響く不協和音

 「あれ?」

 試験が始まり、約一時間がたち折り返し地点かなと考えらえていたころ。モニタールームにて、モニターの操作をしていた職員から声が上がる。

 「どうした?」

他の職員が注目が集まる中、その職員は言う。

 「何個かのカメラが機能してない」

と言った。画面が映り変わり、黒く映像を映していなかった。そして、すぐに警報がなる。

 「どうした!」

と特異隊の隊長が聞く。

 「どうやら、侵入者のようです。敷地内で暴れているようです。警備の者でも、厳しいとのこと」

 「隊長!エリア内にいる隊員連絡を取ろうとしてますがとれません!」

 「隊員のカメラも機能してません!」

オペレーター達の声が響き渡る。そして、主任が口を開く。

 「オーケー、オーケー。皆落ち着こう。オペレーターたちは、現状を確認。研究者たちも資料などできる限り確認。後は、隊長頼んでいい?」

 「了解。大丈夫だ。外と中の指揮をとり現状を確認する」

 「サンキュ。じゃあみんなそれぞれ動き出そう!」

 「「「はい!」」」

声がそろう。すごい、一気にまとまった。さすが主任である。主任の言葉で冷静さを取り戻した。

 そして、指示を受けてそれぞれが動き出す――

 

 『最弱』の藤井和と『最狂』の桜城優が戦闘が始まるちょっと前――

 扉と都市の間の荒野のところにいる二人組。

 「はぁぁぁ。やる気起きねー」

 「でも、そろそろ動かないと。・・・怒られますよ」

 「そうだよねー」

重い腰を上げようとするがやめる。

 「なんだ?君たちは招かれざる客かな?」

先輩が急にそんなことを言い出す。どうしたのだろうか。あまりに動きたくなくてそんなことを言い出したのだろうか。

 「どうしてわかったのかなぁ?後ろ向きなのに」

すると、岩陰からフードを目深にかぶった三人組が現れた。どうやら、参加者ではない。先輩すげぇ、と思いながら、銃を構える。

 「まぁまぁ、聞いてくれない?」

 「嫌だけど。・・・部外者でしょ?・・・大人しくつかまってくれるの?」

 「いや、それはー」

とリーダー核なのか受け答えしている人物が困ったように笑う。

 何かを先輩が発言しようとしたとき、急に左側にいた一人が動き出し、紫色の炎が目の前に広がった――


 「で?状況は」

 「はい。現在動ける隊員を集めています。警備の者と協力して侵入者を撃退する者。他の者は玄関に集合をかけています」

 「OK。侵入者鎮圧の人手は?」

 「足りているようで、もうすぐ鎮圧できるかと」

 「了解。一人、二人念のため回しておいて」

 「了解です」

 現状を確認しながら、正面入口に足を向ける。一体何が起きてるのか。本部を襲撃なんて、大胆なことを。というよりもどうやって。今の今まで騒ぎにならなかったのか。それに、エリアの中でも非常事態が起きているのも確実と。

 正面ロータリーに着き、隊員たちをみる。この短時間で良く集まってくれたと思う。

 「皆、良く集まってくれた。緊急事態が起こっている。だが、詳しい現状はまだ何もわかっていない。気を抜かず作戦に当たるように!!」

 「「「はい!!」」」

 そして、役割を分けエリアに出発する。

 さて、鬼が出るか蛇が出るか。


 「・・・狩野かりの先輩、緊急信号が来てます!」

 「え?まじ?」

 「はい」

と真剣に告げる。

 「よし、急ぐか」

 僕たちは参加者とは別でエリア内に入り、緊急時に備えたり、戦闘観察を行ったりするのが目的である。参加者の中には隊員もいる。あのペア以外にも関係者はいる。そして、隊員、職員同士は位置を知れ、緊急時には連絡・位置を発信できるようになっている。そして先ほど起こってほしくなかった緊急信号がきたのである。ある程度の参加者の場所は役割的にも僕たちはわかっている。緊急信号が出ているところは周りにははいなかった。

 狩野先輩と一緒に発信場所に急いで向かう――

 

 入口に着く。そこには、門番がいて特に扉などには一見問題は見られなかった。機械トラブルの可能性もと思い始める。

 「・・・連絡は?」

 「ないです・・・・」

ずっと中の隊員達との連絡を試みていた。カメラなどとは別の回線の無線を使っているため機械トラブルだとしても無線のみは使えるはず。さすがに、同時不具合は都合がよすぎる気がする。何かトラブルが起きたのは明白である。

 門番に話を聞くために近づく。

 「特異隊だ。少し聞きたいんだが、何か中で変わったこと、もしくはここで変わったことはなかった?」

 「いえ、なかったです」

 「・・・小さなことでいいんだ。何か気づいたことは?」

 「いえ、なにも」

と何も感情が変わらず答える。何かがおかしい。

 「・・・異常が起きたらしい。中に入らせてもらっても?」

 「駄目です」

 「これは捜査であり、上の許可もある」

と言ってみる。だが、

 「駄目です」

 普通は最初ので大丈夫なのだがやはりおかしい。門の警備の人達の目がまともではなく、目が座っており、返事もどこか気が抜け無機質である。どこか遠くを見ているようで、こちらを見てない。構える合図を後ろにだす。

 「・・・通してもらわないと、こちらも困るんだが」

というと、門番の二人がそれぞれ武器を構えてきた。

 後ろでも構える音がする。

 「ここは通せません。ドオシテも通るなら、力ヅクでと、めます」

 「そうか、残念だ」

 戦闘に入ろうとしたとき、上から何かが降ってきた――――


 モニタールームに電話の着信音が響く。

 「はい、こちらモニタールーム」

 「お、九ノ瀬がでたか」

 「おー、隊長。どんな感じ?」

 「・・・今門の前で足止めくらってた。・・・・門番と何かが襲ってきて」

 黙って続きを聞く。

 「おそらく、施設内で暴れていたやつと同じだろうとは思う。・・・門番の方は操られてたな。気絶させた後、何か出た気がするし。・・・今は普通で眠ってる」

 「了解。気をつけてな」

 「あぁ。そっちはどんな感じだ?」

 「こっちは、復旧を試みてるが何台かはダメだな。映ったままのもあって完全に見失ったわけではない。おそらく何台かは通信障害じゃなくて壊されてるってよ」

 「了解。確実かな侵入者」

 「確実だろうな。場所と時間が合わないし。・・・一番いいのは参加者が壊しただが、そっちの様子からして何かあったのが確実だろうな」

 「今から、行ってくるよ」

 「了解」

 電話が切れ、指令室内を一瞥する。そして、別のところにかける。

 「もしもし、司令?」


 荒野の中腹あたり、信号があった場所についてみると静かなものだった。砂地、岩だけでなく、紫色の火があちこちに飛び火し燃えている。他にはコンクリートらしきものが散らばっている。戦闘があったのは見て明らかである。

 「狩野先輩、これは」

 「あぁ」

 血も少し砂に滲んでいるのが見える。二人は無事だろうか。少しいった先の砂山を超えると人影があった。一人は砂に埋まっている。もう一人がその横で砂からかきだしながら、声をかけている。

 「大丈夫か!」

 砂山を下り近づく。

 「・・・あぁ、だ、だいじょうぶ」

と声をがらがらにも手を挙げて答えてくれる。

 「狩野さん!久世も!」

 「おっす!来たぞ大丈夫か?」

 「ぼくは大丈夫。だけど、望月さんが!!」

 「こっちも、だ、だいーじょうぶ。しんでなーい、しんでなーい」

 「ぼくをかばって」

落ち着かせて、二人から話を聞くことにする。

 「それで、何があった?」

 

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