さいきょうの付き添い達
「大丈夫か?」
「あぁ。そろそろ動かないとね」
『最強』と『最恐』が出会い、戦闘に入る少し前――――
そのような会話が交わされていた。
「無理しすぎるな。あそこまで、力を引き出したんだ。・・・・そんなに強かったか?」
「うーん、そうだね。強かったよ。さすが弟子と思ったし、、、、」
と言って、言葉をやめる優。
「どうした?」と聞くと、「いや、なんでも。もう少し続けてたら、わからなかったかもねー」と流された。確かに、近くで見ていて思った感想は予想と違うである。途中から彼の何かが変わったが正直な感想であった。まるで、今までは入ってなかったギアがはいるように。
いったい何だったのかと、考えにふけっていると、遠くの方から音がした。先ほどからいくつも響ていたが一体?
「すごいね。大暴れだ。誰と誰がやってんだか」
そう言うと、「さすがに、休みすぎかな」と言いながら立ち上がる優。
そんな時、気配がした。
「・・・・どちら様で?」
気配の主はフードを目深にかぶった二人組であり、明らかに、関係者でないことが服装からもわかる。
「二人ですね」
「・・・・『最狂』のペアだ」
「で、どちらさま?関係者ではないだろ?」
「そうだな。・・・挨拶は必要かな?」
というと、一人がこちらに片手を向ける。すると、
「危ない!」
と言って、優が俺を突き飛ばす。そして、優はその場から、飛んだ。が、すぐに体勢を整える。
「さすが、『最狂』。勘もさることながら、頑丈さもさすが!」
こちらに攻撃した相手は愉快そうにいい、
「ぼく、いやこういう時は、私かな。私が相手しますよ、『最狂』」
とフードをとり一礼してくる男。
「じゃあ、こっちは俺ですね」
攻撃を避けながら、能力を探る。見えない攻撃。理屈はわからない、だが気配は感じる。衝撃、拘束。力で取れるがいいがなんだこれ。
「ははは。いいですね。避けますね。でも、攻撃しないと勝てませんよ!」
「わかってるよ」
優の姿を横目にこちらも炎を避けていた。こっちはまだ目で見える。武器を組み立て、1本の棒を組み上げる。紫の炎を防ぎながら近づいていく。相手も炎や体を使いながら、こちらの突きを躱したり、攻撃を仕掛けてくる。
とりあえずこのまま押し通す!
相手が手を前に突き出し、一気に噴射してきた。体を後ろに背け何とか躱す。
「やっぱり、簡単にやらてはくれないか」
「そうはいかねぇよ。・・・・なんで関係者全員厄介なのでしょう!」
相手はそう言い炎で周りを囲うように広げる。やっば、柵になったな。円状の炎の枠の中に二人になる。・・・・引き離された、か。
「こっちは大丈夫だ。そっちは任せたぞ、修!」
「あぁ!!」
一進一退の攻防を続ける。武器も取り出し、切りかかるが、目の前で止められる。
「おらぁ!!!!」
剣が振り下ろされ、相手は後ずさる。
「・・・今のは危なかった」
桜城はもう一切りと踏み込む。それを体を後ろにそらせて避け、攻撃を仕掛ける。攻撃はうまく当たり、距離をあけれた。
・・・情報では仮面をかぶったらやばいという話だったが、仮面しなくても強いし、武器も使える。情報とのずれを感じる。まぁ、そういうのを調整していくのが戦闘だろうけどさ。・・・こっちも出し惜しみしてられない、か。
炎で作られた円の中で、攻撃をしあう。紫の炎を纏い、放ち、迫る。相手が蹴りを仕掛けてくる。棒状の武器を縦にし防ぐ。炎も上からも降ってくる。それを、バックステップでよけ、隙を捜して、突く。避け辛い箇所を狙っているはずだが、相手もよけ反撃を仕掛けてくる。この状態がずっと続いている。どうにかこの膠着状態を壊さなくては。
そう思っていたところに、優が炎の枠を突き破り飛んできた。そのまま、反対方向に飛んで行く。えっ?
「・・・先に行っていいぞ。こっちは僕が持つ」
「了解」
炎をかき分け、もう一人が言ってくる。
「通すとでも・・・」
「通せよ、邪魔するな」
冷たい声で遮られ、構え直す前に体が下に押さえつけられる。なんだこれ?くっそ、強い。体勢が直せない。
押さえらている間に、紫炎を繰り出していた方が走り去っていく。
「くっそ!」
「口が悪いのでは?・・・・せっかくだから、この炎も利用するとするか」
そう煽るように言い冷静に見回すと、手を振り、周りの炎が二つの人一人分ぐらいの大きさの球体にまとまる。
「・・・何、焦ってんの?」
仮面をかぶった姿で優が歩いてくる。
「焦ってないよ、ぼくひとりで十分だと判断しただけだよ」
「へー、まぁいいけど。・・・・猫かぶれてないよ、余裕はどこにいったのかな?」
「はっ!必要ないだけさ。・・・そちらも仮面まで被ってどっちが焦っているのやら」
「はっ!・・・いいの?2対1で?」
「実際、2対1ではない」
「1対1ってか。なめてるな?」
「いや、、、、、」
敵はそう言い、両手を広げ言い放つ。
「5対1さ!」
黒色の人型の何かがぬっと出てきた。
「さぁさぁ!」
桜城は謎の人型からの攻撃を避けていた。黒い人型は色はボヤっとしている感じがあるのに対し動きは見た目よりも素早い。目がぼうっと光っており、足はなく浮いている。
反撃をするが一瞬ひるんだかのように相手は引きはするが消滅することなく向かってきて、完全に効いてるように見えない。何とか振り払っているが正しい。8本の腕で繰り出される攻撃、その間に炎も降ってくる。避けるのにも神経を使う。炎に至っては軌道まで曲がるというおまけつきである。
「はぁはぁ」
攻撃を当てても効いてるように見えない。貫通しても元通り。勢い良く切ってもしばらく動きが止まるだけ。相手の攻撃は止まない。速さは大丈夫だが、どうするか。もっと力を振り絞れば消せるか?
ブーメランに切っ先が当たるが体を裂けても修復される。そればかりか、衝撃波まであいつはこちらに飛ばしてくる。くそ。まだ種明かししてねぇのに。
優が苦戦してるところを見てることしかできない。あいつには、数にも数えられていない。押さえつけられていて、立てない。いや、頑張れ!ここで立たなくてどうする!
(ん?)
足元にわずかだが、先ほどよりも力が入る。まさか。いや、気合いだ!
静かに、ゆっくりと力に逆らうように立つ。あいつはこちらに一瞥もくれずに優だけ見ている。今だ―――
ただ静かに相手に攻撃の視点を定め、進む。肩で息をしながらも、脇腹めがけ左斜め上に武器を振り上げるが・・・。風を切る音だけがした。驚いた表情をしていたが、口端をあげる。
「まさか、破るとは」
と楽しそうに言う。
武器の先端は体には当たらず、直前で何かに防がれている。とういうより、押し返されようとしているが妥当だろうか。「念のために、・・・・良かった」みたいな声がひそかに聞こえるが、関係ない。なら突き破る!
手をかざしてくるが、素早く動き、突きや薙ぎを先ほどとは違う方向から仕掛ける。振る、振る、振り下ろし、上げて、突き、フェイント、下ろし、上げ、手元で回し横から薙ぐ。動きを止めずに、また、左斜めに振り下ろし回転も含め、上げ、払い突き、下げ、振り、振り、突き――
相手の右頬があったところに突きが通り、髪をかき分ける。顔を左に傾けることで直撃は避けていた。時が止まった気がした。ただ、少しの間動きが二人とも止まっただけ。だが、最初に動いたのは、修ではなかった――――
屈み、姿勢を低くし片手を腰付近に添えられる。気づいた時には吹き飛ばされていた。その場に立ち上がり相手の方を見据えると、こちらに、軽く放つようなしぐさをし、衝撃の風が襲う。とっさに武具を地面にさし両足に力を入れ身構える。だが、足は浮きそうになり、力もなくしゃがんでしまう。何とか耐えるが、もう一度強さが上がって襲ってくる。足元が完全に浮く。その隙は見逃されず、まるで流されるかのように近くまで接近され膝蹴りをくらう。
「かはっ。。。。」
「―――」
ただ淡々と、回し蹴りが入り、ぐらついてるところに衝撃で上に浮く。
ただ、人が落ちる音がその場に響く。
「修!!」
地面にうつぶせになり、倒れる。
助けに行こうにも、進行方向を防がれる。
相手は、こちらを見ることなく修を見下ろしている。・・・・落ち着け。今のうちに考えろ。何とかして、一矢報いる方法を。倒しきる方法を。大丈夫、修はまだ生きてる。
「まさか、ここまであなたがやるとは思いませんでしたよ。軽い防壁を破るとは。・・・・やっぱり、簡単にはいかないし、ただ者じゃないってことか」
声が聞こえる。今すぐ起き上がれるわけではないが、うきうきしたかのような声とただ物事を冷静に見てるだけの声。あぁ、くそついぞ届かなっかたか。・・・・優。
グローブを形づくり力をこめる。あちらも一体が殴ってきており、それを、体をひねり拳で返す。拳と拳がぶつかりはじき返すことができた。相手は後ろに浮きこちらにまた向かってこようとする。攻撃を色々と試していく。まるで、先ほどの再現というやつもいるだろう。
「・・・・・・」
その姿を黙って見続ける侵入者。先ほどから『最狂』の動きが変わってきてる気がする。明らかに、形代に対しての戦い方を体感しものにしようとしている。
ふー。心の中でため息をつく。また、勝負の流れが変わった。
黒い人型に近いものの攻撃を捌き、蹴散らしながら、相手の近くを素早く通り抜け修を奪還する。
「大丈夫か、修!」
「あぁ。・・・・強いな」
「あぁ」
修は手を背中に置いてくる。そして、
「使うぞ」
「お願いしようかな」
桜城優の背が修が手を置いたところから光に包まれて――――
炎の勢いが減り、当たりの視界が開かれる。何とか、直撃を避けた形になる。
「・・・・一筋縄ではいかないか」
「急になにをするんっスか!!」
相手の頬のすぐ横を弾が掠り、フードの端が破れる。
「危ないなー」
「お互い様でしょ!」
「そうっすよ」
弾の方向を見ると、志保さんが銃を構えていた。こっちも銃を構え他の武器もいつでも取れるように心を締め直す。
「また、電撃銃」
「また?」
「というより、あなたは誰?」
いぶかしむような疑問も無視し、相手はフードを取り素顔を見せる。知らない顔である。顔には幼さが残りながらも目にかかるかどうかまでの長さの前髪に紫のメッシュが一部に入っている。耳には金の円のイヤリングがちらりと光る。
こちらを見て、ふっと口角を上げると、
「『鬼炎』」
それだけ、言うとすぐに紫炎を放ってくる。
炎は地面をなぞりながら向かってくる。直撃を避けても、周りに広がり燃えている。
「・・・近づきづらいっすね」
「うん」
そんなことをつぶやいてるときも、横を炎が通る。志保さんが撃ち、うちが何とか近づき、近接を仕掛ける。こちらの武器はナイフ型。切るというナイフの機能以外にスイッチを押せば電流が流れるようになっている。切れ味、打撃と電撃の三段構えができる代物である。
切りかかるが、相手はその攻撃をいなしてくる。勢いを利用し腰を回して振り払おうとすると肘を抑えられて勢いが死ぬ。そして、隙を作らず足をひっかけて転ばせてくる。やばっと、思ったら、電撃が上を通り、それを避けるためにうちから離れていった。隙を逃さず、その場から離脱する。
「ありがとうございます」
「気にしないで。・・・・それよりも」
「えぇ、そうっすね。中、遠距離系かと思ったら近接もできるっていう....」
「そうね。やっぱりって感じはするけど」
「はい」
相手はこちらを見ながら、警戒しため息をついていた。
「やっぱり、”さいきょう”以外も強いんだよなー」
やっぱり?さいきょう以外?この発言からも情報が絞れる。今どんな状態で誰がいるのかを知っているということだろう。そのうえで攻めてきたということか。
相手はどうしようかなとつぶやきながら、頭をかいている。
攻撃にこちらが踏み出そうとした時、急に上を見上げこちらに視線を定め、にっと笑い構えた。こちらも踏み出しから警戒へ。敵の周りに不穏な空気と紫炎が少しずつ集まっていく。敵を中心に渦が巻いて大きくなっていき、激しさを増す。風がここまで吹き付けてくる。
「くっ!!」
「うわっ!!」
吹き飛ばされないように足に力を入れる。周りの渦が勢い良く散った。そこに立っていた奴の顔には右上に短いつのが右斜めに生えていた。つのはカーブを軽く描き白を基本とし薄く紫が輝き怪しい雰囲気を醸し出している。目元にも紫色のひびみたいな線が入っており目も怪しく輝いているように見える。そして、
「何かされる前につぶす」
と発言し、目の前に炎をまとって移動していた。
そして、腕と炎を大きく振ってきたのだった――――
「なー、久住。頼みがある」
「聞きますよ。なんとなくわかりますし」
そう言われて、笑ってしまう。そーだよな。地面に寝転がりながら、体を大の字にして納得する。
「連れてっくれ、奴のところまで」
「えぇ、一緒に行きますよ」
体を葉に肩を貸してもらって、起き上がる。
「狩野さんは先に行ってますから」
「OK、追いつこうか」
息つかない攻防がしばらく続き、一瞬の隙を見て、腹に強い一撃が入る。
お腹を強く殴られ、意識が遠くなっていく。倒れそうな体を支えられた。そこで意識は途絶えた。
やっと、いいのが入った。ここで藤井和は気絶した。気絶と同時に、変わった雰囲気が切れたみたいに消えた。体を支え、地面に優しく下ろす。彼を見ながら思う。正直なめていた。もっと簡単に倒せて楽だと思っていたのだ。ここまでやるとは思っても見なかった。
本人すらここまでできると思ってなかった可能性があるのか。最初の姿を思い出して苦笑する。途中の雰囲気と大違いである。彼は穏やかに眠っている。鍛えらえた結果が出たのか、自分でも知らないぐらいの威力で能力を無意識に使っていたのか。考えようと思えば、色々考察ができる。
とりあえず、そのままにしておくのもあれなので、上着をかけて崩れそうなところから安定したところに移す。
「さて、どこに行くか」
戦闘中はあまり気にならなかったが、大きな気配と音があっちこっちで感じる。
「・・・無事だよな」
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