し、距離をとった狩野をみやる。・・・危なかった、意識が刈り取られるところだった。

 攻防が再開され、お互いの動き、衝突により、砂利と土煙が上がる。狩野は攻撃を寸前で避け、反撃を仕掛けるも防がれる。防がれたと認識したら、素早く動きを変え攻撃を仕掛ける。相手の異能も利用し、駆けながら近付いていく。

 防御と能力の使用が追い付かない!!嫌だ、嫌だくるな!

 苦し紛れの拳も防がれ、勢いのままに投げられる。攻防は気づいたら元の場所から移動している。

 大きいのが入り、地面を転がる。そしていつの間にか、砂地が多い地帯に入っていた。

 「はぁはぁ」

 自分が肩で息をしているのがわかる。怖い。もう怖い。震えるし今にも逃げ出したい。

 こちらに何も言わずにただ静かに歩いてくる狩野。

 ここが戦闘の山場だと直感する。たぶんお互いにそう思ってる。恐怖を感じてる場合ではない。今できることを。いや、ここで防ぎきる。

 狩野は足を止め、構え始める。こちらも対抗できるように心を締め直す。両者の間に緊張が再び走る。


 砂地に刃物を防ぎ弾く音と砂がこすれる音が響く。矢にナイフの斬撃と遠距離と近接の合わせ技が続く。それを、体付近に壁を作り、腕にトゲなどを作り対応する。どちらも決め手にはならずに膠着状態である。

 そんな状態が続くと思われた時『強壁』の周りから、壁がせり出てくる。そして、球状に自分の周りを囲み球体の中にあいつが閉じこもる形となる。隙間があるとはいえ、規則的ではない重なりの囲み。

 矢や銃撃もはじかれ、曲射もすんなりとは通さない。あいつは隙間などからも攻撃はできると。

 「さぁ、こいや!!」

 と叫んでくる。

 ナイフの先を向け、答える。

 あぁ、そうだな。最終ラウンドと行こうか。


 攻防は続く。といっても、狩野攻撃を球状の囲いが防いでる状況である。ひびが入るところもあるが、割る時間を与えてはくれない。あちらも槍やらを形成し間から放ってくるのである。それを回避しながら、観察を続ける。

 あいつの攻撃は直撃せずに防げている。こちらの攻撃も大きなダメージにはなってはいないが、掠り姿をとらえ始めている。このままいけば――

 突然、球体の視界が開いてるところが砂が舞った。狩野が巻き上げたらしい。

 これぐらいで視界をつぶしたつもりか!!まだやれるぞ!!

 気がそれた時だった。何かが防御球の中に投げ込まれる。そして――――


 気付いたら、倒れていた。喉元にナイフを突きつけられ、前の状態の再現であった。

 「これで、詰みだな」

体が動かない。能力も溶けている。・・・・負けたのか。

・・・閃光弾か。急に視界を奪われ、その後に威力の高い電撃が体に走った。それにより、能力を一部といてしまい、警棒とナイフの電撃を喰らった。ここまでが覚えていることだ。

 「はぁー、負けか」

 「・・・・・潔くていい」

 拘束され、動けなくなる。

 「まぁ、寝てろ。後で回収するからよ」

 「はは。つええなぁ。」

 その言葉を聞いて、目を見開いた後、狩野がフッと笑みを浮かべ、

 「まぁな。なめんなってな」

とドヤルように言う。

 本当に強かった。豊富な装備だけでなく、こいつ自信が強かった。・・・どこからだろうか。まるで、こいつの気がする。

 はぁー、すみません。いったん俺は休みます。そして、意識が落ちる。

 「落ちたか」

 それにしても、てこずった。後、二人もいるのか。こいつと同じレベルかそれ以上が。少し休んだら、進まなきゃなぁ。

 狩野は近くのがれきに背を預けて座り込んだのだった――――



 紫炎をまとって攻撃される。避けても、熱さが伝わってくる。何とか炎と攻撃は直接当たらず避け、距離をあけれる。敵の方を見ると、火球が二方向に向かう。各々が対処に追われる。『鬼炎』は、炎をまといながら移動している。

 「志保さん!」

『鬼炎』は志保さんに迫っていた。志保さんはそのまま、相手をいなし、避け、攻撃をくらわせる。

 「近づけばいけるとでも?」

 こちらを睨んだと思った瞬間炎の勢いが強くなった。

 「っ!」

 転がって離れて、構えるが前方から炎が噴射される。避けた先に火球が飛んできて、その場が燃える。

 『鬼炎』は追撃しようとするが、目の前をナイフが通る。両手に持たれたナイフの攻撃に対処する。

 斬りつけ、右、左、右、姿勢を低くし蹴り。隙を見せたら、やられるぐらいの連撃を繰り出す彼女。

 ・・・燃やすか。大振りで、溜めて発射するが見切られ避けられる。

 追撃をかわすためにいったん距離をとるが、そこに弾が掠り後ろの壁にぶつかる。電撃銃とタイプが違うものだった。そちらの方向に視線を向けようとするが、息をつかせまいと、近接が襲う。体を回転し横に移動するが、次は銃撃が近接の間を補うように襲ってくる。炎で二人の視線をを遮り、遮蔽物に身を隠す。

 (・・・・厄介だな。)

 連携が決まると、本当に厄介であった。こちらが押している時があったのにすぐに盤面を覆された。さすが、組織の一員。二人の方を伺うと、こちらを警戒しながら合流していた。移動しようにも、銃撃が飛んでくる。

 「大丈夫ですか、志帆さん?」

 「大丈夫、大丈夫。・・・・まだいけるよね」

 「もちろんっす!!」

 

  さぁ、反撃と行こう。


 さて、整理しよう。相手は紫炎を使って攻撃してくる。使用方法は様々。遠距離攻撃、近距離にも応用。つまり、遠、中、近どれでも対応可能。遠距離攻撃にも、種類があり、放射に火球。溜めて、威力強めに放射。炎としての攻撃。移動、纏うなどの動き、近接の威力向上にも応用。うん、強いけどいける。隠し玉があったとしてどれくらいかはわからないが、いける。・・・・”さいきょう共”が相手よりはまし。

 うちは屈み、靴の出力をあげる。最大にして、準備を進める。一気に近づいて、終わらせる。志保さんと協力して倒す。援護しやすく、相手の気を引きながら相手の攻撃を避け最高の一撃を。

 物陰に隠れながらも頭を回す。相手は二人。こちらも出し惜しみしたら負ける。だからこそ、今の状態になっているのだが。さて、溜めろ。限界を越えろ。上がれ、あがれ。次で、仕留めろ。


 三者の間に緊張が走り、この場が山場であることが三者三様に感じていた。

 ・・・準備が整い、一気に警戒度が上がる。

 周囲の瓦礫が崩れ落ち、音が響く。それが合図となる――――




 モニタールーム――――

 画面を見ていた職員が声を上げる。

 「一部が、一部が映りました!!!!」

 大きな声で、室内に響き、驚きが広がる。それもそうである。先ほど、残っていたカメラまですべて消え、エリアの現状がわからなくなっていたのだ。

 映った画面を大きくし、室内にいたものはみな、画面に注目する。

 

 そこには、崩れ去った建物の残骸。中心に謎の人物が浮いており、周囲の瓦礫の上には、人が何人も倒れていた。そう、『さいきょう』たちが。

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