合流、そして――

 ビル内が破壊され崩れる音が、外にも響きわたる。だが、ビル内から人が出てくる気配はない。後ろから、人の足音が近づいてきた。

 「お、おー。派手にやってるっスねー」

元気のいい声が聞こえ、振り返るとそこにはスーツ姿の黒髪を後ろに1本に結んだ女性が立っていた。こちらの視線に気づくと、

 「どうもー、『最強』さん!!」

と笑顔で元気に挨拶してきた。


 ――ビル内

 「――――」

 がれきが音をたてながら崩れて落ちている。がれきの山が動き、がれきをどかし動く男が一人。『最凶』の御剣京介である。

 ひどい惨状である。一つのフロアをくり抜いてるのだから無理もない。能力で防いだから自分は平気だ。結構崩れたなぁ。あいつは大丈夫か?埃をはたきながら周りを見渡すががれきしか見えない。埋まっているのか。死んでないよな。命の危険がある場合、緊急装置が作動すると聞いているが。

 その時、離れたがれきの山の下の方で音がした。まじか。がれきからもう一人出てくる。

 「はぁ、はぁ。・・・やばかった。マジでやばかった」

 「はは、はどうやって助かったんだよ」

とあきれたような安心したような声が聞こえる。

 見るからに傷がほぼなかった。返ってきたのは、必死になった後の疲れ切った声だった。

 「・・・よくわからない。もう必死だよ。ひっし」

姿勢を低くし、肩で息をしながら睨みつけて言ってくる。ははは、まだ元気そうじゃないか。・・・鍛えられかたが違うのかな、笑。さすが『最強』である。

 息をつき、周りを確認すると構え直す。さすが。まだ、完全には士気が下がってないらしい。それを見て、こちらも能力の準備を整える。手に込め、足に込め体に宿し周囲からにじみ出て漂い始める。自然と口元が上がっていた。


 「・・ん?やる?」

 「いえいえ。そんなつもりはないっすよ」

聞くと、手を前に出してないないとでも言うように振っている。別にこちらは戦闘初めても良かったんだけども。

 「ペアの様子を見に来たんですよ。こっちに反応があったので」

 「なるほど」

彼女は、あいずちを返すと、「そうなんっすよー」と話を続ける。最初、行動について大体決めたら勝手にどっか相方が行ったこと。打ち合わせで聞いてたけど、合流しようとしたら、また位置が大きく変わってたこと、大変大変と笑いながら話してくれる。明るい女性である。

 「だから、今は戦う気はないです」

 「そう?・・・私は戦ってもいいよ」

 「いやいや!意地悪いわなくださいよ~」

 笑い終わった後に、一息入れて聞いてきた。

 「で、うちのペアの『最凶』はビル内ですか?」

 「そう。うちのペアと一緒にね」

 なるほど。『最強』のペアね。確か・・・・『最弱』の、、、、。

 話していると、急にビルの中からすごい音が響き渡った。窓は割れ、入り口からは土煙が噴き出る。え、なにごと!?二人ともビルの出入り口に注目する。

 しばらくして人が飛び出してくる。飛び出した人は、地面に転がっていくがすぐに立ち上がりその場から避ける。すぐにいた場所に帯状から放たれた斬撃が通り地面がえぐれる。ビルの中からもう一人出てくる。

 「あっはは。しぶとい。ねー、朱音さんしぶといんですけど。強いんですけどー」

 「そうでしょ、そうでしょう」

 朱音さんは、自慢げにうなづいている。その姿を見て、はぁと小さく息をつき相手に視線を定める。さて、どうやって、終わらせる?というところに考えの視点が定まってくる。きっとお互いに同じことを考えているに違いない。あちらもまだまだ目が諦めてない。・・・ん?一人、人が増えてることに気づく。

 「あれ?いつの間に来たの、未歩さん」

 「いつのまに?じゃないっすよ。先走って!」

 「いやいや」

 「ほめてねーっすよ」

朱音さんの隣に居るスーツ姿の女性。それは、僕のペアである工藤未歩くどうみほである。・・・・文句を言い続けている。まぁ、ペアを置いて先に行動をとったのは僕ではある。まぁ、いつものことだからか、しょうがないなぁというニュアンスを含みながらも続けている。

 顔の横をこぶしが通る。次に蹴り。受け止める。

 「すみません、話し中でしたか?」

 「いや、別にいいよ。こっちが先に脱線したんだ」

 さぁ、行くぞと言わんばかりに和は吹き飛ばされる。向かった先にも攻撃が続く。

 斬撃、串刺し、帯状の攻撃と多彩だ。攻め方が豊富だことで。速さも落ちない。また、防ぐだけで精一杯になる。


 二人が目の前から去って、朱音さんに聞いてみる。

 「私が言うのもなんですが、大丈夫なんですか?相手、あれですよ」

 言い淀んでることからも、質問の意図は伝わる。私が戦闘に出なくて大丈夫か?死んでしまわないかということだろう。

 「大丈夫」

 自信に満ちた目と声で返される。なら、大丈夫なのだろう。確かに、想像していたよりも実力が拮抗してるように見える。

 返事を聞いた後、何を話そうか考えていると、大きな気配が近づいてる気がした。

 「・・・くるね」

と静かに朱音さんが言う。何がと聞き返したいところだが、この気配を出せる者には覚えがある。

 「『最恐』か…」


 上から、何かが落ちてくる。いや、落ちるというよりは着地だった。

 「・・・ふー」

『最恐』の東雲景しののめけいである。東雲は背を伸ばしながら、あたりを見まわしている。

 「なるほどな」

と言った後口の端を上げ、

 「俺とお前がやればちょうどいいか?」

と挑発的に言ってきた。


 『最強』と『最恐』の戦闘が始まる。衝突だけで衝撃波が生まれ、周囲にまっすぐに立つのが難しい。ぶつかる音が聞こえるが姿が見えても動きがすべてを把握することができない。

 「あいかわらず、レベルがちがうなぁ」

独り言をこぼしながら、少し離れて見る。本当に…あれだなと思える。

 戦闘開始直前に朱音さんは、

 「・・・ちょっと、離れてて」

と言い、片手を軽く上げ振りながら、

 「行ってくるわ~」

と気軽に言い放って戦闘に向かった。人がいいというか、気さくというか、何というか。思わず、先ほどのやり取りを思い出して、笑ってしまう。さて、うちはうちで考えないと。


 二人の戦闘が激化していき、近くのビルも巻き込み進んで行く。近くの住宅街エリアにも影響が出始め、離れたなと感じ始めたころ。

 「やぁ、お疲れ様」

後ろから声をかけられた。そこには、スーツ姿の色素が薄い茶髪のショートカットの女性が立っており、左耳についたイヤリングを揺らしながら片手をあげていた。

 「志保さん!」

 佐々木志保ささきしほであった。志保さんは、『最恐』のペアである。お互いに組織に所属していて知り合いでもある。優しくて良くしてもらっている。

 「はあっちか」

あれあつかいに笑ってしまう。

 「あれってー」

 「だって、聞いてよ!!好き放題よ!・・・あのチビ!」

 本人がいないところで、言いたい放題だな。まぁ、本人がいても言うか。お互いに、いや、志保さんの方が大変だなと感じながら話を聞く。


 「はっは。二人だけか」

 話を聞き終え、お互いの現状の話をしていたところにまた声がかけられる。声の主の方を見ると、知らないフードをかぶった男が立っている。そして、手には紫の炎が漂っていた。

 「うーん、美人さんが二人。・・・・スーツか」

 「・・・・あなたは何者?」

 「何者か、か」

考え込むように首をひねっている。明らかに参加者でなく、よそ者であることはわかっている。何も聞いてないし、放送もなし。トラブルが起きていることは明白であった。

 「そうだなぁ。・・・・とりあえず燃えろ」

そう言うと、炎が目の前に――――

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