”負”

 紫炎と電撃、土煙、残骸と共に舞い、3者のあいだに緊張がはしる。

 『鬼炎』は胸のところにも、炎が纏われ、燃えている。角も輝き、火球、炎の渦が渦巻き浮いている。手には力を溜め、温度があがってるのがわかるくらい白く燃え、揺れていた。

 

 ガラッとがれきが滑り落ちた音がその場に響く。聞こえた同時に、工藤未歩は『鬼炎』に対して走り出す。外からカーブを描くように近づく。佐々木志保は援護、迎撃のために両手に構え、打ち出そうと狙いを定める。

 『鬼炎』の両手から放たれた熱線。それは、白く輝き、先ほどとは比べ物にならないぐらいの熱戦の周囲は渦巻き、熱さ、速さで迫ってくる。それは、2者に向けて放たれていた。

 ((やっば(い)!!))

 体をひねり、スピードを落とさずに直撃を避けるが、体の左を思いきり掠る。

 うっ!!熱い、痛い!左腕のダメージがすごい!!だが、走ることをやめてはいけない。迫るんだ!大丈夫、まだやれる。志保さんは。。。いや、心配しなくても大丈夫!信じて、突っ込む!

 くっ!!威力、範囲共に段違い。とっさに迎撃せず、避けたが左足が痛む。変に体勢も崩してしまった。熱線の後を見て、ゾッとした。通り道がわかるように地面がえぐられ、溶けていた。

 避けられた。最大の威力をこめたつもりで放ったが、直撃は避けられた。だが、いい。これで仕留められなくても、次だ。

 体勢を崩したところに多方向から炎の放射が来る。上、斜めと。大きな渦から渦を描き放射される。威力も高い。地面に転がり避けるがぎりぎりである。銃を構えるが、撃つ隙がない。

 炎が迫ってくる。いろんな角度を付けて避け辛くしている。だが、未歩は止まらない。スピードを落とさずに、方向を変え徐々に迫っていく。

 視界に一人近づいてくるのがうつる。ナイフを構えながら走ってる。炎を目の前に出すが避けられ、そのままの勢いで蹴りが入る。音を立て、後ろの壁まで吹っ飛ぶ、俺。追撃をくらわせようと彼女は前に踏み出そうとしている。腕でガードを組むころには目の前にいた。目に見えるか見えないかの横蹴りを紙一重でしゃがみかわす。だが、彼女はその勢いのままに体をひねり足を振り落としてくる。炎を周りに噴出する。彼女はひるむことなく振り下ろしてくるが、狙いは少しはずれ、左肩のすぐ横を通る。だが、痛みは走る。掠っただけなのに。すぐに後ろに飛んだことにより、距離が空く。

 お互いに肩で息をして向き合っている。相手もダメージが入ってるはずだ。直撃は避けているが、しっかりと体力は削れてるはず、だ。

 「まだ、まだっす!!」

と彼女は声を上げる。あきらめの表情が見えない。それは、あっちも同じか。もう一人の方にも視線を向ける。あちらも肩で息をしながらも、体勢を整えていた。・・・・ぼろぼろに見えるんだけどなぁ。まだ足りないか。装備だけじゃない、実力が二人共高いのだ。


 何かが近づく気配がする。とっさに炎で防ぐが、貫通する。電撃じゃない!体を横にずらし、ぎりぎりで避ける。・・・頬をかする。先ほどとは違う弾。

 近くから、地面を蹴る音がし、目の前に――

 近接戦が再開される。先ほどと違うのは、援護射撃が飛んでくること。意識が分散させられる。

 炎の燃える音、銃声音、ナイフの空を切る音が周囲に響く。

 相手は炎をまとって、速さ、威力に変えたりして仕掛けてくる。。対して、こちらはナイフ形の武器、足による攻撃。決め手にかける。志保さんの援護射撃も防げるものは防いだうえで、攻撃している。敵ながら、器用である。・・・やるしかない。

 銃を構え連射するが、防がれるか避けられていた。

 くっ、足に痛みが走る。ここにいる全員余裕などないはず。さて、どうしようかな。正念場だ。

 

 攻防が続く。炎をまとった大振りがくるのをしゃがみ避ける。次の攻撃に備えて、防御の体勢をとる『鬼炎』。だが、追撃はすぐにはこなかった。近接していた相手は見当たらない。どこにいった?急に衝撃が来る。後ろから一回、そして前からも来る。衝撃がころしきれない。飛び、近くの壁に激突する。

 『鬼炎』が飛んだところを一目確認し、一気に距離を詰める。

 (ここで仕留める!!!)

 相手も炎を噴射してくるが、そのまま突っ込む。電撃が目の前を通る。その電撃も載せて、電源を入れたナイフを首元に交差するようにあてる。『鬼炎』に青い電流がはしる。彼はそのまま膝をついたまま動かなかった。

 「やっ、た」

 そして、そのまま未歩もその場に倒れた。

 だが、彼の目が開いた――――


 やられた。はは。終わりか。・・・・・・いや、まだだ。まだ、終わちゃいない!

 彼は立ち、腕に炎をまとわせ、周りにも火球を作ろうとする。真ん中の炎も輝きすべてを巻き込むぐらい白く輝き始め、振り下ろされそうになった時、彼に再び攻撃が当たる。そして、意識をなくし能力が解除されたのだった――――


 未歩ちゃんが強力な蹴りを入れ、迫るところを見た。強力なのを。隙を探していた。

 (このチャンスを逃してはいけない!)

簡易スナイパーライフルを組み立て、狙いを定める。合わせる。確実に。タイミングよく発射する。上手く合わさり、彼はとれたはずだったが、起きてきた。

焦らない。・・・終わらせる。

 そして、もう一射を静かに放つ――――


 目の前に広がるのは、燃えている炎の残り火、崩れた建物にがれき、何かがえぐり通った後であった。ここで激しい戦闘が行われていたのは疑いようのないことだった。今は、戦闘音はしていない。どこか遠くの方で大きな音が響ているだけである。周囲を見渡すと、人を発見した。その場に駆け寄る。こちらに、あちらに気づいたらしく、声をかけてくる。

 「あっ、和導わどうくん!」

 「佐々木さん!と・・・」

 「大丈夫、寝てるだけだよ。私も疲れちゃったから休憩」

と優しく語りかけてくる。

 その場にいたのは3人だった。柱に背を預けて座っている佐々木さん。そばで、上着を枕にして寝ている工藤さん。そして、気絶したまま拘束されている者。そう、侵入者の一人、紫炎を使ってきた人である。追いかけてきたはずだが、もう終わってたみたいだ。

 「終わったんですね」

 「うん」

 よく見ると、二人ともけがしている。

 「けがは大丈夫ですか?」

 「大丈夫、大丈夫。ほら巻いてるし」

と返される。確かに、応急処置として布がまかれている。大丈夫と言われたら、何も言えないが、応急でしかない。なるべく早く脱出した方がいいのだろうがそうもいかない。・・・・言葉を信じることにし、自身もその場に座り話を聞きながら、今お互いに持っている情報を交換した。

 「なるほど、先に戦闘していて他にも仲間がいると」

 「そうです。今のところは優がもう一人と戦っていますが、どうなるか」

 「そして、何人かもわからない」

 「はい」

 お互いに黙ってしまう。ただ考える限り、この異常を本部が気づいてないわけはないと思うが。・・・・本部が動いてるとして、間に合うだろうか。

 「う、、ん?」

すぐそばから声が聞こえた。どうやら工藤さんが起きたみたいだった。

 「やぁ」

 「んー?」

 目をこすりながらも見て、周囲を確認している。そして、ばっと起き、

 「奴は?!!!志保さん!あいつは!!!」

 「大丈夫、終わったよ」

と言いながら、そばにいる相手を指す。それを見て、気が抜けたのかまた、息を吐きながらしゃがみ込む。その後、こちらにも気づいたみたいだった。

 「?何で、輪導さんがいるっすか?」

 「ははは、は」

笑うしかなかった。さっき、佐々木さんと話していたことを話す。

 これからについて3人で話す。話をまとめるともう少し休み、他の参加者に状況を伝えること、桜城優の様子を探ることの二点に決まった。

 みんな無事でいてくれ。


 ―――力なく腕を宙に放り投げ、浮かぶ男が一人。顔は下を向き全体的に覇気がない。そして、その姿を見上げる男。

 「――もしもしー。聞こえてますか。・・・まぁ、聞こえてないか」

と一人呟く。

 これが、『最狂』ね。思っていたよりもてこずった。最終手段を使うことになるかと思ったほどである。本当、『最響』も正直強かった。”さいきょう”は全員がこうなのか。しかも、足止めが減った今どこまでもつか。ちょっとこれからの事を考えると頭痛がしそうである。だが、楽しみという感情も心のうちに湧き上がってくるのがわかった。

 ・・・・さぁ、次のフェーズにいこう。

 

 カメラの画面が死んでいき、残っているカメラは少なくなってきていた。今は、二つのカメラの映像しか映っていない。一つの画面には『最凶』と『最弱』が映っており、もう一方は『最強』『最恐』の戦闘が映っている。

 『最凶』と『最弱』の決着はついたようだった。

 カメラの画像が転送されないため、他の人たちの安否がわからない状態が続いていた。

 部屋の通信機に着信が入る。特異隊隊長だった。

 「聞こえるか、聞こえていますか」

 「聞こえてるよ、どうぞー」

 「・・・入口付近は制圧完了。細かいことは後で報告する。直近で伝えたいことは二つ。一つは一旦中に入ったが、外と連絡ができなくなっている。明らかに、妨害されている。二つ目は、入り口は入ってすぐに出入口を囲むように壁や障害物があり、すぐには進めない。今は破壊を試みている状態だ」

 「了解。また、なにかあったら連絡してくれ」

 「OK。・・・・そっちはどうだ?」

 「今は、カメラがどんどん死んでいる状態だ。全員の無事がわからない」

 「そうか。大丈夫だと信じるしかないな。あいつらもあいつらだ。各々対処してるだろう」

 「そうだな」

 「あと、もう一点。入口の監視カメラの映像から現時点での侵入者は3人だ」


 連絡が終わり、またモニターに視線をやる。

 ここで出来ることを全てやって、彼らを信じるしかないか。他のみんなも物事を進めながらモニターを見ている。顔には心配、不安といった感情が張り付いている。

 無事に解決してくれ。頼んだよ、みんな。


 そろそろ動こうかと思い始めていた時、突風が吹き周辺のがれきが崩れ、衝撃が襲ってくる。何とか耐え、皆衝撃の方向を見る。そこには、一人の男が歩いてきていた。見てすぐに分かった。だ!

 「ん?人か」

と言いながら、周囲を見渡し、『鬼炎』を見つけると、

 「そうか、やられたか」

 と声のトーンを落として言った。だが、言ったそばからケロッとした表情になりこちらを見てくる。

 「さて、どうしようか?」

とこちらに余裕があるように両手を広げて尋ねる。

 全員の頭にはてながつく。どうするとは?・・・どうゆうつもりで言っているんだ。人とも、いつでも攻撃態勢に入れるように構え直す。警戒態勢の中あいつは発言した。

 「・・・君たちには選択肢がある!一つ、降参してぼくの邪魔をしないこと。二つ、抵抗して私に叩きのめされること。もう一つ、逃げ出すこと。・・・さぁ、どれにする?」

と挑発的に動作は大きく胸に片手を置き言ってきた。

 はぁ?マジでなに言ってんの、こいつ。というか優はどうした?

 「おい、優はどうした!」

 「ん?優?・・・・誰だっけ?」

と首をひねりながら、考え込む様子を見せる。

「・・・あぁ、あれね。『最狂』ね!」

 そう言って、手をそうそうとでも言うように合わせている。ふざけるのも――――

 「どうなったと思う?」

 また挑発だ。わかっていても切れそうになる。それを、佐々木さんが手で制す。目もこちらに向け”挑発に乗らないでといってくる”。そして、小声で、

 (倒して聞けばいい)

 それにうなずき、流れを見守ることに決める。

 「ねぇ、ここで倒されるっていうことは考えないの?」

 「え?」

 「こっちは3人だけど」

 あぁーと言いながら、頷きながらこちらを見回す。

 「大丈夫だよ、だって――」

 言葉を一回止め、顔に笑みを含め言ってくる。

 「そんなことにはならないから」

 なぜそこまで言えるのか。彼ははっきりと言いきった。

 「そんなことわからないっすよ!」

 「わかるよ。君たちはぼくに勝てない。だって、君たちはじゃないんだから」

 最初はゆっくりと語りかけるように。だが、後半は堂々と手を大きく広げ、わざとらしく動作を大きく見せながら言い放つ。

 「やってみないとわからないよ」

 「いいけど、君たちもボロボロじゃない?・・・いくら、強くてもね?僕も強いよ?」

 「ふっ、やらないとわからないじゃない」

 「はぁ、抵抗を選ぶんだね。まぁ、いいけどさ」

 残念そうに言い切ると、彼の雰囲気がガラッと変わる。

 「さぁ、無駄にあがきたまえよ!!」


 二つの大きな力がぶつかりあい、衝撃で周りの物が壊れてチリとなる。がれき、粉塵が周りに舞っている。衝撃の中心地では、2人の激突が続く。片方は、光弾、凶悪なオーラを纏いながら放つ。それを、もう片方がさばきはじき返す者。2人が各々オーラを放ちながら衝突し、衝撃波を生み周囲に影響を及ぼしている。激突は物凄いスピードで移動しながら続いている。この災害みたいな戦闘が『最強』VS『最恐』である。


 「はっはは。どうだ!降参かあああ!」

 「なめてんの?これからでしょが!」

という余裕たっぷりの会話が交わされながら、バトルを続けていた。

 そうだ、そうだ!そうじゃなきゃ!!!楽しくないもんな!!気を抜けば、すぐにやられる。このヒリヒリ感!・・・まだまだ余裕はあるな。どこまで今回は引き出せるか。やれるところまで全力でやろうぜ、朱音!

 はあ、疲れるな。・・・でも、偶には全力出さないとね。こいつにだったら、どれくらい出してもいいしね。・・・和はどんな状態だろうか?


 拮抗する戦闘が続く。二人ともあったまり、これからエンジンがかかってきたとでもいうかのように威力、速さが上がっていく。中々、決定的な隙がお互いにできない。

 激しい戦闘のさなかデカい気配を感じた。いったい何だ?感じたが、消えた。・・・一体?

 「何、ぼっーとしてんだ!!!!」

 思いきりのいい蹴りが入る。防げているが、蹴りの勢いを殺しきれず一緒に落ちていく―――


 

 土煙が晴れ、視界が良好になる。その場には一人しか立っていなかった。他の人達は倒された。一人は、地面に。一人は、壁に。一人は、がれきの中に。

 一瞬の出来事だった。3人でそれぞれあいつに攻撃を仕掛けようとした。それを片手を溜めてから右から左に大きく振っただけ。それだけで衝撃が襲い。気づいたら、地面に倒れていた。

 「ふー、終わったか」

 周囲の人達はかすかに動いてはいる。生きている。別に今は殺したいわけでない。さて、次。立ち去ろうとしたとき、かすかに声が聞こえる。

 「・・・・・ま、て」

 男が一人立ってきた。武具の棒を地面に突き刺して立っている。ボロボロに見えるというのにどこから力が出ているのか。

 「もう、休んだら?目的達成までそうしてろよ」

 「そう、はいくか」

 そうだ。ダメだ。ほかの二人は連戦で体力削ってるんだ。俺が一番動けるはずだ。

 「大丈夫だよ。ここで倒れても。お前が弱いんじゃない。俺が強すぎるんだ」

 「て、め」

 もう一度吹き飛ばそうと、手をかざす。あちらも構え身構えた時だった。別の方向から何かがきて再び土煙が舞った。土煙が晴れてそこにいたのは――


 『最凶』の御剣京介だった。

 御剣はこちらに視線を向けると、

 「ん?お前誰だ」

と放つ。

 はぁー、まじか。ここで『最凶』ですか。

 「で?だれ?っていうかどういう状態?」

 言葉を交わす前に攻撃を放つが、先程まで居た場所にいない。

 「・・・・」

後ろに回られていた。いつのまに。御剣は周囲と話をしている。もう一度!!

 黒い膜のようなものが大きく丸く渦巻き攻撃を防いだ。

 「他の人を連れて、取り敢えず避難を」

 「・・・っっ。はい」

 悔しいが仕方ない。今ここにいても、邪魔になるだけだ。

 膜が晴れ、振り返り御剣は言う。

 「さて、やろうか」


 衝突音が響く。黒い電撃、斬撃が飛ぶが相手に届く前に何かに相殺される。そして、爆発も各所で起きている。

 衝撃波?念力みたいなものか。そして、軽い爆発。といっても火という感じでない。軽く牽制程度にこちらも攻撃を放っているが、相殺してくる。どうするか。一気に溜めて当たればいいんだが。体にまといながら攻勢に出ているが蹴りも腕を組まれ直接の攻撃にはならない。全く、和とは別の意味で嫌な感じだ。

 『最凶』の攻撃を何とか直撃を避けているが、安心できないな。様子見なのがわかる。当たればラッキーッぐらいに思っているのだろう。ここでぶつかり合ってもいいが、どうせだ。もいるし、こちらは目的に移動させてもらおう。


 片手に力を溜めながら、相手に近づくが足のない人型の何かに邪魔される。そいつに攻撃するが、ほとんどすり抜ける。はぁ???

 「凶星<槍>」

 片手に力を溜め、溜め槍上に固めたものにさらに渦巻かせ放つ。何かにあたり、腹をぶち抜いた。さてこれは、どうなるか。再生しようとしているが、にぶそうに見える。そこに力をこめて、雷撃をまとわせくらわせてみる。ぼろぼろになり消えた。相手の方を見ると、こちらを見ながら笑っていた。距離を詰めようと足を進めようとする。

 「・・・・来い。――――」

 近づいた時、上から降ってきた。ちっ、新手か。舞った土煙が消えそこに現れたのは、、、、――――


 仮面をつけた男がこちらをジロッとでもいうように睨みながら立っている。あれは・・・・

 「ゆ、優?!!」

輪導の驚きの声を聞いても反応がない。ただ、視線を向けるだけである。

 「はっははっは」

敵が笑い声をあげ、こちらを見渡す。笑い終え、息を整えると、

 「じゃあ、『最狂』。あとはよろしく」

と声をかけ、俺たちに向けて

 「仲間?まぁ、知り合い同士争い、頑張ってな」

と言い捨てた。

 「ま、まて」

声も無視し、奴は飛びどこかに向かう。追いかけようとするが、『最狂』が道を防ぐ。やるしかないか。

 お互いに構える。

 「優!!!!」

 声をかけるが、腕を振り抜き衝撃波が向かってきた。吹き飛ばされる。地面に転がるが、武具を突きつけ近くまで行こうとする。

 飛び、左脚思い切り横に振り蹴りを入れる。それを、腕を立てガードする。それぞれがぶつかり衝撃が周辺に伝わりがれき、土煙が舞う。

 激しくぶつかり合い、攻防の移り変わりが激しい。お互いに力を乗せ

蹴り、拳、ガードと目まぐるしく攻防がかわっている。

 御剣が一瞬の隙をつき、能力で壁みたいに地面に刺し、二人の間に距離が空く。そして、そこに速い蹴りを入れることで、相手を飛ばす。

 「・・あぁ」

 「おい!」

いつの間にか近くに来ており、声を掛けられ驚く。

 「一旦、あいつはおれが預かる。倒す、いや、気絶でもさせて無力化を図る。だから、他をよろしく頼みたい」

 「いや、でも!」

 「いや、ここで消耗するより、あっちに増援を。まさか、あの二人が負けるとは思えないが、勝算もなしに行かないだろう?」

 「そうですが、もしかしたら、俺の能力で優を!!」

 「確実にできると言い切れるか?」

 「い、いえ」

 「なら、これでいいだろう。余裕があったら誰かに使ってくれ。本当なら能力停止の腕輪が動いていいはずなのに動かないということは、本部もすべてを把握してるとは思えない」

 「確かに。わかりました」

そう言い、次の行動に移ろうとした時だった。

 「あっ!そうだ。和を見つけたら、和に能力を使うといいかもしれない。わかる?藤井和」

 「わかります。あいつらに会う前に戦闘をしてたので」

 「それなら、大丈夫だね。もしかしたら、和の能力があいつには一番有効かもしれない。・・・・あとは任せた」

 「えぇ、任されました」

そして、御剣は優のもとへと能力をまとって飛び、俺は他の人達のところへと向かったのだった。



――――モニター画面に映ている一人の男。こちらを向き、わざとらしく片手を胸にあて、もう一方の手を大きく動かし、お辞儀をしている。まるで、何かのショーの主催者みたいである。

 本当にこいつは誰なんだ。侵入者の一人ということはわかる。情報が少ない。他の参加者がどういう状態かは今のところ分からない。信じるしかできない。もしもの時は...

 いや、考えるのをやめよう。部隊も行っている。他の参加者たちもきっと無事だ。信じて待とう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る