”きょう”と名のつく者たち

 蹴りを入れた人は上に飛び、二人に向き合う位置に着地する。三人はにらみ合いながら、その場から動こうとしない。お互いに警戒しあってる状態である。

 「はっ!お前もきたか」

 「さーて、やり合いますか」

 「いや、確かに狙ってきましたけど。二人とも派手にやりすぎでは??」

三人はいつでも攻撃に入れる体勢で各々気軽に話し出す。

 「いや?そんなこと無いだろ。なぁ、獅子ヶ原ししがはら?」

 「いつも通りでしょ。・・・あと藤井な、チビ」

 「あ?」

 「あ??」

 またけんか口調で言い合っている。それでも、お互い戦闘準備は解いていない。

 師匠は、力が周りに幕を張るように、立ち上っているのが見える。ちびとあおられているほうは、手のこぶしに紫、黒色を基本とした禍々しい力が集まっているし、乱入してきた人は、手と足に黒を基本とした力が渦巻いていた。三人とも、動かずただただにらみ合っていた。

 動きがあったのは一瞬だった。いきなりすごい風が吹き荒れ、襲ってくる。

 息を吞むような緊張感が漂っていて空気が重く感じ、いつ何が起こるのかハラハラしていたら、いきなり、三人が消え衝撃がきたのだ。

 やばい、飛ぶ。体が浮いた。力を入れ、足と手をなんとか地面に付け耐える。やばい、やばい。なにこれ、ねぇ、なにこれ。風の衝撃は一回でなく、何回もくる。周りの壁も、地面も削れていく。前を向こうとするが、無理である。いったいどんな力でぶつかってるんだ、こんな細い道で!!何とか、顔を上げ前を向くがが三人の動きが見えず、あちこちでぶつかり、それにより衝撃波ができ襲ってくる。

 お互いの攻撃の色が交わり散っているのだけがわかり、細かい動きまではわからない。隣にいた人も何とか地面にしがみついている。

 音もすごい。何だ。・・・移動音?それとも、攻撃音?普段ならきかないようなありえないぐらいの音があちこちでしている。

 そして、一回止まる。急に静かになり不気味に感じる。三人はすぐ目の前にいなかった。顔を上げようとすると、いつの間にか師匠が近くに来ていた。

 「ちょっと、頑張って。吹っ飛ばすから後で合流ね」

えっ?急にそう言うと、聞き返す時間もなく僕を掴みビル街の方に投げる。ぼくは体が浮き上がりそちらの方に体が流れる。

 「着陸は頑張って!!」

んな!適当なっーーーー。 

 そう言った、次の瞬間師匠の姿は消え大きな風がぶつかり僕は飛ばされていた――


 「うーむ。やっぱりこうなったか」

画面を見ながら、腕を組んで主任はそうこぼしていた。

 「えっと、想定通りですか?この状況は?」

 「うん、ある程度はね」

状況というのは、とある三人がぶつかり合っている状態のことである。今主任が見つめている画面には、目で追うのも難しい速さでぶつかり合っている三人の姿が映っている。

 「ははは。優勝候補の三人だよ。『最強』と『最恐』と『最凶』だよ」

と笑いながら言ってる。それだけでもとんでもないレベルの人達がぶつかり合っていることがわかる。他の画面も見てみると、他の参加者の様子が映っていた。ほかの参加者たちは、まだ戦闘に入っておらず、状況を確認しているようだった。

 そして、戦闘している画面からとんでもない音と爆発の土煙が見えた。


 「うわー、さっきからあっちの方の音すごいな!」

 「ですね、行きます?」

 「いやなー。行った方がいいんだろうけどなー」

と困ったように発言を濁す青年とその答えを聞いている男があるビルの入り口にいた。この二人は、スタート地点から歩き、このビルの前にまで来ていた。

 作戦として、廃ビルと化しているこの中で戦うつもりであったのだ。この付近にあるビルは建物内はきちんと使えるような状態のビルもあるが、廃ビルと化している場所も多い。そのような場所では、しっかりとした作りに見えて、もろいところがあるのも再現されている手の込みようである。

 「もう少し様子見てー、誰も来なかったら、ね?そうしよう?」

 「いいですよ、それでも」

 そうである。言うとおりである。我々の能力的にも無理は禁物である。しっかりと準備し望まなければ。自分たちで暴走して、自滅するわけにもいかない。さて、どうやって、目の前のパートナーを主軸にして戦うか。


 「・・・・・・」

 「・・・・どう」

 「やっぱり、煙みたいなのが見えますね。たぶん、衝突してるかと」

 「そうかーーー」

それを聞いて、ため息をこぼす者がここに一人。ここは、門と住宅街やビルなどの建物の間にある荒野地帯である。門を入ってすぐに建物もあるが、何もなく砂地やコンクリートの残骸が残ってるものがある場所もある。

 「・・・・行かないといけない?離れてるのに音も煙もわかるところに」

 望遠鏡を離しながら言ってくる。

 「いかないといけないでしょう。・・・・・・仕事ですし」

 「勝てないって。僕そんなに戦闘能力ないって!!知ってるでしょ!!!!」

 「えーーーー。ぼくよりはあるでしょ、異能持ちなんですから」

 「でもさ、でもさ!相手はあれだよ?あれ!!”さいきょう”の一角達だよ!!!副長でも「いい勝負できるかなー (笑)」とか言ってるような奴らだよ!!というか、あなたが一番戦えるよ!!!!」

 「気持ちはわからなくはないですよ!!それなら、僕どうなるんです?異能持ってませんよただの隊員でーすけど!!」

 「あー、そうだね!」

 二人でやけくそのように話す。だってそうでしょ?異能を持っていても相手にできるかどうかは違うし。人は使い方と相性だというが、それを超える者もいると思う。自分がを相手に、しかも複数。無理ゲー。

 自分たちは、クライシスに所属している特殊異能対策部隊、通称”特異隊”とよばれている隊の一員である。仰々しい名前であるが、要は能力者の暴走を止めたり、制御するための組織である。なぜか今回参加者の一ペアとして参加させらてるわけなのだが、、、。

 「はぁーーー。・・・・笑っちまうよ」

 「どうしたんです?」

 「だって、『最響』だよ?無理やりかんない?」

 「まぁ、でも響くってことで(笑)」

 「おい、今笑ったか?」

 「いいえ」


 

 

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