最弱 VS 最狂

 飛ばされ、気がついたらビルが集まってる場所にいた。地面に叩きつけられたわけだが、折れたりはしておらず全体的にで何故か済んだ。

 飛ばされた周辺には形がバラバラのコンクリートブロックなどが転がっており、道も舗装されているところから砂利になっている。ふと、横の方のビルに視線を移すとビルの壁には丸い穴があいていた。どうやればこうなるのってぐらいに綺麗に開いていた。そして、自分はなぜこれぐらいで済んだのかと疑問が残る。受け身か?受け身を無意識にとったのか?もしそうなら、自分も師匠との特訓で人間離れしてきているということか。そいうことにしとこう。深く考えると、こわい。考えてもわからないし。


 ぼくたちのいる近くに何かが飛んできた。向こうの方ですごい音がして、急に何かが地面に落下してきたのだ。落下地点は軽くクレータができている。落下地点を覗いてみると、人が倒れていた。けがもパッと見なかったので、しばらく離れて様子を見る。

 倒れていた人はしばらくしたら、上半身起こして辺りを見渡している。なんで、あの音で落下して動けるのか?

 そして、落下したやつは動き出していた。他にも大きな音が各所で聞こえていた―


 とりあえずビルの一つに入ってみることにする。内装がどうなっているかも気になったのもあるが、一旦落ち着いて現状を把握するためでもある。手ごろなビル内に入り、階段上がると、オフィスのようになっていた。椅子があったので座って考えをまとめることにする。

 うん。師匠とははぐれた。これは確実だろう。飛ばされたし。とりあえず位置を確認しないことには何とも言えないな。落ち着いたので、行動に移すことにする。

 パートナーの位置は把握できるようになっている。持たされた端末により確認ができる。端末が壊れてなければだが。あれだけの衝撃だ、不安に襲われるが見てみた。壊れてなかったみたいで確認することができた。だが、確認できた位置は予想とは違い、壊れてるのではと思ってしまう。大体の方向をレーダーのように見ることができ、細かいところも操作次第で限界はあるが知ることはできる。きっと師匠はさっきまでの場所、もしくはその周辺だと思っていたがその場所よりもはるか離れた場所。ここからの方角だと西南に当たるところに反応があった。というよりも距離が遠すぎる。ぼくが飛びすぎなのか?大体真横の方向に飛んでいったものだと思ってたからこその驚き。

 はぁーと大きく息を吐きながら椅子に背を預け斜めに傾ける。椅子があってよかった。少し休める。現状把握に頭を動かす。

 さて、合流するために動くとして、今参加者と会えば、一人で戦闘は確実である。覚悟をきめなければ。そんなことを考えながら、座っていると階段を上がる音が聞こえる。こっちに向かっている。入口を向き警戒する。すると、一人の男が両手を上げながら入ってきた。見た目は若い。自分と同じか上ぐらいだろう。というよりも背が自分よりも高い。目測で170以上はあるだろう。


 「あのー、あなたは強いほうですか?」

と聞いてきた。うーん。なんて答えよう。

 「いや、あんまり強いほうじゃないとおもってますよ」

 「あー、そうなんですか」

と安心したように答える。何だろう。さっきまで、急に戦闘が始まっていたため、気が抜ける。だが、この場にいるということは何かしら強いことはわかっている。どうやって、切り抜ける?と頭を回していると、

 「じゃあ、、、、」

と言い、

 「戦いを始めますか」

と言葉をつづけた。


 その場から消え、いつの間にか目の前に。こぶしを腹に打ってきた。それを受けて、机を倒しながらガラガラと音を立てて壁に近づく。やべぇー。ぎりぎり反応できたからよかったけど。動きが速い。受けた腕が震えている。いや、体全体が逃げろと警告してくる。

 「ごめんなさい。突然でしたね。でも、安心してください。ぼくもそんなに強くないですよ。あの、災害みたいな人達と比べたら、さぁ」

と言ってくる。さぁ、この発言もどこまで信用できるものか。自分の評価と相手の評価は違う。これより速さ、力が強くなったらどうするかな。まぁ、正直そうなるだろうな。

 「・・・・能力教えてほしいしなぁ、なんて・・・」

とおどけたように言ってみるが。

 「うーーーん、ちょっと難しいかなぁ」

と笑っていい、言い切ったら姿が消える。同じ攻撃できた。防御は間に合ったが力が上がってる。速さも!!そして、壁を崩し外に出る。ここは三階ぐらいの高さがある。

 やばい、何とか受け身を!!

 だが、相手は上から追撃を加えに来る――――


 「おぉ、動き出したね、他の人たちも」

 「えぇ、そうですね」

 私たちがみてる画面には、ビルの中で藤井和が会話しているところが映っていた。

 「・・・たしか、藤井和くんでしたっけ?」

 「うん、そうだよ。そして、向かい合っているのは『最狂』の名を持つ人」

と含みを持たせるように言う主任。持っている資料に目を落とす。私たち研究員はタブレットで参加者、異能持ちの基本情報を見ることができる。

 『最狂』:桜城優さくらぎゆう、能力名『狂花きょうか

と書いてある。『狂花』?能力の内容として書かれていた内容簡単にはこうだった。

『狂花』――段階を踏みながら、力、速さ、強さが上がる。それにより、狂戦士バーサーカーへと変貌を遂げることができる。

 「・・・『狂花』。これってコントロールできるんですか」

 「うーん。ある程度の段階までなら、ね。そこを超えると、力尽きるまで暴れるだろうし。・・・結局のところ今どこまでを自分の意志で出せるかは彼次第だよ」

とごまかす様子もなく、はっきりと告げる。彼は勝てるのだろうか。この強い相手に。

 そして、相対する藤井和の能力は――――


 壁から押し出され、何とか地面に転がりながらも攻撃を回避する。さっきまでの自分のいた場所に拳が突き刺さる。

 なんとかなった。やっぱり訓練ってしとくものだなと思いながらも、次に備え準備する。

 相手は止まることなくこっちに向かってきた。相手のこぶし、蹴りを何とかぎりぎりのところでいなしながら考える。どうやったら勝てるか、相手の能力は何なのか。今のところは、自身の強化に見える。能力を使用していればだが。能力ではなく自身の力だとしたら、、、。


 桜城の大きな一発が入る。周りに土煙がまい周りからでは、どうなったのかの判断がつきずらい。だが、桜城には確信があった。防がれていると。煙がはれ周りからも見えるように。そこには、桜城のこぶしを両腕を前に交わし防いでる姿があった。

 肩で息をしながら防いでいる和。それを見て、桜城はその体勢のまま口を開く。

 「・・・強いな~。この試験に居るだけはある。・・・君、名前は?」

急に話しかけられ、驚く。さっきまでの連続攻撃を受けていた身としては気が抜けそうになる。息を一つついてから、警戒を解かずに名乗る。

 「・・・藤井和」

 「和か!僕は桜城優。よろしく」

と言ってくる。優しくさっきとは別の空気に包まれる。自己紹介を終えた後、桜城は後ろに飛び、構え直す。

 「・・・さぁ、続きをやろうか」


 やっぱり強い。速さもある。何とかついていくのに必死である。目を離せないし、集中力が切れたら負ける。

 強いな。さっきから、こぶしは腕に防がれ、蹴りは躱される。自分が押してるかと思いきや、決定的なのは入れさせてくれない。何とか体勢を崩して、回し蹴りを入れようとするが、かがみそれを回避する。そして、こっちの隙を見つけては反撃してくる。下からのアッパーを何とかよけたが、体勢を崩して後ずさる。そこに追撃を加えてくる藤井。防ぎ、さばくだけでなく攻めまで。それを防いで蹴りを入れる。上手く入り、その場から、離れ、自分も下がる。距離がここで空く。

 なんだ?追撃をしてこない。くっそ、もろにくらってしまった。結構痛い。やっぱり、威力がある。

 桜城はふーと一息つき和に言う。

 「・・・さて、ギアを一つ上げるよ」

と笑いを含みながら言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る